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愛の深さ故

「もう、そのまま押し倒してしまいなさいな」

「……え? おし……? え?」

「いえ、何でもございませんわ。 ただ、マーシーの話を聞いていますと、おそらくカイザル殿下もマーシー様の事を少なからず意識している事は間違い無いので、もうこのまま結婚しても大丈夫だと思いますわ」

「ほ、本当ですのっ!?」

「ええ。 間違いございませんわ。 わたくしが保証いたします」


 あぁ、なんだか夢みたいである。


 初恋の相手であるカイザル殿下と関係を、あのシャルロット様からお墨付きをいただけるような関係だなんてっ!! 


 わざわざタリム領まで来てシャルロットに直接相談したのは、どうやら正解であったようだ。


 そして、シャルロット様からカイザル殿下との関係のお墨付きを頂いたら、急に緊張が解け、今までは全然興味が湧かなかった、テーブルの上にある見た事もない緑色に透き通るお茶に、見た事もない菓子類の数々が目に入ってくるとともに、ここに来た表向きの理由がシャルロットとのお茶会という名目で来ている事を思い出す。


「す、すみませんっ! 私ばかり話に夢中になってしまってっ!!」

「いいですのよ。 それくらいマーシー様はカイザル殿下の事を愛しているという事なのでしょう」

「は、はいっ! そうですわねっ!!」


 よ、よかった……。 自分の話ばかり一方的に話してシャルロット様が怒っていないかと少しばかり不安ではあったのだが、どうやらシャルロット様は怒ってはいないようで、むしろそれは私の愛の深さ故であると申してくれるではありませんかっ!!


 そして、そう言われては私がいかにカイザル殿下の事を愛しているか、そして普段のカイザル殿下のどの部分が好きだとか、どの部分が可愛いだとか、ふと見せる真面目な表情がカッコイイのだとか、色々説明したいのだが、流石にこれ以上はシャルロット様に失礼であると、まだまだ喋りたいという湧き上がる衝動をぐっと堪えて、新しくコップに注いでくれた緑色のお茶を、自分自身を落ち着かせる為にも一口飲む。


 ……美味しい。


 別段、絶賛するほど美味しいというわけでもないのだが、それでも苦みの中にほのかな酸味があり、渋すぎるという事もなくすっきりと飲め、そしてゆっくりと遅れて甘みがやってくる、普段飲んでいる紅茶とはまた違った繊細な美味しさがそこにあった。


 まさにお口直しなどに最適であろう。


 お茶の美味しさに少し驚きつつも、私は次にテーブルの中央にある皿に盛られている茶色い見たこともないお菓子を手に取り、口へ入れる。

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