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第36話 戻りたくても…

ようやく炎の神獣の能力を手にしたものの、化身したイフリートの姿から元に戻れなくなったシレイス。

畏怖さえ覚えるその姿で、あたふたする。

炎に包まれた体で右往左往する姿はさながら火事で逃げ遅れたように見える。


「ど、どうしよう…」


思わずディエマの手を握る。


「おわ~~!!!」

手を振り払うディエマ。


ふぅふぅする。


「てんめ、なにすっだ!!」

見れば、赤く溶けそうな皮膚から湯気が出てる。


イフリートは火をまとう。

その手で触られたのだ。


「!!!!!!!」


痛みの正体を理解したとたん、痛みが倍増するディエマ。

半泣きになりながら、


ふん、ふぅん!!!

と、身振りで早く治せとばかりにハージンに訴える。

急いで治癒力を発揮するハージンによって、ただれていたディエマの腕があっという間に修復する。


落ち込む神獣…

そっと声をかけるディエマ。


「本当に戻れねぇの?」

コクリと頷くシレイス。


「なんか方法あるだろう?」


「私がラリスに習ったのは一瞬だけ、能力を降臨させる方法です。変身とは違ったので、当然ながら、戻る方法なんて、知りません…」


……………


気まずい感じ。


「受け入れるしかないか…」

取ってつけたように言うと、少し意地の悪そうな顔をするディエマ。

「伝説の神獣として生きてみるってのも結構、カッコいいと…思うぜ…」


「あなたね?他人事だと思って…」


「ちょ~い待とうか?」

また掴まれそうになるのを手で制するディエマ。


その間もハージンの治癒が続いている。

おかげで、さっきまで満足に動けなくなっていたはずの二人が、喧嘩できるほどにまで回復していた。


「大丈夫って…時間が経てば…」

「無理だ…魔力が底をついて動けなくなったのに、解けない変身なんだ…」


「本当に底ついてんのか?」

未だ燃える炎を指さすディエマ。

「これは、ハージンに回復させてもらったからだ…」


ふぅ…

ため息をつく二人。


変身解く方法…

何かないのか…


考える二人に、声が響く。

「シレイス、ずっとそのまんまなの?」

声に振り向くと、レナンがいた。


その横からのそっと現れたのはジョー。

「おいおい、嘘だろ?シレイスだったのかよ?」


村のみんなもいる。

暗くなりかけてる事もあるだろうが、こんなに大勢で近づいてきたのに、レナンが声を発するまで気配にすら気づいていなかった事に驚くシレイスとディエマ。


ハージンは気づいていたようだ。


「ジョー…」

表情を曇らせるハージン。

そうだ。ジョーを始め、レナン以外の村人は、村のリーダーだったシドの死を知らない…


「とうとう、ものに出来たんだなイフリート!!」

のんきそうに話すジョー。


「すげぇ、すげぇ、でも、とどめはやっぱし、ハージンだったな。伝説のイフリートでも倒せなかった野郎を一発だなんて…さすが神殺しってとこだなぁおい」


キョロキョロ…


「いや~レナンだけ居なくなったときは冷や汗かいたぜ…てっきりあの水たまり野郎にやられちまったもんだとよ~…ハージンに助けられて生きてるって聞いた時はよぉ、泣きそうだった」


言いながら、探す素振り…

「てかよ…シドのヤツどこ行ったよ?」


固まるディエマとシレイス。

レナンが悲しい表情を向ける。


「おいおい、なんだよその顔はよぉ…」


死んだ二人が眠る場所を見つめる三人…

視線に気づく…

ざわつく空気…


村人たちが気づき始める中、その場所を見つめるジョー。


盛り上がった土…

二人分の盛り土…


シレイス達の表情から読み取れる残酷な事実…

答えはハッキリしてる。

けれど、認めないかのように首をふるジョー。


そんなジョーに、静かに語り掛けるハージン。

「一瞬だった…三人を一度で治療しなければいけない状況になった…救いたかったが…駄目だった…」


無念そうに話すハージンに、怒りの表情を示すジョー。


「ジョー、違うんです…」

その必要も無いのに、かばうようなシレイスの言葉。

そう、誰のせいなんてない…


まっすぐに見つめる眼差しからは、あの陽気なジョーは影をひそめ、怒りが満ちていて、かける言葉が思いつかないシレイス。


「あいつ…あの水たまり野郎にやられたのか?」

静かに、感情を抑えるように言葉を発するジョー。

戸惑いつつも真実をつげるハージン。


「いや、アイツじゃない…」

「水たまり野郎じゃない?じゃあ、誰だよ?」


「戦士の門の番人…」

「馬鹿な…俺に相談もなく、戦士の門をくぐったっていうのか?」


「戦士の門には行ってない…見てみろよ…」


湖のほとりを指すディエマ…

暗がりに浮かぶ月を映している。


月明かりが道を示すと言っていた。

そこに門があるのだろうか?

戦士の門が使われていないと納得した様子のジョー。


「戦士の門の中にいるはずのバケモンが何故…」

「わかりません。しかし、アイツに間違いなかった…」

「なんてこった…片目を奪ったシドに復讐したって…事か…」


キッとシレイス達をにらむジョー。

「お前ら…何してた…」


聞かれて、答えられないシレイスとディエマ…

尻込みして、動けなかったなど、答えられようはずが無かった。

こんどはハージンに向き直るジョー。


「なぜ、シドを守ってくれなかった…」


何と答えればいいのか…

言葉に出来ないハージンに容赦ない言葉を投げつけるジョー。


「シレイスやディエマはいいさ…まだ半人前ってことだ…でもな…あんたは違う…神殺し…なんだろ?神をも超える力を持ってる…何故守ってくれなかった…」


守れない状況だってあるだろう…

冷静になれば、そんな考えもあるかもしれない…

だが、ジョーは冷静さを欠いていた。


「あいつは…シドは…足が…悪かった…村の長として、毅然としてようって、気づかれないように、普通に…歩こうって、してはいたが…戦う術を身につけている者なら、普通に気づけたはずだ…長い時間過ごしたお前なら…気づけたよな?」


「ジョー、シドは…治してもらった…化け物と対峙した時、足はもとどおり…だったんだ」

遮るディエマ。

今でも後悔してる事だった…


「な…ラリスでも治せなかったはずだ…」

信じられないという様子のジョー…

ディエマが続ける。

「完璧に治ってた!!」


「じゃあ、あいつは…」

「えぇ、シドの閃光烈火の剣技…見事でした」

「倒したかに見えた…でも…」


手でディエマを制するジョー。

聴きたくなかった…


かりそめにも伝説と呼ばれた戦士。

それが油断で命を落としたなど…


なんということか…!!!!


あの時…

止めてれば…

普段見ない険しい顔に、言葉を失うディエマ。


「…足…治せたんだ…」

想いをかみしめる様なジョー。


「じゃあさ…」

ゆっくりと、ハージンに近づいていく。


「生き返らせられねえかな…」


驚きを隠せないハージン。

まっすぐ見てくるジョー。


「持ってるんだろ?神をも超える力を…」


無理だ…

できるならやってる…


何度も…!


何度も…!!


何度だって!!!

でも…


無理だった…

想いに応える事が出来ないハージンは、見返すことが出来ない。


視線を避けた…

避けてしまった…


瞬間だった…


ハージンの胸倉をつかんで、力の限り叫ぶジョー…


「生き返らせてくれよ!!!!!!!!」

止めに入るディエマを振りほどく。


「なあ!!!」

涙にじむ目で睨む。


「友達なんだよ…ガキの時からよぉ…俺の友達…親友…初めてできたツレだった…生き返らせてくれよぉおおおおお!!なあ!!!」


何回も揺さぶって


何回も揺さぶって


揺さぶって

止まる…



静寂…

すがるような眼差し…

けれど、同じように涙するハージンの横に振られる首。


「なんで…なんで救えねぇ…」

崩れるように膝を付くジョー。


救えなかった命が再びハージンに疑問符をなげかけた…

            ~第三十七話に続く~



この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。

でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。


そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。


僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。

僕の中にあるヒーローそのものです。


絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります


すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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