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【なろう版】魔国の勇者  作者: マルコ
幼年学校1年

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55:背徳の館、救いを求めて

 リオスはすぐに行動を起こした。

 今回の不正発覚後も学院に残った調理補助の職員の中から、ビルグと個人的な交流があった人物を探し出したのだ。

 学院の廊下を歩く。微かに漂うスパイスの香り、皿のぶつかる音。それらに耳を傾けつつ、地道な聞き込みを続けた。


「ビルグさん……本当に良い人だったんですよ。

 まさか、あんな……。でも、私は信じていません」


 ほとんどの職員は、前任者の無実を信じているようだった。


 そんな中、ついにその所在の手がかりとなる証言が飛び出した。


「確か、王都の裏路地にある、娼館……孤児院も兼ねてる店、そこの厨房で働いているとか……

 ただの噂かもしれませんけど」


 確証はない。しかし、リオスはそのわずかな情報を頼りに、その店へ向かうことを決めた。


 ◇


 王都の薄暗い一角に、その娼館兼孤児院はひっそりと佇んでいた。


 通りからは人々の喧騒が聞こえるが、この一帯だけは甘く、そしてどこか退廃的な香水の匂いが漂う。

 古びた木材と、かすかな香のような匂いが混じり合い、場末の独特な雰囲気を醸し出していた。


 煌びやかでありながらも退廃的な空気に、リオスの侍従兼護衛であるフィノアはわずかに顔をしかめる。

 普段は冷静沈着な彼女も、この場所の異様な空気にわずかな動揺を見せていた。

 入口に立つサキュバスの受付嬢は、リオスの幼い見た目に一瞥をくれ、彼の入店を拒否した。


「あらあら、坊や。ここは貴方が来る場所じゃないわよ?

 保護者同伴でも、まだちょっと早いかしらねぇ?」


 からかうような声が響く。

 リオスは知る由もないが、その声には娼館特有の倦怠感はなく、言葉とは裏腹に真面目な勤務態度がうかがえた。


 掲げられた「ヴェルファーン家直営」の文字は伊達ではなく、年齢制限は必ず守るという意思を感じる。

 ――とはいえ、客ではないので、話くらいは聞いてほしいものだ。そんな風にリオスが考えていた、その時だった。


 店の前を、買い物帰りらしきルゥナが通りかかった。

 薄紫の髪をツインテールに結び、童顔で胸だけは目立つ彼女は、普段通りの軽やかな足取りだ。

 紙袋から覗くパンの甘い香りが、一瞬だけ場の空気を和らませる。

 リオスとフィノアの姿を見つけ、彼女は驚きつつも、いつもの調子で軽やかに声をかけてきた。


「あら、リオスくんじゃない! こんな場所で何してるの? もしかして、私に会いに来たの?」


 楽しそうに片目を閉じるルゥナに、リオスは素直な疑問をぶつけた。


「ルゥナ、どうしてここに?」

「どうして、って……私、ここに住んでるし」


 そう言って、ルゥナが娼館を指す。


 そういえば、娼館に住んでいると聞いたような気がする、とリオスは思い出した。

 ならば、関係者のルゥナなら、分かるかもしれない。

 そんな思いで、リオスは切り出した。


「実は、ビルグという料理人を探しているんだ。ここで働いてるって聞いたんだけど……」


 それを聞いたルゥナがあっけらかんと言う。


「ビルグさん? 働いてるよ。

 でも今、厨房は忙しい時間だから、とりあえず、私たちの部屋でお話しようよ」


 と軽く頷き、リオスたちを店の裏へと招き入れた。


 入り口からすぐの場所は広い談話室になっており、何人かの少女たちがくつろいでいる。

 ルゥナは、それらの少女たちにリオスを紹介しつつ、自室――いつもの3人での相部屋へと案内した。


 そして、室内に招かれたリオスはフィノアに部屋の前で待機するように指示を出す。


「フィノはここで待っててくれる?」


 とリオスが言うと、フィノアは一礼し、


「承知いたしました。何かあればすぐにお呼びください」


 そう言って扉の前で控えた。


 ルゥナはその様子を見つつ、


(やっぱ、貴族だとメイドとかついてるんだ。しかもめちゃくちゃ優秀そう)


 と、ルゥナはほんの少しの羨望と驚きを覚えた。


 ルゥナに案内されてリオスが部屋に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。


 部屋の隅の布団が大きく盛り上がり、その中でネリアが苦しそうにうめき声を上げている。

 煤けたピンクの髪が布団から覗き込み、淡い紫の瞳が苦痛に歪んでいた。


 部屋全体には淀んだ魔力の重苦しい空気が漂い、肌がひりつくような緊張感がリオスを包む。


 傍らにはサララがいて、顔面蒼白でオロオロしていた。

 艶やかな黒髪ロングは乱れ、普段の色気たっぷりのお姉さん然とした雰囲気は鳴りを潜めている。


「ルゥナ! ああっ、ネリアがまた……え、リオスくん?」


 サララは半泣き状態だった。


 リオスは内心で


(何だ、この部屋の澱んだ魔力は……それに、ネリアが苦しんでる?)


 ネリアの周囲に渦巻く澱んだ魔力に、胸の奥がざわつくのを感じた。これは、ただ事ではない。


 布団の中で悶えるネリアはというと、すでに限界寸前だった。

 肌は赤みを帯び、脂汗が滲み始めていた。乾いた唇からは、ひび割れた息が漏れる。


「うぅ……あっ、ぅあ……ぁあああああああ……っ!」


 布団の中から、獣のような呻き声が漏れ、彼女の身体は小刻みに震え、熱い息が布団から漏れ出す。


 リオスは驚きを隠せない。

 その場にいるだけで、肌が粟立つような感覚に襲われた。


 部屋に響くのは、ネリアの苦悶に満ちた呻き声と、サララの焦燥感に駆られた声だった。


 サララは必死にネリアを宥めようとするが、その懇願は、激しく波打つ苦痛の奔流に押し流され、全く効果がない。

 彼女は、もがくネリアの傍らで、縋るような声で懇願を繰り返した。


「人にされるのが嫌なら、せめて自分で処理して…っ!」


 その言葉は何度となく繰り返され、切実な願いの響きを帯びていた。


「ネリア、お願いだから、せめて、自分で……! このままでは、身体が持たないわ!」


 悲痛な叫びを上げるサララに対し、ネリアは布団の奥深くで、苦痛に歪んだ声で何度も拒絶の言葉を吐き出す。

 その声は掠れ、切迫した息遣いの合間に、極限状態の苦痛と、拭い去れない嫌悪感が混じり合っていた。


「い、嫌……いやだ……! どうしても……っ、私は……!」


 リオスの目には、ひどく切羽詰まった状況が映る。

 目の前で苦しむ少女と、必死に助けようとする友。

 しかし、ネリア自身が、唯一の解決策を拒んでいるようだった。

 その矛盾が、リオスの頭に重くのしかかる。


 緊迫した空気が満ちる室内で、ルゥナとサララは、リオスにネリアの特殊な状況について説明を始めた。


 サキュバスという種族は、定期的に性欲を発散しなければ、精神と肉体が崩壊する危険があること。

 そして、ネリアがサキュバスとしては異常といえるほど性行為に強い抵抗があり、そのため常に限界ギリギリの状態で生活していること――

 そして、今回はその限界を遥かに超え、制御不能な状態に陥っていることが、痛いほど明らかになった。


 ルゥナの顔には、焦りと絶望が色濃く浮かぶ。


「ネリアはね、サキュバスとしては本当に異端なの。

 性欲を定期的に発散しないと、こうやって暴走しちゃうのが私たちサキュバスの性だけど……

 彼女は、人にされるのはもちろん、自分で処理するのも嫌がってて……

 だから、いつもギリギリで抑えつけてるのよ」


 ルゥナは必死に声を絞り出し、その傍らでサララも涙ながらに付け加えた。


「今回は、もう限界を超えてしまって……! このままではネリアが、本当に壊れてしまうわ!」


 二人は、もはや他に手段がないと判断していた。

 ネリアを力ずくで抑えつけながら、最後の希望を込めて、リオスに懇願の視線を向けた。


「もうこのままじゃネリアが本当に壊れちゃう! リオスくん、お願い、ネリアを落ち着かせてあげて!」


 ルゥナの声は切羽詰まっており、その瞳には、切実な願いと、僅かながら期待の色が宿っていた。

 サララもまた、懇願するようにリオスを見つめる。


「リオスくん……ネリアを……!」


 リオスは状況を理解した。

 これは緊急事態であり、自分にしかできないことだと認識した。

 彼の中に躊躇は一瞬で消え去り、目の前のネリアを救うために、決意を固めた。


(これ、緊急事態だよね? 僕がやるしかない……!)


 意識が混濁しながらも抵抗するネリアを、ルゥナとサララがしっかりと抑える中、リオスは震える彼女にそっと近づいた。

 二人がかりで押さえつけられるネリアの身体は、それでも熱に浮かされたように小刻みに震えている。

 ルゥナとサララは、苦悶に歪む彼女の私服を素早く脱がせ、続いて下着もはぎ取る。


 ひゅう、と部屋の空気が微かに鳴り、ネリアの乳白色の肌があらわになった。

 その肌は触れる前から熱を帯びているのが見て取れ、額には脂汗が滲んでいる。

 未発達の小さな角は赤みを帯び、細く敏感な尻尾は感情に呼応してぴくり、ぴくりと不規則に揺れていた。

 彼女の全身から発せられる熱気と、荒い息遣いが、リオスの肌にも伝わってくる。


 リオスはまず、ネリアのピンクの髪に優しく触れ、その額にそっと唇を落とす。

 柔らかく、熱を帯びた肌の感触がリオスの唇に伝わった。

 ネリアの熱い息がリオスの頬にかかり、その荒い呼吸が、いかに彼女が追い詰められているかを物語っていた。


 彼はゆっくりと、ネリアの身体を下へとなぞっていく。

 控えめな胸元に顔を埋め、甘い匂いを嗅ぎ取りながら、小さな乳首を舌で弄び、指で優しく弾くと、ネリアの腰が小さく浮き上がった。

 リオスの視界には、熱に浮かされ乱れたネリアの表情が映り込む。

 苦悶と恍惚が入り混じるその顔は、彼自身の興奮をさらに煽った。


「んっ……ぁ、や……!」


 その肌は、触れるとさらに熱を帯びており、微かに汗ばんだ滑らかな感触がリオスの指に絡みつく。

 彼の指先が触れる場所すべてが、彼女の熱によってじんわりと温かくなるのを感じた。


 リオスはネリアのおなかに顔をうずめ、柔らかい感触と、微かに甘い匂いを嗅ぎ取る。


「ふぅ……、ん、んん……」


 彼女の細い脚を撫で上げ、内腿へと唇を滑らせていくにつれ、ネリアの喘ぎ声はさらに高まり、全身を愛撫される喜びに打ち震えているのが見て取れた。

 彼女の尻尾が激しく揺れ動き、その先端がリオスの手首に絡みつき、愛撫を求めるように締め付ける。

 その締め付けは、リオスをさらなる深みへと誘う。


 慎重に、そして優しく。

 指が触れるたびに、ネリアの身体は大きく跳ね、


「ああっ……いや……いやぁ……っ、でも、んぅ……」


 と、喉の奥から絞り出すような甘い声が溢れる。

 指から伝わる、脈打つような熱が、リオスの指先を痺れさせた。


 彼女は、これまでの苦痛から解放されるように、全身で悦びを表現し、大きく、何度も、身体を脈打たせた。


「ひくっ……ぅ、ぅああぁ……っ! や、め……やめないで……っ!」


 ネリアの苦悶の呻き声は、次第に深い安堵の息へと変わり、やがて甘い喘ぎ声だけが部屋に響き渡る。

 これまでの人生で感じたことのない、全身を貫くような痺れる快感がネリアを襲った。

 意識が遠のくほどの衝撃と、内側から溢れ出すような蕩ける感覚が、彼女の身体を支配する。

 その瞬間、彼女の身体を縛っていた苦痛の鎖は解き放たれ、深い解放感に包まれた。


 ネリアを間近で抑えつけていたルゥナとサララも、その全てを見ていた。

 ネリアの恍惚とした表情、そしてリオスの真摯な愛撫。

 その生々しい様子は、サキュバスである彼女たちの情動を刺激するには十分だった。

 二人の頬は赤く染まり、瞳は熱を帯び、荒い息が漏れる。


「こんなの……っ」


 ルゥナの唇からか細い声が漏れた。

 サララもまた、魅了されたようにリオスとネリアを見つめながら、自身の身体が熱を帯びていくのを感じていた。


 リオスはネリアを落ち着かせた後、その視線を、今度はルゥナとサララに向けた。

 二人の身体もまた、ネリアの熱に当てられ、僅かに震えている。

 ルゥナがはぁはぁと息を弾ませながら


「ね、ねぇリオスくん……お願い、私たちも……っ」


 と懇願し、サララも潤んだ瞳でリオスを見つめる。


「……っ、私たちも、もう限界よ……!」


 リオスは迷うことなく、両腕を広げ、二人のサキュバスを同時に抱き寄せた。

 ルゥナの薄紫のツインテールが、熱くなった頬に張り付いているのが見て取れた。

 彼の右手が、そのさらりとした髪に優しく触れ、首筋を辿る。

 指先から伝わる彼女の肌の熱が、リオスの指を痺れさせる。


「んんっ……やぁ……っ、なにこれ……っ!」


 ルゥナは童顔に似合わない甘い声を漏らし、普段の明るい表情が蕩けるように歪んだ。

 リオスの唇が、彼女の小さな耳たぶを甘く吸うと、ルゥナの身体は大きく跳ね、背中が弓なりに反った。


「ああっ……っ、リオス……そこ、だめ……っ!」


 ルゥナの言葉とは裏腹に、その声は一層甘く、身体は彼の手の動きに合わせて震えていた。

 滑らかな肌の感触と、微かに汗ばんだ湿り気が、彼の唇を刺激する。

 ルゥナの瞳は潤み、普段の無邪気な輝きは、熱に浮かされたような情欲へと変わっていた。

 彼女はもはや理性で抗う術を知らず、ただリオスの愛撫を受け入れ、甘い声を零し続けた。

 彼女の熱い吐息が、リオスの首筋に触れるたび、ゾクリとした快感が背筋を駆け上がった。


 二人の喘ぎ声が重なり合い、熱い興奮が部屋を満たしていく。

 リオスは、二人の身体の奥深くにある快感を呼び覚ますように、手と口を動かし続けた。

 彼の全身に、熱く甘い震えが伝播していくのを感じた。


 やがて、ふたりともが大きく痙攣した後、弛緩した身体を横たえた。

 部屋を満たしていた熱気と甘い匂いが、ゆっくりと落ち着いていく。

 満たされた眼差しで天井を見上げながら、ルゥナがポツリと呟いた。


「こんなの、知ったら、もう他じゃ満足できない」


 その声は、甘い余韻と、どこか深い諦めを含んでいた。

 サララもまた、その言葉に深く頷いた。


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