日輪夜叉姫4
丸一日が経った。
復讐を果たそうとする宗司に、賛成できないと鉄太は言った。件の女は尋常ではない手練で、少人数で勝てる相手ではないからと。正しい意見だと、宗司も思う。
実際に、紗霧が自分や仲間たちを叩き伏せていくところをその目で見ているし、経験している。
目で追えぬ剣速で木刀で打たれて一瞬で頬が地面についた。打たれたところは大痣になり今も酷に痛む。
剣技の差は歴然。ただ負けるだけにとどまらず、ひょうがの後を追わされるかも知れない。だが不思議とそれを怖いとも、忌々しいとも思わなかった。
自分の奇妙な冷静さを白々しく見つめながらも、歩む足は約束の場所へ近づく。
無謀も馬鹿も百も承知だ。それでも止まれない。
理由は鉄太に伝えた言葉そのままである。
「俺が俺であるために」
──友を殺し仲間達に恥と傷を負わせた女がのうのうと生きる世界で、生きていたいとは思えない。一生心から笑うこともできないだろう。
矜持を持たず盗人として意地汚く生きてきた彼が持つ、唯一の信念らしきもの。
それはひょうがの友であることだった。
果たして、約束の時刻に着いたが、そこに紗霧の姿はなかった。考えてみれば約束とは言えなかったかも知れない。宗司が勝手に言い捨てて行っただけとも言える。約束だったとしても、紗霧にそれを守る義務はない。
逃げたのだろうか。もし紗霧が来なければ、ひとまず今夜2人が剣を交えることはない。宗司は自分がそのことに安心する可能性について考えた。感情の奥底を探る。探って探って、自分の臆病心の有無を確かめる──答えは否だ。今宵紗霧が来なくとも、どこまでも追いかけて恨みを晴らすだけ──
心からそう思えることを確かめて、宗司は安心した。




