第六話 吸血鬼
(今何時…ってまだ深夜の1時か…ずいぶん早くに目覚めてしまった)
(なんだか懐かしい夢を見た気がする)
窓の外はまだ真っ暗のようだ。
(まだ夜だし…このまま二度寝…)
と、もう一度布団に入ろうとした時、窓の外に人影らしきものが見えた。
「…誰」
…。
(反応は…………ない。気のせいか?)
もう一度窓の外を見る。鈴はそのあまりの光景に自分の目を疑った。
「な…」
?「あれ?ばれちゃった?」
そう、そこには今まで見てきたどのものよりも美しい、紅い瞳を持つ女が立っていた。
?「はじめまして…になるかな?こんばんはお嬢さん、あなたを攫いに来ました」
「攫う?私を?」
?「そうです」
「な…んで?」
鈴は自分の身に起こっていることが現実とは思えなかった。なぜなら、目の前にいる彼女には、悪魔のような羽やツノ、尻尾のようなものが生えており、人間にとって、恐ろしい存在とされる”吸血鬼”そのものだったから。
?「あぁ、そんなに怯えないでいいよ?私、人の血はあんま好きじゃないんだ!そんなことより…」
?『君、人を殺した経験はある?』
「人を…殺した経験?」
?「そう、人を殺した経験」
(ある…とは言えないしなぁ)
「そんなのあるわけないじゃないですか!」
鈴は白を切った。
?「ふーん…白を切るんだ」
が、一瞬でバレた。
「え?」
?「じゃあこの子は知ってる?」
『切花』
「っ…」
?「ビンゴ」
「…どうして知ってるんですか」
?「んーなんでだろうね」
「切花に…妹に何かしたんですか」
?「…。」
「…あなたがそう言う態度なら、いくら吸血鬼といっても許しません。」
?「吸血鬼って分かってたんだ、許さないって言うのは例えばどう言うふうに?」
「私が今ここで、あなたを殺します。」
鈴が目つきを変えた。
?「へぇ…いいね、それ。でもまぁ今はそんなことしている場合じゃないから」
「そんなことって…」
?「そんな威嚇しないでよ。せっかくの美人さんなのにもったいないなぁw」
「…。」
?「いや褒め言葉なんだけど…とりあえず、大人しく私に攫われてくれない?」
「第一、なんであなたみたいな変質者に私が攫われないといけないんですか!理由を教えろっつー話ですよ!理由を!」
?「いやそりゃまぁ変質者に変わりはないんだけどさ、一応これでも本人に頼まれてきているんだよこっちも。」
「…本人って?」
?「そんなの…
?『切花に決まってんじゃん』