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私、肉食系エルフです! ~有り余る才能の全てを肉に捧げたエルフの食い倒れ道中記~  作者: 加藤伊織 「帝都六家の隠し姫」発売中
200歳の転生エルフ、森を出る

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第32話 リスク分散しよう

 森の王を美味しくいただいて、頑張ってもう一回仕上げとばかりに牧草を育てたよ。あれだけ大きいエルクだったんだから、もう一回くらい食べられるかなあ?


 いつの間にかエイリンド様が近くに来てたけど、街中が肉祭りになってるせいかげそっとしてた。お皿にはエルク焼き肉の肉無しバージョン――つまりはジャムを添えたジャガイモ――が載っている。


「肉無し焼き肉、美味しいですか?」

「……悪くはない」


 無表情でジャムを混ぜたジャガイモをもそもそと食べるエイリンド様。

 うーん、ああ、サツマイモとりんごのパイとか前世であったけど、あれのうんと簡易版だと思えばそんなに悪くもないのかな? イモと甘味だし。


 私が足りない分の干し草を作ることで、たくさんの牛が餓死することは免れた。

 その代わり、1頭潰して食べさせてもらうんだけどね。

 誰のところの牛を潰すかで酪農家さんは話し合いをこそこそとしていて、それほど時間が掛からずにそれは決まった。


 ごめん、耳がいいから聞こえちゃったけど、要は一番年齢が行った乳牛を潰すって事なんだね……それが一番穏便だろうけど、食べる側から聞くと複雑な情報を聞いてしまったわ。


 ここの牛たちは結構痩せてる。というか、乳牛としての品種改良がこの時点でも割と進んでるみたいなんだよね。

 大きな乳房は目立つけど、背中の方とか骨が目立つの。栄養を全部お乳に取られちゃってるみたいな感じ。


 これも人間が歪めた自然の形なんだろうな……。

 でも、人間に利用されることで野生で生きるよりも安全に生きられたり、動物としても何もかもが悪いわけじゃない。

 自分で歩いて餌を探すことなく、雨風を凌げる寝床があって、いつでもお腹いっぱいってわけではないだろうけど、餌と水はちゃんと用意されて。


 エルフ的な私は拒否反応を示しそうになるし、エイリンド様なんかあからさまに目を逸らしてる。

 でも、私の9割くらいは「でも食べたら牛肉なんだよ!!」って思考に占められてるんだよね。


 私のお腹に収まる牛さんの命に敬意を表して、火の精霊(サラマンダー)水の精霊(ウンディーネ)に頼んで草を乾燥させる手伝いもしてもらった。これでかなり期間も短縮したはず。

 街長さんに交渉してみたら蜂蜜が少しだけどあったから、小皿にほんの少しだけ分けてもらう。

 今日の精霊たちへのお礼は、この蜂蜜だね。精霊も魔力渡されるよりこっちの方が好きだしね。


 私が精霊たちに声を掛けてお礼だよと言ったら、お皿の蜂蜜がどんどん減っていったから街長さんも奥さんも凄く驚いていた。うん、やっぱり見えてないな。


「精霊が見えない、その上で精霊の声と亡者の声の区別もできないなら、精霊に何かを頼むのはやめた方がいいと思います」


 私が空になったお皿を洗いながら言うと、街長さんは苦い顔で頷いた。


「それは私も痛感したよ。だが、この街は湖の恵みで成り立っている一面もある。漁師たちは『精霊に頼るな』と言ってもなかなか納得しないだろう」

「うーん、精霊だけに頼るから、漁業にばかり力を入れすぎるから良くないんだと思いますよ。何かひとつの産業だけ発展させると、それがダメになったときに痛手が凄いじゃないですか」


 前世で言うところの単一栽培(モノカルチヤー)だ。ここの場合は魚だけど。

 収益性の高いものを集中的に狙いすぎて、リスク分散ができてない。


「あ、そうだ、お祭りを大々的に宣伝して人を呼びましょうよ。美しき湖の精霊グレートヒェンと村の青年の恋物語をお芝居にしたり……我ながらこれっていい思いつきでは? お祭りの定番として夏至にやるとして、湖岸を花でいっぱいにしてグレートヒェン役の綺麗な未婚の女性を用意して。うん、事前に誰がグレートヒェンをやるかを投票で決めてもいいし、他の街に『湖の精霊グレートヒェン役募集』なんて宣伝するのもよさそう!」


 よくあったよね、戦国武将とかにまつわる地域のお祭りとかでお姫様を募集したりするのが。要はミスコンだよ。


「ここは夏涼しいだろうし風景ものどかで綺麗だから、貴族が別荘を建てるのもいいかもしれません。領主にお願いして年頃の娘さんを紹介してもらって、最初のグレートヒェン役をやってもらったらどうですか? 本物のグレートヒェンにはお花は一輪でいいけど、お祭りのグレートヒェン役には色とりどりの花で編んだ花冠とか載せたりして」

「ふむ――ふむふむ」

「特に賞金が出たりするわけじゃないけど、『美しき湖の精霊』って肩書きが付くの良くないですか? お芝居のグレートヒェン役は他に必要だけど、お祭りの顔としての美人のグレートヒェンがいたら、見に来る人も増えそう」

「すまない、それは是非書き留めさせてくれないか」


 街長さんは私の垂れ流しのアイディアに、慌ててペンと羊皮紙を取りに行った。

お読みいただきありがとうございます!

面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)

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