別問題の話
「ぶっ飛ばすって、お前な……これでも淑女がそんな汚い言葉を使うのもどうかとは思うが」
「あー、はいはい。 これでも一応ブレット以外にはちゃんと可憐な淑女のように振舞ってますので大丈夫ですわ。それに、そういうあなたこそもう少し男らしくシャンとするべきだと、わたくしは思いますけれども? 着ている衣服が皺だらけではございませんか。 どうせ着替えもそこそこ帰宅そうそう馬車を走らせたのでしょうけれども、仮にも貴族の長男であるブレットがそんなのでは何時まで経っても結婚は難しそうですわね」
「そこまで口が達者なら、大丈夫だろう。 しかし、返す弾の数が少しばかり多すぎる気がするのでそこはどうにかしてほしかったな。 普通に傷つくし」
一個言われたら倍以上言い返す、それがわたくしのモットーですの。ごめんなさいね。
「何をおっしゃいますの。 貴方はわたくしよりも四つも上の今年で二十歳でございましょう?それなのに浮いた話一つもないなんて、きっとご両親は心配しておりますわよ? こんな、捨てられた女の元に来ることよりもまずは異性の一人や二人とっ捕まえて早く安心させて上げなさいな」
「あーー、分かった、分かったから母さんみたいな事を言わないでくれよ。 ただでさえここ最近煩いんだから」
「分かればよろしいわ。 それで、このまま帰るおつもりかしら?」
「いや、お茶を頂こうか」
そして久しぶりに会った悪友と、久しぶりに取れたまとまった自由な時間を過ごす。
グリドニア王国第一王子であるカイザル・ユリウス・レオポルト殿下の婚約者であった頃は教養だマナーだなんだと分刻みのスケジュールを毎日刻まれ、休日といった休日などいつ取ったかすら思い出せないくらいには多忙な日々であった。
その事を考えると、ある意味で婚約破棄された今の方が幸せだとも思えるのだが、それとやられた行いを許すのとはまた別問題の話である。
こうしてゆっくりお茶を飲みながら悪友と領地経営について意見を述べ合うのだって、少し前までのわたくしであったのならば『女性がその様な政や領地経営等と言った事を話すのは品が無いから止めなさい』と教育係である女性に指示棒で叩かれたものである。
あぁ、今思い返しても腹立たしい。
「それに比べて、ブレットはわたくしが領地経営について話しても女性だからと言って止めるよう言わないわよね」
「誰と比べられたのか少し気になるところだけど、シャルロットが話す領地経営はいつも面白いし誰も思いつかないような発想の連発でいつも驚かされてばかりだからな。そんなシャルロットに領地経営等を話すなという者は、ものの本質を見極めることが出来ない愚か者の目を持っているのだろう、としか思わないな」