2
…とまあ、わたしが自叙伝を執筆するならば、こんな感じで出したいな、的な思いで、真っ白な真新しい一冊のノートに書き殴っている、上田まいこです。
このノートの紙質の良さ。
ノートは、百円均一のものしか購入しない人間には判る、この違い。地球から持ってきた黒のボールペンがすいすい滑らかに進むよ。手触りや厚みが違うし、なんだかほんわりいい匂いがしてくる。
くんくん、よき香りや。なんて行動を繰り返している。
わたしは、いま、地球を離れ、地球がある銀河にあるのかも分からない世界で生活している。
ひとつ分かることは、魔力、というものが、この世界にはあるということだ。
わあっ! 異世界って感じするよねっ、と明るく言えるのは、この世界に来て体感時間的に言えば半年くらい経っているからで、勢いのままにノリであの葉書に「引っ越します」なんて書き殴って、ポストに投函して家の玄関扉を開けたら見知らぬ部屋にいた、あの衝撃。
スカートの裾をパンツの中に入れているのを気づかず、午前中の業務をすごし、午後の休憩のときにその事実に気付いた瞬間と同じくらい、否、それ以上の衝撃で、数秒くらい心臓が止まったんじゃないかと錯覚した(しかもあの時のパンツは、綿百パーセント素材のベージュ婆パンツだった死にたい)。
人間、予想もつかない事態に見舞われると、体の動きが停止するもので、わたしも漏れなく、その場で停止した。
かくかくしかじかで、つまり要約すると、〈デッツァデクァティア〉、舌を噛みそう、というか一度も正しく発音できない名前のこの世界には、異世界人に住んで貰ってその恩恵を受けよう、という決まりがあって、その選考基準に見事ヒットしたわたしが、引っ越してきて、手厚く迎え入れられて、のんびり豪遊VIP待遇をしているという、今現在。
そして、この〈デッツァデクァティア〉は、地球では、デブでブスだったこのわたしが、美女の中の美女、絶世の美女扱いという、天国(〈デッツァデクァティア〉なんて言いにくいから、もう天国でいいじゃん、ね、いいでしょ)。逆に、美女というレベルではなくて女神レベルの美女様がこの天国では、不細工といわれる美意識の世界なのです。男も然り。異世界っぽい!
そんな異世界に引っ越してきたデブスは、周りからちやほやされて美しい奴隷に囲まれて幸せに暮らしました。 ~完~
ご愛読ありがとうございました!
と、一心不乱にノートに書き殴り、最後の文字を書き終えるとノートを閉じる。
「ふう…」
「マイコ様、ご休憩なさってはどうでしょうか?」
机に向かっていた顔をあげて、一息つくと同時に、まさに鈴を転がすような声が耳へと響く。
その軽やかな鈴の音の発生元へと顔を向けると、完璧に左右対称の、地球の西洋の画家達が想像して描いてもこんなに美しい顔を描けるのか、と思うほどに整いすぎた美女が、デブスのわたしを見て微笑んでいる。
白く滑らかな皮膚で覆われたほっそりとした手先は、まさしく白磁のそれと表現するしかないほどの美しさ。出会ったときは薄汚れていたが、美しいものが汚れていても美しいもので、わたしは、彼女のすべてにうっとりとしてしまう。その白磁の手は、茶器をのせたワゴンを引いている。手から視線を上にあげると、何度見ても心臓が高鳴るほどの美貌。
「うん、そーする! ナツィアこっちきて」
「はい」
緩やかに波打つ、傷みなど無縁な絹のプラチナブロンド。顔回りの髪を後ろで纏め、残りはそのまま流している。わたしが一番すきな髪形だ。服装はナイトウエアのような体のラインはゆったりとして隠れ、胸元だけがこぼれんばかりに開いた、踝までの純白のロングワンピース。
華奢で細身の体型から想像もつかない、豊満な乳房。シミひとつない白磁の肌に包まれた、吸い込まれそうなほどの二つの球体は、重力に逆らうように丸く張りがあった。
椅子に座ったままのデブスの前に、すらりと長身のナツィアが立つ。
卵形の小さな顔。その顔に完璧な比率に基づいて設計されたパーツは一寸の狂いもなく、ナツィアを形成する。ベビーピンクの唇は、弧を描くように薄く微笑んでいる。まさしく女神の微笑。否、美笑である。
濁りのない澄んだエメラルドグリーンの瞳は、これ宝石なんじゃないのってくらい輝いていて、目を合わすたびに、ほう…と思わずため息がでてしまう。宝石のように美しくても硬質な印象を与えないのは、柔和な目元のためか。ナツィアはいつも微笑んでいる。女神様の美笑に、デブスは癒されております。
この世界では、全体的に身長が高い人が多い。日本人の平均身長のわたしにとっては、頭一つ分以上は皆、高い。高級感漂うお尻を包み込んで離さない椅子の上に正座をする。その格好になって、正面からナツィアと向き合うと、ちょうどわたしのまん丸パンパンの顔がナツィアの美しいおっぱいの前にくるのだ。
そして、地球のおっぱい大好き同志の諸君。
羨ましがるといい!!
この美女神様の豊満なおっぱいに顔を突っ込み、両手で揉み拉きながら、突っ込んだ頬をぱふぱふとマシュマロのような赤ん坊の肌のような、極楽天国の感触で挟む幸せ。そして、頭をあの手でゆっくりと撫でられる心地よさ。
おっぱいだいすき!
美女神さまだいすき!
おっぱい!わっしょい!
おっぱい!わっしょい!
ナツィアだいすき!あいしてる!
と至福の時間を、ぐふぐふと不細工モブ顔で笑っていると頭上から、軽やかな鈴が鳴る。おっぱいに埋もれながら見上げると、より一層その美貌に花を散らばせながら、ナツィアが笑っている。
「マイコ様は、本当にお可愛らしくて…わたくし、とても幸せです」
「ううん! わたしこそ、ナツィアのおっぱ、いや、ナツィアといれて幸せ! だいすき!」
そう、上田まいこは、この異世界に引っ越し、美男美女にちやほやされながらセレブ生活を満喫しております!
ちょう幸せ!!
イケメン奴隷もでてきます。