帰りたくない
そして、そのどれもが美味しく、私はここタリム領から王都へと帰りたくないと思った程である。
『フルーツだいふく』は『おもち』というやらかく弾力もありチーズのように伸びる食べ物と甘い餡(基本的には『あんこ』という物らしいが今日のは私が『あんこ』の味に慣れていないから『なまくりーむ』を使っているとの事)と一緒に包んでおり、中身は私の知っているフルーツが使われている為『ちよこれ〜と』程びっくりするような衝撃は無かったが、とてつもなく美味しいかった。
むしろ、元のフルーツの味を知っているからこそ、その美味しさに驚いた程に、使われているフルーツのイチゴやメロンもまたとんでもなく美味しい物である事が分かってしまう。
その事にびっくりした私はシャルロットへ「王国のフルーツはこれ程までに進歩しているのですかっ!?」と問いかけてみた所「ここタリム領だけです。 タリム領以外で作られているフルーツは帝国とも遜色ないレベルのものですわ」と言うではないか。
そしてシャルロットは続けて「今は野菜でもある苺、メロン、スイカ、バナナ、パイナップルなどしかございませんが、あと数年もすれば果樹も育つのでさらに美味しいフルーツが食べられるようになりますわよ」との事である。
その事実に驚愕しつつ『ばなな』や『ぱいなっぷる』というフルーツは食べたことも聞いたこともないと言うので、わざわざメイドに指示し、カットして持ってきてくれたので食べてみると『ばなな』も『ぱいなっぷる』も今まで食べたことあるどのフルーツとも似たような味は記憶になく、けれどもそのどのフルーツよりも美味しく、今日食べたイチゴやメロンと匹敵する程である。
もうこのまま『ちよこれ〜と』と『フルーツだいふく』だけでお腹を満たしたいと思ってしまうのだが、まだ『しょーとけーき』と『せんべい』が残っている事を思い出してグッと堪えて次のお茶請けへと手を伸ばす。
そして手に取ったのはイチゴが上に乗っている『しょーとけーき』なる物である。
というのも、上に乗っているイチゴや、パン? に塗られている白い『なまくりーむ』は先程の『フルーツだいふく』でその美味しさは体験済みであり、間違いなく美味しい事が見ただけで分かったからである。
とりあえず味は先程食べた『フルーツだいふく』を想像しながらフォークを刺してみると、本体であるパンのような部分は私の想像よりも遥かに柔らかく、このままフォークで切ってしまえる程ではないか。