世界で一番可愛んだろうなぁ
そもそもの話、告白して、告白されて、晴れて両思いになった年頃の男女がホテルの一室で二人っきりなど、思春期真っ只中の私からすれば、まるで大好物を前にお預けを言い渡された犬のような心境である。
後、前世の精神年齢よりも肉体的な年齢に引っ張られるようで、肉体年齢相応に発情するあたり、人間も動物で、種の存続が本能に組み込まれているんだなと思う。
そもそも、この部屋を借りたのはわたくしの側仕えであり、なんだかやけに「頑張ってください」やら「応援してますから」やら「罠は完璧です。 ブレットは袋小路でしょう」やら「今は女性から手を出してという話も少なからず聞きます」やらと言っていた意味を今になって理解する。
その時聞き逃すのではなく、しっかりと問い詰めるべきであったと今更ながらに後悔してしまうも後の祭りである。
そして、女性のわたくしがこれ程まで発情してしまい理性を保つのに苦しんでいるのである。
きっとブレットはわたくし以上にヤバいのではないか?
いや、この場合は好都合である。
ブレットから襲われればわたくしはこの日の事を一生擦り倒してちょっとしたお願い事を聞かせる事をできるのかもしれない。
さぁ、ブレット。
今は苦しいのでしょうが、我慢などする必要はございません。
思う存分わたくしに襲いかかってきなさい。
あの後お互いにお風呂に入り、軽食をつまみ、少しだけ談笑して今二人同じベッドに入っているというのに全く襲ってこないではないかっ!!
貴様それでも男かっ!! 男であるのならば根性見せなさいよっ!!
しかしながら初めてというものはやはり、どうしても緊張してしまうものである。
流石に経験の無いであろうブレットを責めるというのも少し違う気も致しますし、ここはわたくしが少しだけ助け船を出して差し上げましょう。
感謝するのですよ?ブレット。
「ね、ねぇ、ブレット」
「なんだ? 明日も早いんだから早く寝たほうが良いぞ」
コ、コイツッ!
いや、怒ってはダメだ。
深呼吸、深呼吸。
すっ、すっ、はーーっ…………ってこれはラマーズ法よっ!! 赤ちゃんを出産する訳じゃないんだから、わたくしっ!!
………赤ちゃん?
……ブレットとの赤ちゃん……きっと男の子でも女の子でも最高に、世界で一番可愛んだろうなぁ。
って、そうじゃなくてっ!!
「お前、大丈夫か?」
うるさいですわっ!! 一体誰のせいだと思っているのですかっ!? ブレット、貴方のせいですわよっ!!
「だ、大丈夫ですわ。 それよりも、今この部屋にはわたくし達二人きりですわよね……?」