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分かりやすい詐欺

 そんな事を思いながら自分を今一度戒めていると、私達の乗っている馬車はタリム領の関所まで来ていたらしい。


 私達貴族の証であり家紋の入った馬車は他の馬車とは別の関所へ通され、スムーズに中へと入り手続きをしていく。


「それで、ボルス伯爵様は金貨何枚分を換金なされますか?」

「…………はい? 換金、だと?」

「はい。 金貨一枚でこのこの一万タリム券一枚、銀貨一枚で五千タリム券一枚、大銅貨一枚で千タリム券一枚と換金できます。如何なさいますか?」

「ぶ、無礼者がっ! 貴族相手にそんな子供騙しのような詐欺を働きおってっ!! 衛兵っ!衛兵はおらぬかっ!?」


 まさか、関所の役人ともあろう者が、貴族相手に紙切れ一枚を金貨で買わないかと申してくるとは、ここタリム領は本当に大丈夫なのかと現領主を問い詰めたくなる。


「ど、どうなさいましたっ!? ボルス伯爵っ!!」

「どうしたもこうしたも無いわっ! こやつが今……」


 あ、あそこに見えるは、私の初恋の相手であり、今は同じ美食家として私の良きライバルであるマダム・ジュベッゼではないかっ!?


「この金貨百枚を全て一万タリムに換金してくださるかしら?」


 あぁっ、しかもこんな分かりやすい詐欺に引っかかり金貨百枚もっ!?


 こ、ここは私がマダム・ジュベッゼに良いところを見せ、ではなくてマダム・ジュベッゼが詐欺にひっかからないように助けなければっ!!


「マ、マダムッ! マダム・ジュベッゼッ!! 待たれよっ!!」

「ん? ……あら、ミスター・ボルスじゃないのやっぱり貴方もここへ来ると思っていたわ。 こんにちは」

「こ、こんにちは……」


 って、年甲斐もなく好きな異性に声をかけられただけで心が満たされてしまう青年のように、マダム・ジュベッゼから声をかけられて舞い上がっている場合ではないっ!!


「あ、ああっ、あのっそのっこのっ」

「ゆっくり、落ち着いて下さいな。 私は逃げも隠れもしませんよ」

「は、はいっ。 か、かたじけない。 そ、それでその金貨百枚なんだが──」






 まさか、あれが詐欺では無いとは未だに信じられない。


 こんな紙切れ一枚が金貨と同等など、誰が想像できようか。


 そしてこのシステムを考えついた所で誰が実行しようとするのか。


 このシステムを考えて実行にまで移した人は頭が狂っているとしか思えない。


 でも、確かに領主本人の魔力で刻印された公爵家の刻印と言い、この緻密な押し印といい、そのどれもが真似できる代物では無いため偽物もまず出回らないであろう。


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