触るな危険
森の中に、広大な湖があり、その中央にそびえ立つ建物がある。
水色とも青ともいえる屋根、白と黄色の外壁。荘厳な造りのその城は、湖と合わせて『王宮湖』とも言われている。
『王宮トリプライト』である。
見た目が、前世フランスの西海岸に建てられた修道院チックだなと思うのだが・・・。
一応、屋根の色と外壁の色が違うのと、東西南北に橋がかけられでいる。
橋の湖の岸の方には、これまた屋敷が建てられている。
南の橋の岸には、赤いドラゴンの旗が掲げられている建物で、ルベライト公爵家の屋敷となっていた。
因みに・・・。
東側は、青いドラゴンの旗で、クローライト公爵家のお屋敷。
西側は、白いドラゴンの旗で、ダンビュライト公爵家のお屋敷。
北側は、黒いドラゴンの旗で、キンバーライト公爵家のお屋敷となっている。
夕日が沈みかけたころに、王宮湖のルベライト公爵の屋敷に、黄金のドラゴンが降り立つ。
夕日で黄金に見えるのではなく、正真正銘の黄金のドラゴンだ。
そのドラゴンに男女が乗っている。
先に、男がドラゴンから降りる。
その男は、南の赤の領土、ルベライト領のルベライト公爵の嫡子で、ヘンリー・ルベライトという。
黄金のドラゴン『コスモ』と、絆を結んだ者である。
ヘンリーが、女性を降ろすのを手伝っている。
女性はサーシャと言い。
ヘンリーの専属のメイドである。
・・・つまり、私です。
私の顔は真っ赤になっていた。もちろん耳もばっちり真っ赤です。
顔が茹で上がったています。
足元もおぼつかないでいます。
「大丈夫かサーシャ。」
と、ヘンリー様が私の腰に手を体を支える。
「もっと、大丈夫でなくなりますから、離れてください。」
私は、ヘンリー様から離れる。
「誰のせいでこうなったか・・考えて頂けませんか?」
その依頼にあっさりヘンリー様は、自分のせいだから責任を取らせろと言って来た。
「姫抱っこで連れまわされるのもお断りです」
いつもの、姫抱っこな流れなパターンになりつつあったので、まずは断る。
私をゆで上げて何をするつもりですか?
脱水して、洗濯物と一緒に干す気ですか?
「ヘンリー様、ご自身のお色気が、どれほどの攻撃力かあるかおわかりですか?」
私は、瀕死だよ。
コスモに乗るという事で、コスモに跨げるようにズボンをはいたのはいいのよ。
いつもと勝手が違うという事で、ヘンリー様の左腕にしっかり後ろから抱きしめられて、耳元近くにヘンリー様のお顔が・・・。
ヘンリー様の息遣いが、耳に何でってくらいに響く、響く。
本当に何でなのよ!!
ため息なんてついた時には、全身に衝撃が走ったわよ。
そして、それに気づくとワザと、耳元に向かってため息をつく悪戯をしだす始末。
コスモがスピードを上げた際に、ヘンリー様の顎に頭突きをしてやったのに、それでも、まだ色気炸裂行動を犯すのよ。
私を殺す気ですか?!
ヒットポイントを回復させろ、さもないと遺体を引きずって行動させる事になるぞ~。
おっと、ロールプレイングゲームな世界に呼ばれてしまった。
本当に、ヤバいな私・・・現実逃避の世界へ誘われているよ。
「やあっ」
「ようっ」
と、軽く挨拶をしながら、こちらに近づいてくる男性が2人。
ハニーブロンドの髪にエメラルドの瞳の男性と、オレンジ色の髪に水色の瞳の男性。
2人とも優しそうな感じのイケメンだった。
ヘンリー様は丁寧にお辞儀をする。
「カティス殿下、アラン殿下、ご無沙汰しております。」
ヘンリー様は2人の事を知っているようだった。
と、言うか『殿下』と敬称が付いていた。
つまり・・ドラゴニア王国の王子だよ。
私は、あわててお辞儀をする。
「君がサーシャだね。」
2人の殿下は、私に近づいて来た。
「はい、サーシャ・カーネリアンです。」
丁寧にマナーに沿った挨拶をする。
「うん、様になっているきれいな挨拶だな。」
エメラルドの瞳をした男性の方がカティス王太子殿下で、水色の瞳の男性の方がアラン王子殿下。
お二方は、カリスタ様の命令で私を迎えに来たとのことだった。
「俺もついて行こう。」
と、言うヘンリー様の発言に、アラン様は女性の準備に男性はいらないとのことで、ついてくる事を拒否した。
「男性はいらないって・・・殿下たちも男性ではありませんか?」
「野暮な男は嫌われるぞ!」
と、アラン様は、ヘンリー様を注意した。
「俺らは、サーシャを母上のもとへ連れて行くだけで、後は退散となるだろう。アランが手を出したら、殴るぐらいは軽くできるから安心してくれ。」
殴るって・・・確かにアラン様は少しチャラ男の気がある雰囲気だが・・・。
「サーシャ、アラン殿下には近づくな。わかったな。」
ヘンリー様の注意に私は、満面の笑みでわかったことを伝えた。
要は、触るな危険。・・・触らせるな危険。
って、事ですね。
ですので、触れないでくださいアラン様。