カルメリア
「そ、そう言っていただけるとありがたいっ」
「もうっ、自分で言った事なのに何でそんなに自信がなさげなんですのよっ!?」
「いや、なんかこういうのに慣れてなくてだな……」
「全く……」
でも、そういうブレットだからこそわたくしは好きになったのだから、このままブレッドには変わらないでいて欲しいと思う。
そして、二人して照れながら馬車に揺られて数時間。
わたくし達はタリム領の西側にあるラヴィーニ伯爵の領地、カルメリアへと到着した。
事前に来ることをブレットはカルメリアの領主へと伝えていたらしく到着してからは割とスムーズに領内へと入る事ができた。
そしてそのまま一旦はカルメリアを治めているラヴィーニ伯爵の元へ挨拶へと向かい、タリム領の特産品となり始めた日本酒、醤油、味噌、みりん、米などからチョコレートや煎餅まで手土産を渡し、軽く話した後別れる。
このラヴィーニ伯爵は夫婦とその子供達三名、兄(十歳)弟(八歳)妹(六歳)と、家族総出で出迎えてくれて、子供達はわたくし達が持ってきた手土産のお菓子に大はしゃぎで、挨拶もそこそこに貪り食い始め、母親にこっ酷く注意されていた。
次男であり実家の爵位を継がないブレットへ嫁ぐ身であれど、まだわたくしは公爵家であるランゲージ家の娘である為、そのランゲージ家の者を前にしての子供達の態度はいくら成人前の幼い子供達といえどラヴィーニ夫妻は肝が冷えた事だろう。
その事が奥さんの叱り具合と旦那さんの脂汗具合で何となく伝わってくる。
そして流石に可哀想なので怒っていない旨を伝えて、さらにお土産を倍プッシュで子供達はもはや母親の忠告などどこかへぶん投げてしまったのか先程以上のはしゃぎようである。
その光景を見て、昔「今は躾の邪魔だから餌をやるな見せるな、隠してあとで親である私に渡せっ!」と嫁いでいった姉に言われた事を思いだし、やってしまったと思ったのだが、渡してしまったものはしょうがない。
あ、あれですわ。 元気が一番という事で、わたくしは謝罪の意味も込めて、後日日本酒を送る旨をラヴィーニ夫妻に伝えると、満更でもなさそうなので一安心である。
そんなこんなでそのまま挨拶を終えたわたくし達は今現在、カルメリアの街を二人で手を繋いで歩いている。
と言っても護衛はいるので、正式には二人ではないのだが、その事は考えたら負けである。
「なんだかんだで無脚のタリム領よりいつ来ても活気がありますわね」
耳をすませば大人達の喧騒に混じって子供達の笑い声が聞こえてくるので治安もそこそこ良い事が窺える。