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私、肉食系エルフです! ~有り余る才能の全てを肉に捧げたエルフの食い倒れ道中記~  作者: 加藤伊織 「帝都六家の隠し姫」発売中
200歳の転生エルフ、森を出る

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第21話 北の街、ジーメへ

 森の王討伐の人員募集は、あっという間に埋まった。「前回8人だったけど今回は10人で臨む」という戦力強化による安心感と、『ひとり当たり15万ゾル」っていう高い報酬のせいだ。


 私はまだ冒険者ギルドには登録してなかったから、ここで登録させてもらった。

 エルフだと知った職員さんに凄く驚かれたけどね。


 まずいなー。頭巾を降ろして耳を見せたときの人の驚きっぷり、癖になりそうだよ。


 とりあえずの目的地は、ジーメという徒歩だと2日ほどの距離にある街。

 今回は船で北上して、船で半日、徒歩で半日という行程になるそうだ。



「わー、海だー! 潮の匂いがする!」

「よく潮の匂いだと分かったなあ」


 翌日、参加者全員で集合してジーメに向かうために港へ向かった。

 港で騒いでいたらザムザさんにさっくりと指摘されたので、笑顔で無言を貫いてごまかしておいた。

 考えてみたら、初めて里の外に出たのに、「潮の匂い」を知ってるわけないんだよね。うっかりしてました。


「船は見るのも乗るのも初めてです! 楽しみー」

「ジーメはこの時期だとゲルツからなら船で行きやすい。まあ、帰りは歩きになるがな」


 船自体はそんなに大きくないけど、マストと帆は付いてる。だったら大丈夫じゃないかな?


「潮の流れとか風向きの関係ですか? だったら私が風の精霊(シルフィード)に頼んで船が進めるくらいの風を吹かせることができますよ」

「はぁっ!?」


 ザムザさん、すっごい顔で驚いてる。まあ人間って精霊魔法が身近じゃないからね。


「ルル……あなた、本当に凄いわね」

「えっへん!」


 フランカさんに褒められて、無い胸を張る私。ザムザさんは乗っていく船の船長らしき人に、慌てて私の提案を伝えに行った。



 風の精霊の加護を受けて船はすいすいと進み、その日の午後、日が傾く前には私たちはジーメに到着した。

 日程の短縮はそのまま経費削減に繋がるから、船乗りさんたちにも、同行の冒険者さんたちにも喜ばれた。

 魔法使いらしきお姉さんに可愛い可愛いってちやほやされたし、干し果物とかもらっちゃったよ。


「さて、まずは被害の確認だな」


 最年長とか、一番強そうとかじゃないのに、何故か気づくとザムザさんが場を仕切っている。なんだろうなあ? 言動に説得力があるのかな?


「前回15年前の討伐の時は、ジーメの北の湖辺りに生息してる群れから森の王が出た。話を聞いた限りじゃ、群れはいくつかあるがその群れからいつも出るらしいな。……しかし、こりゃ酷え」


 その場にいた冒険者たちは驚きすぎて声も出ない様だった。

 私は街の中の様子がわかる様になる前に、精霊の悲鳴を聞いていた。


「酷い……魔物じゃなくて動物なんですよね? 動物が全て自然に寄りそうとは限らないと思いますけど、精霊たちをこんなに泣かせてるなんて」


 街の周りの森から、折れた木々の悲しい声がする。

 なんで? 折れても朽ちても、それは草木を食べる動物たちの食料になったり、土に還ったりして世界は回っていくものなのに。


「潰されてる家もあるな」

「街を囲む壁もあちこち壊されてるわね」

「一旦、ここの長に会いに行くか。森の王討伐にゲルツから冒険者が来たと伝えなきゃなんねえ」

「そうね、行きましょう。――ルル? どうしたの?」


 今まで聞いたことのない精霊たちの叫びに立ち尽くしていた私は、フランカさんに呼ばれて慌てて振り向いた。

 多分これ、人間じゃ分からないんだ。放っておくと一定周期で何度でも森の王は生まれてくる。


「闇に落ちた精霊の――呪いの気配がします」


 私の言葉に、その場の全員が顔に驚愕を貼り付けて私を見つめた。

お読みいただきありがとうございます!

面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブクマ、評価・いいねを入れていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)

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