ブレット好みのドレス
「おお、分かってくれたか。どうだ?素直になれば今まで意固地になっていた事が馬鹿らしいと思える程に、肩の荷が降りて清々しい気分であろう?」
「ええ、そうですわね」
そしてわたくしは扇子で表情を隠して「オホホホッ」と笑う。
扇子が無ければ危ない所でしたわ。
ですが、これでわたくしの闘志に再度火がつきましたわ。
それと同時にわたくしが領地経営をしても口を出すどころか寧ろ応援してくれるブレットが如何に良い物件であるか、より一層思い知らされる。
そして決意する。
絶対にブレットを逃がさない、そして奪われてなるものか、と。
「ひっ!?」
何故だか知らないけれど後ろで側使えに扮して立っているブレットから小さな悲鳴が聞こえて来た気がするのだけれども気のせいだろう。
それからわたくし達はたわいも無い会話をして、レオポルト殿下との元婚約者同士のお茶会は終わるのであった。
◆
「全く、昼間は何度死んだと思った事か」
「大丈夫よ。ブレットもレオポルト殿下がいかにおめでたな頭をしているかアレを見て理解できたでしょう?もうおめでた過ぎて嫌味が嫌味になりませんでしたわ。寧ろ逆効果であったとさえ思えてしまうほどに。そ・れ・で・今のわたくしを見て思う事は、その、あの、何も無いのかしら?」
あの、結局最後まで婚約破棄についての謝罪も、約束を破った事に対してのお詫びも無く、最初から最後までただただ腹立たしいお茶会から数時間、夜はふけパーティーの時間まであと少しである。
今のわたくしの衣装はブレットの側仕えメイドから聞いた、ブレット好みのドレスを着ている。
まさかブレットがあんなフェチを持っていたなんて、あの側仕えはいい仕事をしますわね。
今度お茶会に誘って、更に根掘り葉掘りブレットの事について教えてもらおうかしら。
そんな事を思いながらわたくしはブレットの前で柄にも無くしなを作り、アピールをする。
今わたくしが着ているドレスはブレットの瞳と同じ色のワインレッド色のマーメイドラインのドレスを着ている。
今現在主流のドレスはベルラインのドレスであり、そもそもスラッとしたドレスは歴史上恐らくわたくしが初めて着るであろうドレスでもある。
前世の知識を生かして金儲け出来る機会としてこのクソッタレたパーティを少しでも有意義に使おうという魂胆でもあるのだが、せっかく煩い者がいないのだから着たいドレスを着て行きたい。
しかしながら、ブレットと同じ瞳の色というのは流石にやり過ぎただろうか?コレではわたくしがブレットの事を気にかけているという事がバレバレではなかろうか?