どうしたものか
確かに私とブレットは婚約をしているのだけれども、まだ結婚をしている訳ではないのだ。
それなのに、キ、キスなどしても良いのかっ!? 良いのなら私は恐らく止まらなくなるのだが、それでも良いのかっ!? 今まで目の前に肉があるという状況で妄想だけを餌になんとか抑えてきた性欲という獣抑えてきたのである。
その肉を食べても良いと言うのであれば、私は私という獣を抑える事ができる自信がない。
確かに今まで何度かキスまではした事があるのだが、だからこそここ最近我慢も限界に近くなってきているのである。
そんな状態のわたくしに対して、デート中、それも幸せ絶頂といったところで不意を突くようにキスをされては、それはもう『今日は襲っても大丈夫』だと言われているようにしか思えないのだが。
「ねぇ、ブレット……」
「どうした? シャルロット」
「タリム領に戻ったら結婚式を早急にあげましょうっ!!」
「急にどうしたんだ? 別に婚約はしている訳だから急ぐ必要もないだろう? もう少しタリム領が軌道に乗ってからでも遅くはないのではないか?」
「それでは遅いのですわ……」
今のタリム領がこの調子で発展してくれればあと二、三年でブレットの言う条件にはなるだろう。
しかし、それでは遅い、いや遅すぎるくらいである。
「何が遅いんだ? 早く結婚式をあげないとまずい事があるとか?」
「いえ、そういう事ではなくて……耐えられそうにないのですわ……っ」
「耐えられそうにない? 何がだ?」
「わ、わたくしがブレットを襲いたい、子供を作りたいという欲求に耐えられそうにないのですわっ!!」
「そ、それを言うならば俺もそうだ……」
「……そ、そうなんですの?」
「……むしろ、シャルロット程の女性が俺の婚約者なんだ。 察してくれ」
そして、わたくしの決死の告白にブレットもわたくしと同じように子作りしたいという欲求に耐えられそうにないと言うではないか。
こ、今夜襲うぞこのやろうっ!!
「…………」
「…………」
そしてわたくしとブレットは一周回って付き合いたての初々しいカップルのように顔を真っ赤にしながら手を繋いでゆっくりと歩き出すのであった。
◆
「どうもここ最近の金貨の不足はタリム領とその周辺の領地にある『銀行』と言うシステムが王国の金貨不足を加速させているようです」
「……ふむ」
さて、どうしたものかと我、グリドニア王国現国王であるベルムードは頭を悩ませる。
ここ最近金貨が不足している事は分かっていた為今ある金貨を溶かして不純物を混ぜ、質の劣る金貨を作るという苦肉の策で延命して来たは良いのだそれは金貨の価値を下げる行為でもあり、同時にじわじわと物価が高騰し始めて来ているのである。