なめていた
「ヘンリー様起きてください!!」
と、サーシャは氷の入った瓶で俺を起こすのが日課となっていた。
「おはようサーシャ。」
俺は、サーシャに起きたことを告げた。
昨日は、サーシャの寝室へ行ったが・・寝込みを襲う事をしなかった。
サーシャに気づいて貰えなければ意味がない事が分かったからな。
だから、今の俺のすることは・・・。
後ろを向いているサーシャをこちらに向かせる事。
”ギュ~”
と、サーシャの腕を掴みこちらに向かせた。
「ヘンリー様、どうなされましたか?」
サーシャは寝起きの俺を見て・・徐々に顔を赤らめる。
「俺の姿を見て挨拶してくれないかな?」
「出来るならしています。出来ないからヘンリー様の方を向かないのですよ。」
サーシャは再び俺から目を反らす。
そう来たか・・・やはり、道のりは長そうだ・・・。
100日持たない俺に、酷な行動をサーシャをしてくれる。
「サーシャ、陛下から招待状が来ている。」
俺は、サーシャに陛下からの招待状を渡す。
「私にですか?」
招待状を見て、封を開ける。
「辞退したいのですが・・・緑化計画の事もありますから出来ませんか?」
俺は、王妃がドレスを用意している事を言い、辞退が無理な事を伝えた。
「わかりました・・・しか、答えがないのですね。」
「そうなるな。」
サーシャは、クスリと苦笑いをする。
明日の昼には、王宮へ向かう事を言うと、ジャネットらに引継ぎをしなければと急いで部屋を出た。
昼食頃に領都から来る書類をさばききったところで、サーシャが紅茶を持ってきた。
「ヘンリー様、お疲れ様です。休憩しましょう。」
サーシャは紅茶をテーブルの上に置く
そして、小鉢を2皿置いた。
中身を見ると、亀裂のはいったクッキーのようなものが入っていた。
「サーシャが作ったクッキーか?」
「私が作りましたが、材料に小麦粉は使っていませんので、クッキーではありません。」
サーシャが出したのは『おかき』という物だった。
一つは醤油味で、もう一つが海苔味と説明してくれた。
「せっかくだ・・・食べさせてくれ。」
俺は口を開けて、おかきの催促をする。
まずは、醤油味のおかきを口に入れてくれた。
”バリッ”
「・・・おいしい。」
甘いお菓子をイメージしたが、ほんのりしょっぱいお菓子だった。
「お餅から作ったお菓子です。」
「これがお餅だと?!」
餅のモチモチ感がなく、サクサク感になっているのに餅なのか?
サーシャは、隣町シリシャスの人が、餅を持って来てくれたと伝えてくれた事を説明してくれた。
「何種類かお餅のレシピを作って、町の人たちに試食をして貰ったのですが、このおかきは、お餅好きのヘンリー様にまずは食べて頂きたくて・・・。」
満面の笑みで俺を見つめるサーシャ。
もう一種類の海苔味のおかきを手で掴み出してきた。
海苔の見た目が、最初町の人たちに受け入れて貰えずにいたが、細かく切って出したところ受け入れて貰えたことを報告してくれた。
目の前にある海苔味のおかきは、帯状に包んだおかきだが、お餅を突いている時点で、細かく切った海苔を入れるのはどうかと、いう案を出してきた。
「やってみるといい。」
そう言い、俺は海苔味のおかきを口にする。
サーシャの指に海苔の一部が点いていた。
俺は・・・・
「っ?!」
サーシャの腕を掴みのりの付いた指を口の中に含み舌でなめる。
「なっ・・・なにを・・・?!」
サーシャが、驚き戸惑っていた。
俺は、サーシャを真剣な眼差しで見つめながら、口の中でサーシャの指をなめまわす。
「うぐっ」
と、いきなりサーシャは指で俺の舌を引っ搔いた。
そして、口の中の指を引き抜く。
「・・・・・・。」
サーシャは何も言わずに椅子から立ち上がり、洗面台へ向かう。
”ジャー――――― ゴシゴシゴシ ジャーーーー キュッ”
洗面台で手をごしごしとしっかり洗う音がする。
蛇口の栓が閉められ水が止まる。
だが、再びサーシャは勢いよく水を出し手を洗いだした。
”ジャーーーーー ゴシゴシゴシ ジャーーーー きゅっ”
二回も、洗う事なのか?
そこまでするのかよ。
・・・俺もか。
「ヘンリー・・さま・・・ご自身の色気で遊ばないでください!!」
「舌が・・・痛いのだが。」
俺は舌がひりひり痛い事を言う。
「当たり前でしょう。舌を引っ掻いたんですから、じっくり痛みを味わってください・・・私からのお仕置きです。」
ああ・・・そう来たか。
「こういう時って、傷口をなめて消毒して欲しいと言えばいいのか?」
「だ~か~ら~・・・色気で弄ばないで!!」
顔を真っ赤にして怒っているのは分かるが・・・どうも可愛いと思ってしまうのだよな。
だから、ついついちょっかいを出してしまうのだな。
それにしても、ジャネットが言っていた、サーシャは恋愛に発展するのを拒んでいると言っていたが、こういう事なのか・・・・。
それは、俺の行動にも問題があるのではないか?
もし、サーシャに舌を引っ掻かれなければ・・・どうなっていたのだろうか?
あの手を離さなければ・・・。