表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

第7話 従魔契約(借り)


 プテラ地方はモンスターのあふれる地域であるが、どこでも同じ出現率というわけではない。


 魔素の多い場所、少ない場所というのがあり、魔物は前者の方に頻出する。


 冒険者ギルドがなくなっても一応町や村が存在しているのは、自然にできた魔素の少ない場所に人々が住んでいるからだった。


 そして、町と村、村と村を繋ぐ小道もそうした魔素の薄い場所を選んで草を刈って作られているのだが……


 弱いモンスターなどは時折、その小道に迷い込んでくるのだそうな。



 ◇



「きゃぁああ! 魔物よ!」


 ベッカの町を出てトロの村へ向かう林道には、確かに弱いモンスターが出現した。


「うん。あれはスライムだね」


 従者として雇った町娘のサラは怖がってしがみついてくるが、皇子はニッコリほほ笑んであらわれた1匹のスライムの頭をなでなでしてあげた。


「うふふ、カワイイなあ」


 ぽよーん、ぽよーん♪


 スライムは喜んでいる。


「じゃーねー」


 そう別れを告げると、スライムは先の道の茂みの方へピョンピョン跳ねていった。


「だ、だいじょうぶだったの?」


「すべてのモンスターが人間に敵対的というワケじゃないよ。あの子は頭のとんがりがツーンとしていただろ? だから攻撃して来ないんだ」


「悪いモンスターだとどうなの?」


「魔物の種類によってだけど、人間に敵対的なスライムだと頭のとんがりがギザギザしているよ」


 と言った矢先に、もう一匹スライムがあらわれる。


「もしかして……」


「あっ! あの子はギザギザしているね」


 ガルルルル……


 スライムは戦闘態勢に入る。


 しかし、アルトが美しい瞳でキッと睨み威嚇すると、スライムはダダダダダ……っと逃げ出してしまった。


「どうしたのかしら?」


「モンスターは強さに敏感だからね。あまりにも自分と差のある敵には刃向かって来ないんだよ。ほら、行こう」


 そう言ってアルト皇子はお気に入りの町娘の手を握って歩き出すが、しばらく行くとすぐにまた二匹のスライムがあらわれる。


 ガルルルル……!


 きゅー、きゅー……


「スライム同士で争っているのかしら?」


 サラはそう評すが、どちらかと言えば一匹がもう一匹を痛めつけているように見える。


 そう。


 魔物の世界であっても、弱い者はさらに弱い者を叩くのだ。


「こらー! 弱い者イジメはヤメロー!!」


 しかし、アルトが走っていってそう怒鳴ると、とんがりがギザギザなスライムはまたピューンと逃げて行ってしまった。


 一方、尖りがツーンとしているスライムは足元にすり寄ってくる。


 きゅー♪ きゅー♪


「お礼を言っているのかしら? 仲間になりたそうにこちらを見ているわね」


 サラがそう言うので、アルトは【借金王の眼】を発動させてみた。


 皇子の瞳に紫の魔力が宿る……


 すると、スライムの横にこんな光の文字があらわれる。


――――

対価を借金ツケにして、従魔契約を結びますか?


・対価: 100年分の餌

・貸し: 命の恩(50年分相当)

借金ツケ: 50年分の餌



はい/いいえ

――――


 どうやらアルトは魔物に対しても借金ができるらしかった。


(そんなこともできるんだ? 試しにやってみるか……)


 皇子の指が『はい』という光の文字へ触れると、スライムのコバルトブルーのボディがぴかーんと光った。


 ま、まぶしい……


「わーい! 従魔契約してくれたの! 嬉しいのー♪」


 すると、どこからかそんな声が聞こえる。


「なに? サラ。へんな声ださないでよ」


「わ、私じゃないわ。アルト君じゃないの?」


「僕がそんなしゃべり方をするわけがないだろ」


「ボクなのー! こっちこっち!」


 ぴょーん、ぴょーん!


 どうやらそれは従魔にしたスライムの声らしかった。


「さっきは危ないところを助けてくれてありがとうなのー! よかったら名前を付けてほしいのー」


 アルトはサラと顔を見合わせた。


「従魔契約をしたから言葉が通じるようになったってことかな?」


「それより、名前がほしいって言っているわよ」


「な、名前かぁ……」


 アルトはしばらく頭をひねった。


 皇子はなにかに名前をつけるのが苦手なのだ。


 考えてもなにも思い浮かばないので、スライムをプニプニ突っつき始める。


「キャッキャッ、くすぐったいのー♪」


「プニ、プニ、プニ……プニ助! これだ! お前は今日から『プニ助』だ。プニプニしているからッ」


「……えっ」


 と、隣で首をかしげるのはサラだった。


「そ、それはさすがにセンスが……」


「わーい、カワイイのー♪ ありがとなのー」


「自信作だもん。気に入ってくれたみたいだね!」


「本当にこれでよかったのかしら……」


 こうして(借金で)スライムが仲間になった。


お読みいただきありがとうございました!


※【お願い】

「面白い」「続きが気になる」「がんばれ」など思っていただけましたら、ぜひブックマークや

↓の『☆☆☆☆☆』ボタンで応援ください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ