第五話 ②妹
私には、妹がいた。
私には、妹がいた。
元気で、明るくて、少し生意気なところもあるけれど、私にとって大事な存在だった。
私が、家を追い出されるよりもずっと前、お父さん、お母さん、そして切花とも一緒に暮らしていた。
それなりに幸せだったと思う。だが、その幸せは一瞬で砕け散ってしまった。
ある晩、私と切花が布団に入ってゴロゴロしていた時のことだった。
何者かがこの家に侵入した。
この頃両親は仕事の関係で夜も働いていたため、家には私と切花しかいなかった。
私は切花を守るために、護身用のナイフを持って侵入者が来るのを待った。
部屋の扉がバンッっと開かれ、知らない男が入ってきた。その男の手には、ナイフが握られていた。
私は、必死になって男にナイフを振るった。
男は悲痛な叫びをあげながらその場に倒れると瞬く間に床に血が広がった。
人を殺したのは、それが初めてのことだった。
私はその光景をただただ見つめていた。
切花の「助けて!」と叫ぶ声に気がつき、後ろの方を向くと、私の顔はみるみる青ざめていった。
侵入者は、一人ではなかったのだ。切花は、もう一人の男に抱えられて、泣きながら私の名前を呼んでいた。
その男は「動いたらこいつを殺す」と脅してきた。
私はその場から動くことができず、切花はその男に攫われてしまった。
攫われる直前の切花の声が頭に響く。
外はもう真っ暗で、私の耳には、ぽたっと額から流れる血の音だけが聞こえていた。
両親が帰ってきて警察に通報を入れたのは、次の日の朝だった。
その後、私は呆気なく逮捕されて…しばらく牢屋の中で過ごすことになった。
まあ牢屋の中での生活は快適ではなかった。
だから入って3時間で脱獄してやったよw。
まあその数時間後には私が正当防衛で行ったってことで無実…ではないけど、普通の生活はできるようになった。