本心
そして、マリーと共に本日わたくしの側支えを担当してもらっている使用人へと視線を向けるのだが、何故だか気まずそうな表情をした後、そっと視線を逸らされてしまう。
え? 嘘でしょう? これでもわたくし恋愛のプロフェッショナルだと自負しておりましたのに……そんな……。
「マ、マリー……嘘ですわよね? 同僚と仕込んだドッキリでわたくしを驚かそうとしているだけですわよね?」
「いやだって、正直に申しますとマーシー様とカイザル殿下の話よりもシャルロット様とブレット様の方が酷かったですからね。 私は近くで見ていたのですから尚更、その酷さを間近で体験させていただいたんですが『さっさとくっ付けよ。 学舎に通う子供達と同レベル、いや、同レベルと言ったら子供達に失礼ですね。 あぁ、もどかしいっありゃないわ。 いっそのことブレットの執務室の引き出しの中へ私がシャルロット様に扮して熱れつな愛を綴ったラブレターをコッソリと入れてやろうかしら』と何度思い、そして、何度思い止まった事か」
あぁ、このマリーの歯に衣着せぬ物言いは間違いなく本当のようである。
しかしながらそれはあくまでもマリーの主観であって、彼女の感じ方が他の人と比べて普通ではない可能性だってあるのだ。
そうだ。
きっとわたくしではなくマリーがとんでもなく恋愛下手であるからこそ、マリーから見てまるでわたくしが恋愛下手に見えてしまっていただけ、という可能性だってあるのだ。
確かにわたくしのライフポイントは先程のマリーの一撃で限りなくゼロまで削られてしまったのだが、それでもまだゼロではない。
「あ、あなたもそう思っていたのかしら? もしマリーに口止め等をするように言われていたのならばわたくしが真実を言う事を許可いたしますわ。 それと、どんな事を言われてもわたくしは決して怒らないし、マリーにも怒らないように言っておきますから……ね?」
そしてわたくしは縋るような思いで先程視線を逸らされた側仕えの方に今一度彼女の本心も聞いてみる。
当然、その本心の内容によって一切咎めるつもりもない事も一緒に彼女へ伝える。
すると彼女、名前はアレッタは一度マリーへと『言っても大丈夫でしょうか?』という感じの目線を向け、その目線にマリーが『ええ、大丈夫ですよ。 この際言わないと分からないようなのでビシッと言っちゃってください。 それにこういう時に嘘をついた方が逆に叱られますよ』といったような目線で返している二人のやりとりが見えた。