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第一話 森の目覚め

 ——次に目が覚めると、俺は森の中にいた。


 あまりに突然の出来事だった。俺は今までのことが全て嘘だったと思った。



 だけど、ふと手を見ると、やっぱり死んだのは、転生したのは本当だったんだと確信した。


 俺の手はとても小さくなっていた。前世の俺と比べればだけど。おそらく......年は10代後半。目線を下に落とすと、麻の服を着ていた。服をめくって性別を確認すると......男だった。だけど、体は木の枝のように細かった。俺の筋肉達は転生と共に消えちゃった。悲しいね。


「......ここは?」


 俺は辺りを見渡し、ゆっくりと立ち上がった。目に入ってきたのは広大な森林。もちろん、人の気配なんてない。あるのは風のざわめきと小鳥の鳴き声だけだ。木々は高く連なり、葉の影から日差しがチカチカと目に入ってきた。


 どこにいこうか。俺は全く当てがなかった。だが、俺には秘伝の解決法があった。前世で編み出した叡智の結晶。前世で何度も山で遭難したが、その度にこの方法で生き残ってきた。伝説の方法。



それは......棒が倒れた方向に進むこと!!!



 俺は急いで地面に目線を落とし、棒を探す。すると、木の根元に小さな木の枝を見つけた。枝には赤いつぼみが実っており、一瞬掴むのを迷ったが、そんなことは気にしていられない。



 そっと木の棒を地面に立たせ、結果を見守る———


......


(まだ?)


......


(風が弱いのかな?)


......


(え?)


......


(流石におかしくない!?)




 俺は気づいてしまった。いつまで経っても棒は倒れてない。しかも、なんか棒の周りが紫色になってた。

もちろん、枝は地面には突き刺さってはいない。そして明らかに傾いていてバランスが悪い。そして紫色のオーラ?が棒を覆っている。明らかにこの異様なオーラが原因っぽい。


 恐る恐る左手でオーラを触ってみると、柔らかで少し暖かい。なんとも言えない感覚だ。例えるなら、スライムだな。ファンタジー世界のスライムみたいな感触だった。


 その時、右手に慣れない感覚があるのに気づいた。ビリビリと小さく痺れるような感覚。


 ゆっくりと右手に目線をつ写す。......そして、俺は驚愕した。


——ビビビ......


 なんと、俺の右手からそのオーラが出ていた。俺の手が紫色に光り、そこか糸みたいに細い線が枝に伸びていた。



「フエッ!?」



 あまりに情けない声を出して、俺は地面に尻をついた。その衝撃で枝についていたオーラはパツンと消えてしまった。


 急いで右手を見つめる。まだビリビリとした感覚は残っているが、至って普通の右手。機械とかオーブがついているわけじゃない。俺は少し興奮してきた。なんたって異世界らしいじゃん。この異物感。特異感。



「......もっかい、やってみるか」



 俺はもう一度この奇妙な現象を再現しようと立ち上がる。


 スッと手を再び枝に向け、念じる。もちろん念じたらどうにかなる根拠はない。ただ、異世界への偏見からそう判断した。



「謎のオーラよ! 再び現れ枝を包め!!!」



 俺は声に出して、ほぼ叫びのように念じた。

 

 次の瞬間。俺の右手から再びオーラが現れた、それもより膨大な量の。


ビビビッ......!!!


「うわっ!多ッ!? 」


それは枝を包むどころか周囲の空間全体に広がってしまった。


「ブクブク......」


 俺自身もオーラに包まれ、生暖かいスライムのような感触に居心地の良い気分になった。右手は感電するように痺れていたけどね。


 そして、直感的にオーラの正体を理解した。いや、理解したというよりは自分の知っている知識と結んだ。



 「これは、魔法......か?」



 これが、俺が最初に使った魔法。名前すらない単純な魔力の操作。だが、俺がこの世界に胸を高まらせるきっかけとしては十分なものだった。


 俺はすっかり魔法の虜になり、何度も、何度も、魔力を出しては止め、出しては止め、を繰り返し続けた。


「ハッ!棒よ!浮かべ〜!」


———フワ〜〜〜ン


「う〜〜.....あとちょっとで岩を持ち上げれる!」


———グゴゴゴ...


「木を包み込んで......曲げる!」


———バギッ......!


 徐々に棒のバランスを支えるだけから成長し、物を曲げたり、拾い上げられるようになった。


「ふう。結構やったな......疲れたし......右腕は半分麻痺して痺れているし......なんだか気分も重いな」


 俺は右手押さえながら辺りを見渡す。すると、さっきまでの緑一色が嘘のように景色が赤一色に包まれていることに気づいた。


 そう、日が沈んでいたんだ。完全に遭難だ。日差しは赤く染まり、木々は暗黒に侵食されつつある。森には恐怖の静寂が誕生しており、もちろん俺は動揺した。


「やばいやばいヤバいって......どうしよ......サバイバルの準備何もしてなかったんだが!?」


 前世の俺ならすぐにでも火を起こすだろう。だが、周囲に火を起こせそうなものは無し。落ち葉と細い枝くらいしかない。


「終わった......」


 絶望。一つはこの暗黒の中で夜を過ごすことに対して。もう一つは何時間も魔法で遊び呆けていた自分に対して。


「......何か、何かできることは......あ、魔法か」


 魔法って言うくらいだし、火を起こせるのでは? そう思うと胸が高まってきた。


「そうだ!魔法だ。魔法を使えば火なんて楽勝だ! この森ごと燃やしてやる!」

 

 俺はそう思い、右手に意識を集中させる。膨大な何かが身体中から右手に集まる感覚。


「来た!」


 そう口にした瞬間、俺の手は炎上した。


——ボッッ!


 炎を起こせたと歓喜するのも束の間、 手が普通に熱い。ていうか、ガチで熱い。普通こうゆうのって自分には無害じゃないの!? みんな我慢してたってこと!?




「アッツ!!アッ!熱い!!!」




 俺は地面に倒れ込んで、素早く手を落葉に擦り付ける。落葉が煙を吐いて燃え始めた。


 だが、俺の手はお構いなしに燃え続ける。地面に擦り続けても消えない。息を吹きかけても消えない。



「これもう......ダメじゃん!!! うう......俺の右手は転生初日に焼失ってこと?」



 俺が涙を浮かべ始めた時、常識的な解決策が頭に浮かぶ。



「あ、魔力消せばいいのか......」



 俺がそう意識した瞬間、手の炎は止まり、火傷の痕だけが残された。


「......」


 なんだか自分がとても惨めに感じ、俺は静かに地面に座り込んだ。


 あたりはすっかり暗黒に支配され、燃える落ち葉だけが視界の支えとなっていた。


「うわぁ......グロ」


 手の火傷は痛々しかったが、なぜか痛くはない。いや、正確には痛く無くなっていた。傷口に紫の魔力が、まるで結晶が生成されるように枝分かれして、広がっていく。


「......なんだ? これ......?」


 徐々に傷が塞がり、痛々しい火傷のあとが消えていった。


 その信じられない光景に俺が絶句していると、一瞬顔を黄色い光が掠った。


「!?」


 俺は急いで木々を見渡す。すると、4時の方向。暗黒の木々の中に一つの灯りが見えた。徐々にこちらに近づいてくる。


「な!なに!?」


 俺はドキッと体を震わせ、足元の燃える落葉に目を落とす。それはただの火災だったが、焚き火のように燃えてはいた。


 どうやら、こちらが旅人か何かだと勘違いされたらしい。


 光が近づいてくる。俺は本当に混乱していた。初めて合う異世界人。



「どうしよう...挨拶は『こんばんわ』でいいのかな......転生しちゃってここにいるって怪しいかな? ......この世界についてもっと詳しく知りたいし......」



 しばらくすると、光が目の前に現れた。そして、その後ろで、光に照らされた男の輪郭がはっきり見えた。身長はそこそこで、顔は整っていて鼻が長かった。髪はボサボサで、寝癖は直されていない。服装に目を向けると、まず炎のように赤いマントが目に入る。ところどころ穴が空いており、激しい闘いが目に浮かんだ。視線を下向けると、胸と腰の錆びた革が目に入った。明らかに戦闘用だ。


 男は俺を不審そうに眺めた後、ドカドカと大股で近づいてきた。


 俺が返す言葉を必死に考えていると、半分髪に隠れた目で、静かにこう言ってきた。


「......あんた、誰だ?」



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