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余りある世界へ

大気を叩き割るほどの衝撃が過ぎ去り、私の世界は深い海の底のような無音の膜に包まれた。




全身の感覚が焼き切れたようで、五感は麻痺している。揺れ動く視界の中、遠くから誰かが私に走り寄って来ているのが見えた。しかしその動きは水の中に居るように鈍い。




輪郭が上手く定まらないものの、彼女だと分かった。彼女はこちらへ何かを叫んでおり、激しい怒りのような、悲痛の涙を流していることが見て取れた。




彼女の背後に視線を移すと、私たちが対峙していた巨大な生物の残骸が、七色の光の粒となって空へと昇っていく幻想的な光景があった。


「そっか、終わったんだ。」


そう呟いた瞬間、視界がクリアになる。


ぼやけていた彼女の輪郭が形を持ち、はっきりと見えた。おそらくこれが最後に見る世界なんだろう。




そしてこれまでの苦労もすべてを受け入れて私は笑った。


「あなただけは、長生きしてね。この余りある世界の中で」


これで彼女に最後の言葉を遺せた気がする。


そして私の身体はそのまま冷たい地面へと強く叩きつけられ、視界から世界が急速に失われていった。





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