悔やんでも悔やみきれない
「次期国王は弟であるベルホルンに継がせる事で今国は動いておる」
「……へ? 弟のベルホルンですってっ!? なぜですかっ!? 王位継承権一位は俺であったはずですし、大きな失態という失態もしておりませんっ!なのにどうして俺ではなく弟であるベルホルンなんですか父上っ!? 納得がいく説明をしてくださいっ!!」
意味がわからない。
普通ならば、このまま順当に行けば俺が国王となる筈であった。
にもかかわらず、事前にそのような知らせも無く急に弟へ継がせる事にしただって? 明らかに違和感がありすぎる。
恐らく弟が裏で巨額の賄賂を渡したに違いない。
「あのクズが……。父上はそれで良いのですかっ! 悪の手に染まって、目の前にある欲望に手を出してしまってはいずれその身は滅んでしまいますっ!そして、父上の身体は王国も含まれるのですっ!! 恐らく弟から巨額の賄賂を頂いたのでしょうが、今一度お考え下さいっ!」
「……そうか、貴様はそのように考えたのか」
そして俺の言葉を聞いた父上は、可哀想な、そして申し訳なさそうな目線を俺に向けると、心底失望したような声音で喋る。
「どうしたと言うのですか父上っ!? いつもの威厳はどこ行ったのですかっ!! そうなる事が分かっていながらなぜ賄賂──」
「馬鹿者っ!! 何も分かっていないのは貴様の方であるとなぜ分からぬっ! そして貴様が選ばれなかった理由は貴様が原因であるし、我は賄賂など受け取っておらぬわっ!!」
父上の事を思って話し出した俺の言葉は途中で父上に遮られ、次の瞬間には鬼の形相で怒鳴られて、そして今回俺ではなく弟が選ばれた理由は全て俺が原因であると宣うではないか。
「父上。いくら父上であろうとも流石に今回は横柄すぎるのでは? 真実から目を背けたい、直視はしたくなからと俺の言葉を遮り、それだけではなく罪を俺になすりつけるような発言……これでは独裁国家と何も変わらないではないですかっ!!」
まさか尊敬していた父上がここまで堕ちてしまったとは、怒りとともに悲しさすら覚える。
「我が息子がここまで阿呆であるとは……どこで子育てを間違ってしまったか。今回の件はもちろんこの馬鹿息子が原因なのだが、此奴を育てた我にも少しばかり原因はあるんだろう。 悔やんでも悔やみきれない」
実の息子に向けて何たる言い草であるか。
先の件と言い今の発言といい、今までは実の父上が相手と言う訳で我慢して来たのだが、そろそろ俺も我慢の限界である。