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何故か勝負することになった

 魔法訓練場に衝撃を起こしたカズキは、流石にやりすぎてどうすればいいか分からなかった。


「これって……弁償しないとですかね?」


「いや、大丈夫だよ。試験で破損した物は学園がお金を出す事になってるから。でも、あの的を破壊した子は数えれる人数しかいないよ」


 カズキが破壊した的は、ミスリル鉱石を加工して作られた特別製の的だ。他の受験生がびくともしなかった的を、無属性魔法で破壊したとなると当然注目される。


 そんなカズキの事で周りが騒がしくなっている時に、一気に場の空気を冷ます声が聞こえた。


「い、インチキだ!」


 カズキに顔を赤くしながら近づいていく声の主は、いきなり彼女を奪おうとしたケビンだった。


「お前なんかが的を破壊できるわけ無いだろ! そもそも無属性魔法なんて使いこなせるわけがない!」


 確信もないのに勢い任せで発言するケビンに、もはやカズキは反応すらしたくなかったのだが、


「……あのさ」


「そもそも無詠唱で魔法をお前なんかが使えるわけない! 予め細工でもしてたんだ!」


 自分の魔法がカズキに劣っていると分かって嘘をでっち上げているケビンの姿は、とても惨めである。


「あのな、自分が劣ってるからって人を陥れようとするなよ」


「な、なんだと!」


「俺は努力をしてるんだ。お前みたいな努力のかけらも感じられない魔法で、人の事をとやかく言える立場じゃないだろ」


 カズキはケビンの魔法を一応観察していたのだが、発射速度は遅いうえに威力もそこそこでしかなかった。ケビンが何の根拠もない発言をしたのに対し、カズキは絶対的な確信があるのだ。

 ケビンが納得いかないといった顔をしていると、アイクはひらめいて手をポンと叩いた。


「じゃあカズキ君とケビン君は模擬戦をしてくれないか?」


「えっ……」


 面倒くさいと思ったカズキだったが、ケビンは乗り気なのか表情が明るくなっていた。


「ここの試験で無詠唱で魔法を使ったのはカズキ君だけだし、この模擬戦で君の実力も証明できるんじゃないかな」


「……アイクさん楽しんでますよね」


「だって君の実力が見れるチャンスだよ。魔法だけじゃあ君の実力は測りきれないからね」


 ニッコリと爽やかスマイルで言うアイクに、カズキはこれはやらないと駄目なやつだと悟った。


「……分かりましたよ。みんなを待たせてしまってますし、魔法試験が終わってからでいいですか」


「よし、カズキ君の承諾ももらったからさっさと試験終わらせちゃおう」


 カズキの実力が見たくてウキウキなアイクは、今まで一番テンションが上がっていた。これまでの受験生の中でずば抜けた実力だと見抜いているからだ。


「ふん! お前を負かして恥をかかせてやるぜ!」


(勝手に言ってろ)


 相手との実力の差が分かっていないケビンに、カズキはどう手を抜いて戦おうか考えていた。ここまできたら少しみっともない負け方をさせた方が、ケビンも身にしみて思い知るだろうと悪い方のカズキが出ている。


「カズキ、悪い顔になってるで」


「だって面倒くさい事になってるんだから。こうなった原因にお灸をすえてやろう」


 ここにいるカエデ以外の全員は思い知ることになる。カズキがまだほんの少しの実力すら出していない事に。

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