第七章:この“○○○”どもが
昼休み前、静かな会議室で突然その言葉は放たれた。
「お前、マジでやりすぎだよ」
「名誉棄損、営業妨害……普通に訴えるぞ?」
言ったのは同期の加納。学生時代から劣等感を抱いていたらしく、天城が“成果を出すたびに不機嫌になる”典型的な「身内の敵」だった。
「お前、自分が異常だって自覚あんの?マジで……○閉症みたいな動きしてんだよ」
「誰もお前の考えてることわかんねえし、空気も読まねえし」
部屋の空気が変わった。
天城は立ち上がり、机に肘をつきながら、ゆっくりと笑った。
「……この、“○開症”が」
もちろん、口には出さなかった。
だが、心の中ではその言葉が雷のように鳴り響いていた。
「人のことを“病気扱い”する前に、お前らの脳みそのOSアップデートしとけ。
“外部の真実”に一切適応できてねぇのは、どっちだよ」
「お前のその自動設計ツールのせいで、俺たちの部署、機能停止寸前なんだぞ。どう責任取るつもりだよ」
加納のその言葉に、天城はぴしゃりと返した。
「ああ、同業他社は、このくらいのレベルの製品を普通に作ってるってことだよ。」
「むしろ、お前らの“無駄な設計”を守ってた方が違法だろ」
会議室は静まり返った。
「俺はお前らを潰したんじゃない。“世界の水準”を見せただけだ。
怒るなら、現実に怒れよ」
その後、天城の元に匿名の紙が届く。
「社内で孤立してますね。言葉が怖いです。
やりすぎです。
助けてください」
天城はそれをじっと見つめた後、紙を丸めてゴミ箱に投げた。
「そうやって、俺に助けを求めるなら、最初から殴るなよ。」
夜。帰り道の独り言。
「俺は病気じゃない。
病んでんのは、“人間関係が優先される職場文化”の方だ。
道理が通らない組織の中では、合理は異常に見えるだけだ。」
歩きながら彼はふと空を見上げた。
「……この世界、壊すには足りない。
でも、“最初のヒビ”くらいにはなったか」