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入試は楽に終わらせる

 王都についた次の日の朝、カズキとカエデは八時に宿を出て王立リアルアル学園に向かっていた。


「……歩いて来てる人少ないな。やっぱり金持ちとか貴族が多いのか」


 学校は他の街にもあるが、やはり王立リアルアル学園を卒業する方が圧倒的に価値が高い。その分英才教育を受けている人ばかり来る上に学費が結構な額になる為、平民の受験生は少なめである。


「貴族は受験料も学費も平民より安くなるらしいからなぁ。平民からしたら行きづらい学校やで」


 カズキは資料に書かれている学園の理念の欄を見る。人種差別、階級差別のない完全実力主義と書いてはいるが、実際そういうところでも階級差別はざらにあるだろうとカズキは予想していた。


「まあ、平和な事を祈るだけだ」


 十分ほど歩くと既に見えている王立リアリアル学園を、カズキは驚きながら見ていた。


(デカっ!? 俺が通ってた高校の三倍はあるぞ……流石っす)


 どの建物も綺麗に保たれており、訓練場に闘技場など沢山の施設がある。学園内に寮があり、大きめのマンションほどの大きさがある。


「ほら、見とれてんとさっさと行くで」


「あ、ああ……」


 カエデに引っ張られてカズキは校門の受験の受付に向かう。ここで貴族であれば、貴族の紋章を見せたあと左側の受付で受験票をもらうのだが、カズキとカエデにはないので受付は右側だ。


「受験料を」


 予め配られていた資料に書かれている受験料の金貨四枚を払い、カズキとカエデは受験票をもらって中に入る。


「時間結構ギリギリだから……二千人ぐらい受けてるぞこれ。定員って確か八百人だから半分以上落ちるのか」


「金貨四枚も払って落ちるんはちょっと痛いわなぁ。ウチらは受かるやろうけど」


 カズキは周りにいる受験生を見てみるが、確かに強そうだと感じた人は一人もいない。だして素の状態で五割程度の力で戦えば勝てるだろう。


(そう考えるとまだあいつはマシな方だったな……)


 店であったフロストの息子の事を思い出すカズキ。貴族なだけの事はあると、ほんの少しだけ見直した。


「最初は筆記試験だよな」


「うん、勉強もしたし大丈夫やろ」


 校舎内に入ると、教室に1〜200と書かれた紙が貼られていた。カズキの番号は1920番なので、少し奥へ進む。


「ここだな」


 1800〜2000と書かれた紙が貼られている教室に、カズキと一番違いのカエデが入る。


(……おっ、あの子は強いな)


 カズキが目をつけたのは、この世界ではそれなりに珍しい黒髪を腰まで伸ばし、抜群のスタイルをした美少女だ。

 カズキは明らかに周りの受験生とは違うオーラを感じとっていた。


「へえ、あの子なかなか強いやん。あれって確か王様の子やろ?」


「えっ、そうなの?」


「たしか、クロエって名前やったんとちゃうかな? 才能もそうやけど、いい教育受けてるだけあるなぁ」


(……俺、結構世間知らずかもな。普通の勉強じゃなくて世間のことも知らないと)


 試験対策の勉強とひたすら魔法と戦闘の訓練しかしてなかったカズキは、カエデですら知っている事を知らなくて反省した。


 席について五分ぐらい経つと、テスト用紙が配られてテストが始まった。一時間半で一度十分の休憩があり、再び一時間半の合計三時間のテストだが、カズキは比較的どの問題も楽に解くことができた。


「これで筆記試験は終了です。一時間後に魔法試験がありますので、魔法訓練場まで来てください」


 試験官に告げられ、ぞろぞろと受験生が出ていく。

 カズキとカエデは軽く食事を摂るために、一旦校舎を出て人が少ない場所に向かった。

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