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第一章:杭は打たれる、ならば杭で貫け

第一章:杭は打たれる、ならば杭で貫け

社内掲示板の「今月の業績報告」に、その名はまた刻まれていた。

天城直哉――機械設計部の異端児にして天才。


「またお前かよ……」

「談合した俺たちの意味、ねーじゃん」

「いや、てか殺す気?そんなレベルの技術開示して」


そうぼやく同期や先輩たちの目線は、羨望と恐怖と、そして何より「自分が無能である現実を突きつけられた憎悪」で染まっていた。


天城はコーヒーを啜りながら、無言で彼らを一瞥した。

その目の奥には、淡々とした虚無と、それ以上に深く煮えたぎる業火があった。


「文句なら好きに言え。カルマゲージ、貯めなきゃいけないノルマなんだよ」

彼は皮肉まじりに吐き捨てた。

「ほら、溜まったカルマで魂一つ、ホークラックス作れる。俺の執念の分身ってわけだ」


「お前、それマジで敵に回したら……」


「回してどうすんだ?技術で勝てるか?ついてこれないなら黙って座ってろ。“殺す気か”って言いたいのは、こっちだ」

軽く笑って、図面の上にペンタブを走らせた。新型構造の特許案だ。三つ目。今月だけで。


「今までのイジメに対する仕返しか?」


部長が問い詰めたその声に、天城はぴたりと手を止めた。

そして、あの台詞を思い出す。バスク大佐が言い放ったあの言葉を。


「――うぬぼれるな。貴様のことなど、作戦の“ついで”に過ぎん」

その場が一瞬凍りついた。


「俺がやってるのは“技術革新”です。“復讐劇”じゃない。ついでで潰れる部署があるだけです」


やがて、一人の若手が天城の元を訪れる。

「俺……天城さんの手下になります」

その目は真剣だった。だが、彼の脳裏に浮かんだのは、ティターンズのレコア少尉。


「なら、行ってもらうぞ」

天城は冷たく言った。

「俺をいじめてた連中の巣、その旧部署に“技術”という名の毒ガスを送りに、な」


若手の顔色が変わった。「そこまでやるんですか……?」


「レコアは殴ってでも行かせた。俺はお前を殴らない。だが、理解しろ。あそこに残る価値はもうない。滅びる運命だ」


その日から天城の開発室は「黒い研究室」と囁かれ始めた。

だが誰も彼を止められない。杭は突き出した。だが、その杭は鋼鉄だったのだ。


――つづく。



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