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日輪夜叉姫 2

 「日輪夜叉姫」と彼女に仲間を殺された男の視線が交錯する。襲ってきたのはそちらだ、という男の言は正しい。

 ここ半年に渡って、食料や金品を盗む悪党が横行しているので助けてほしいという依頼を、「日輪夜叉姫」が町の商人たちから受けたのが3日前だ。それから人数や使用武器、隠れ蓑を特定して彼らを今日襲撃した。

 男も理解はしていた。自分達の行いが悪であることも、いずれ制裁の手が下されることも。それが来たとき、自分たちは全員死ぬだろうと思っていたくらいだから、死者が1人で済んだのは僥倖というべきなのかもしれない。

 だが、愛着のある仲間たちが惨めに敗走させられ、1番の親友を目の前で殺され、それがたった1人の少女によって為されたという事実は、受け止め難い──友の命を奪われたことが憎い、だから。

 「俺は必ず、お前を殺す」

 悲痛に歪んだ顔で、絞り出すような声で、男はその誓いを表明した。

 「そうか、分かった」

 「日輪夜叉姫」はただ低くそれだけ返し、踵を返して歩き去った。



 「日輪夜叉姫」はこのように、どこぞでのさばる悪党や犯罪者と対峙し、その礼に銭をもらいながら生きる放浪者だ。元は退魔の名家の生まれだったが、ひどく妖力の適性がなかったため父親に家を追い出され、今の生活をしている。人の命を奪ったことは、過去にも2度あった。   

 その度に胃液が泥に変わるかのような重苦しい感情が湧いて、責め苛む。あれから1日半が経過している。商人や人々がくれた銭で懐は潤っていたが、食べ物はおろか、水も喉を通らない。どこぞの家の壁にすがって座り込み、鈴虫の声を聴くともなく聴きながら、ただ時間が流れるのを待っていた。だから気づかなかった──件の男が、すぐ真後ろに立っていたことに。

「っ」

 すぐに身を翻し腰の木刀に手をかけたが、男の刃の切っ先が、彼女の眼前に向けられていた。昨日の鋭い突きが思い出される──間に合わない、この状態では間に合っても勝てない。

(詰みか)

 敗北を悟った少女は目を見開き、刃がその身を刻むのを待った。が、その切っ先は彼女の眼前で固定されたままだった。

 「……なぜ斬らぬ」

 「斬るさ、だが今のお前は万全じゃなさそうだ」声も顔も、昨日と変わらない悲痛に歪んでいる。

 「万全の私に敵うつもりか」今が絶好の機会だろう、と挑発するように少女は言った。

 「ただでさえ女を斬るのは気が引けるってのに、弱ってる状態をだなんてごめんだな」

「千載一遇を逃したこと、悔いるがよい!」

 立ち上がりながら無理やり距離をとって、木刀を引き抜く。

 正直、身体の状態を思えば勝てる見込みは無かったが、今できる最速の動きで虚勢を張った。



 

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