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少しやりすぎた

 いよいよ魔法試験が始まろうとしていた。カズキとカエデは最後の方なので、二人はそれまでの時間が少し長いことが面倒くさいと感じていた。


「覚悟はしてたけどやっぱり長い」


「ずっと立ってるん疲れるわ」


 他の受験生の魔法を観察しているカズキだが、はっきり言ってしまえば全体的にかなりレベルが低い。


(俺目線だからか? いや、それにしても発動速度も発射速度も威力も全てにおいてレベルが低い。こんなもんなのか?)


 他の二つの訓練場でも試験は行われているが、ここがこれだと他の2つもしれているだろうとカズキは少しだけガッカリした。

 だが、そんなカズキの退屈をかき消した存在が一人だけ現れた。


「あっ、クロエ? だっけか。あの子がやるぞ」


 この魔法試験は初級魔法のみ使用可能となっている。魔法を放つ前に試験官に使う属性を伝え、その魔法の精度や威力を見るのだ。


「火属性でお願いします」


「火属性ね……よし、撃っていいよ」


 クロエは自分が一番自信のある火属性を選んだ。周りはクロエの事を知っている人ばかりで、既に視線はクロエに釘付けになっている。


火球(ファイアボール)


(おっ、発動速度も早いしあれなら威力もかなりあるんじゃないか?)


 カズキが思った通り、かなりのスピードで的に向かって飛んでいった火の玉は、着弾と共に訓練場を大きな音で包み込んだ。


「うん、流石第一王女様だね。いい威力だ」


「ありがとうございます」


 クロエは決して喜ぶなどはせずに、クールな立ち振る舞いで試験を終えた。自分に多少なり自信がなければああはならない。


「カエデ」


「うん、カズキ式スパルタ訓練法やったらもっと伸びるわ」


「いつその名前になったんだ、てかスパルタってなんだよ」


 自分の訓練方法に勝手に名前をつけられ、しかもスパルタなどと聞いただけで嫌になる名前にされてカズキはカエデの頬を摘んで軽く引っ張った。


「いはいいはい! でも他の誰かがやったら絶対スパルタって言うからな?」


「……そんな酷いか? いや、確かに最初はまじで何回か死にかけたからな。カエデの言う通りかもしれない」


「結局は納得するんや……でもあれは少なくとも強制的にやらすもんではないなぁ」


 そうこう話しているうちに、遂にカズキの番になった。七列に別れて行っているうち、カズキの列の試験官はアイクだった。


「やあ、カズキ君か」


「お願いします」


「君は無属性だね」


 この会場ではカエデしか知らないであろう情報をアイクが知っているという事は、アイクがサラの知り合いだという二人の予想は的中した。


「もう隠す気ないですよね?」


「ハハッ、そうだね。サラから話は聞いているさ。君が凄いってことは」


「別に普通じゃないですかね?」


「謙遜はよしたまえよ。まあ取り敢えず魔法を使ってくれ」


 アイクに言われてカズキは魔法を発動しようとするのだが、ここで一つの疑問が浮かんだ。


「あの、何の魔法を使えばいいですか? 無属性魔法って基本的にはランク付けされてないですし」


「あ、そうだったね。……まあ『身体強化(ブースト)』でもいいんだけど、みんな一応物理攻撃はしてないから、他の遠距離攻撃魔法なら何でもいいよ」


「分かりました」


 カズキが発動できる遠距離攻撃魔法は、今のところは『守壁(シールド)』をボールの形にしてぶん投げるか『衝撃波(インパクト)』を使うかだ。

 これをカズキは普通に面倒くさくて魔力球の名付けたのだが、これを『衝撃波(インパクト)』で飛ばすのはあくまで魔物や対人戦用の攻撃方法である。


(的にぶつけるだけだしこれでいいか)


 カズキは的に向けて手をかざし、ようやくできるようになった無詠唱での『衝撃波(インパクト)』を発動した。

 すると、カズキが魔法を発動した途端に辺りに突風が吹き荒れ、これまで壊れる事のなかった的を見事に粉砕してしまった。その衝撃は後ろの壁にまで伝わっており、壁にヒビがはいってしまった。


「あ……これ使うの久しぶりつい加減が」


「凄いな……サラの言ってた事は本当だ」


 カズキの魔法試験は、久しぶりに使った魔法で周囲を驚きで溢れかえらせてしまった。

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