散々な言われよう
その、待ちに待った日本人のソウルフードの一つ、それも主食であるお米が今炊き上がりわたくしの目の前で白銀に輝いているのだ。
「お、おいシャルロットどうした? なんで泣いているんだ?」
「な、何でもございませんわ。 で、でも少しの間だけブレットの胸を貸して下さいまし」
それと同時に思い出すは日本にいる友達や家族達の面々で、もう会う事も出来ないんだなと思うともうダメだった。
溢れてくる涙を抑えることができずわたくしはブレットの胸で、感情が落ち着くまで泣いたあと、気を取り直して炊き上がったご飯を、これまたこの日の為に作った特注のお茶碗へと人数分装っていき食べる準備を始める。
「それでは、冷めないうちに食べましょうか」
そしてわたくしがそう言うと皆まってましたとばかりに早速フォークで救って食べ始める。
「ふむ……? あまり味はしないのだな」
「ほんのりと甘い? くらいですわね、お父さん」
「なぁブリジット。 これを育てるようだけれど、本当に大丈夫なのか?」
そして散々な言われようである。
後ろで食べている使用人や料理番達も想像と違ったのか皆首を傾げているのが見える。
「あ、貴方達ねぇ……まったく。 わたくしはこのお米の事を小麦粉に変わる『主食』であると言った筈ですわ。 言うなればこれはパンの代わりですの。 バターもジャムも何もつけていないパンが、とびきり美味しいく感じるような濃い味が付いているとでも思っているのですか? そして、主食のパンにジャムやバター、そしてスープなどが有るように、このお米にも一緒に食べると美味しくなるおかずやご飯のお供という物がございましてよ」
ほんと、この者達は一体どんなつもりでご飯を食べていたのか。
塩胡椒をふりかけた肉か何かとでも思っていたのだろうか。
しかしながら主食とは味を主張しないからこそ毎日飽きずに食べることができるからこその主食なのである。
「そう言われてみればそうだな」
「まぁ、確かにパンの味もこのおこめ? と同じようにパン自体の味はほんのりと甘い程度であったな」
「ねえシャルロットちゃん、このオレンジ色した物をつけて食べてみたいのだけれども、これは何かしら?」
「それは魚の一種で鮭という魚のみを解した物ですわ」
「これは何だ? やけに黒いが大丈夫なのか?」
「これは海苔の佃煮ですわ」
「シャルロット、それは何だい?」
「それはなめ茸というキノコですわ。 見た目は少しだけアレですが意外と美味しいですわよ。 お父様」
そしてとりあえず皆テーブルに次々と出していくご飯のお供を興味津々といった感じで手にとり、わたくしに聞いてくる。