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序章

 ぼくが通っていた警察学校ではこんなことを教えられました。真実を見極めるためには、およそ百の声を聞かなければならない、と。残念ながら、ぼくは人の話を聞くのが苦手です。中学校の教師、高校の教師、ともにぼくには聞き取り能力が乏しいと注意されたことを覚えています。ぼくが警察官を志したのは、15歳のころでした。気が弱く、どちらかというと根暗だった性格が災いし、ぼくはよくカツアゲをされていたのです。そのときに助けてもらった警察官に憧れて、こうしてついに夢を叶えることができました。

 警察官になれて、ぼくは少しうかれていたのかもしれません。

 事件は突然起きました。平和な東京郊外で発生した殺人事件。被害者は14歳の女子中学生。さらに、彼女の通う中学校が事件の現場と聞き、衝撃が走りました。新人だったぼくは、先輩刑事の桂木雪さんとともに事件の捜査に乗り出すことになったのです。右も左も分からないぼくは、ただ桂木さんについていくだけでした。殺人事件と言う響きにすら慣れていない新人と、凍える鬼刑事と呼ばれている桂木さん。足手まといになるのは目に見えていることでした。

 事件が起きた区立A中学校。伝統を守りつつ、生徒たちに「自主・自立」のスクールミニマムを教えているという素晴らしい学校と聞きました。周辺住民もA中学校の教育に対する理解は相当深いようです。そんな中学校の校内で殺人事件が起き、世の中に大きな衝撃とともに注目が集まったことは言うまでもありません。閑静な住宅街の中での血生臭い殺人事件は、そこに住む人間の頭を打ちぬくような衝撃を与えたのです。

 被害者の女子生徒の名前は春本佳織。2年4組の図書委員で、それほど目立った生徒でもなかったらしいのです。事件後、2年4組のクラス担任が変わったと聞きました。本当かどうかは知りませんが、前任の担任の先生が産休を取ったそうです。

 事件のせいで、学校でも全校集会や臨時休校が続きました。生徒の動揺、教師はその言葉だけを敏感に感じ取り、至急そのような措置を取ったのです。そのおかげで我々も捜査がしやすくなりました。


「自主・自立」を掲げる中学校で起きた女子生徒殺害事件。

 セミが次々と倒れる、9月の始まりのことでした。


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