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やられた

 そして何よりもあの重たい(今にして思えば)金貨をわざわざ持ち運ぶ必要もなく、あの重たい財布を持ち歩かなくても良くなっただけでコレ程までに移動が楽になるとは。


 そう思いながら俺はタリム領の街を練り歩く。


「シェフよ、何か気になった料理はあるか?」

「いえ、それが大変い言いにくのですが……」

「何だ? 気になる屋台は一つも無いのか?」

「そうではなくて、お恥ずかしい話になるのですが気になる屋台ばかりでどれから攻めて良いのか分からないのです」

「何だ、お主もか」


 タリム領に入って最初に目に入ってきたのは屋台種類の多さである。


 ざっと見渡しても四種類以上はある。

 

 確かに関所近くは屋台が稼ぐには良い場所ではあるとは思うものの、王都であったとしてもせいぜい野菜のクズでできたスープか芋を蒸しただけのものしか売っていない。


 それがどうだ。


 タリム領では目に入っている屋台の種類だけでも『スープ』に『焼き芋』という一般的な屋台から『うどん』に『そば』、『鈴カステラ』に『たこ焼き』と『たい焼き』と、食べた事も無ければ見た事も聞いた事も無いような料理を提供する料理がそこら辺に出ているではないか。


 はっきりって、どこから手を付けて良いのか全く分からない上に、悲しいかな私の胃袋に入る食べ物の量は有限ときている。


 シェフと一緒にシェアした所で直ぐに限界が来てしまう事は目に見えている。


「だからか……」

「どうしました?ボルス伯爵」

「あぁ、マダム・ジュベッゼがなんで金貨百枚もの大金を一度に一気に換金したのか、その理由が分かってね。 きっと彼女は長期に渡ってこのタリム領に滞在するつもりなのだろう。 そして、恐らくそれだけではない」

「と、言いますと?」

「恐らくタリム領に飛び地として別荘を購入しているか、コレから購入しようとしている筈である」


 やられた。


 何もかもがマダム・ジュベッゼよりも数歩遅いではないか。 コレでは良い立地の土地など出遅れてしまった私にはなかなか手に入らないだろうし、手に入れることができたとしてもその時には土地転がし屋のせいで土地の価値は跳ね上がっているかもしれない。


「こうしては居れないっ! 爺やっ!」

「はい、お呼びでしょうか? 坊ちゃん」

「もう坊ちゃんという歳ではないといつも言っているであろうって、そんな事をしている場合ではないくて、今直ぐにここタリム領で立地の良い、またはコレから良くなるであろう土地を一つ買い取ってくれっ!!」

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