温度差
俺が選んだチョーカーは、両親が王宮へ持って行って貰う手筈となった。
モーリスは、王宮への手配がある為に王都へと、俺は、サーシャのいるピンクアメジへと向かう事になった。
陛下からの招待状を持って・・・・。
「ヘンリー様。サーシャさんはナーガ王国との関りのある者のようです。」
と、モーリスが言った。
ナーガ王国は、クリスタルの生産が世界一として有名な国。
モーリスの甥は、サーシャの事を調べている途中で、ナーガ王国で行方不明になった事を伝えてくれた。
「陛下が推薦してくれた者を疑うとはな・・。」
サーシャが、ナーガ王国の人間なら心配はない。
だが・・・・。
「カインと、ベストラは大丈夫なのか?」
「はい、近くまで・・・ベストラの意識が分かる範囲まで近づくことは出来ました。ただ・・・ベストラは酔っているようでした。」
酔うとは・・・情報機関に所属しているドラゴンは貴金属に酔わないようにそれなりの訓練を受けているはず。
「リュヌの銀の罠か・・・・。」
「サーシャさんも、リュヌの銀を持っているようですし・・・。」
ナーガ王国は、クリスタルの他にリュヌの銀が採取できる数少ない国でもある。
そして、その銀なのだが・・・情報機関のドラゴンを悩ませている銀でもある。金には近づかないようにしているのだが、銀色には近づいてしまう、
ナイフやフォーク、スプーンですら銀製品。
剣もその他もろもろも銀色に満ちている。
通常の銀には耐性はついているがリュヌの銀はそうはいかない。
それに、やられているのか・・・・。
「事情を説明して解放してもらうように陛下にお願いする予定です。」
そのように言って、俺とモーリスは別れた。
サーシャが、ナーガ王国の出身者。
フレディが絶賛する切れ者ウィリアム・ヘリオドールがいるの国。
だから、あんなにサーシャは聡明なのだな。
こうして、俺はサーシャのいるピンクアメジに着いた。
「ヘンリー様、お待ちしておりました。」
と、宿泊宿のロビーにジャネットが夜中に近いというのにいた。
「お疲れのところお時間を頂きありがとうございます。」
ジャネットは俺に話があるという事で、ロビーのテーブル席のソファーに座らされた。
「それで話とは?」
もしや、緑化計画の事で何かあったのでは?
「国王主催の舞踏会がそろそろのはず、ヘンリー様はサーシャさんを連れていかれるのでしょう。」
俺は、そのようになっていると言う。
それが、どうしたというのだ?
「5年程前の国王主催の舞踏会でお見掛けした時と、今年のヴァネッサ様の誕生日でお見掛けした時のヘンリー様は違った感じにお見受けしたのですから・・。」
ジャネットは何が言いたいのだ?
「今は、5年程前にお見受けした時のような雰囲気ですが、サーシャさんといる時のヘンリー様は、多少感情が分かるのです・・・。」
そうなのか・・・だから、両親やモーリスは俺がサーシャの事が好きだという事が名前を挙げなくてもわかったのか?
「ヘンリー様にはサーシャさんが必要なようです。」
俺は、その事については自覚している事を伝える。
「そうですか・・・是非、サーシャさんには次期公爵夫人となって欲しいと思うのですが・・・。」
ジャネットが言い辛そうな感じで物思いに更けている。
「思った事を言ってくれた方が対処ができるのだが・・・。」
と、ジャネットが言えないでいる言葉を言うように促す。
「サーシャさんは果たして、ヘンリー様を必要としているかどうかです。」
ジャネットの言葉に衝撃を受ける。
それと同時に、サーシャは俺を必要としているか考える。
・・・・・ない。
それどころか、すぐにでも立ち去れる準備が出来ている状況だ。
「結婚に失敗した私が言うのもなんですが、サーシャさんは恋愛を拒んでいるように思えるのです。」
俺が領都へ行っている時に、俺の話があった時に感じたと言ってくれた。
・・・・俺の押しが弱いのか?
それよりも、サーシャが必要とする男とは・・・どのような男なのだ?
「相手が必要か・・必要ないかで、恋愛は決まるのか?」
確かにサーシャの聡明さは惹かれるモノがある。
それは、尊敬の念というモノではないのか?
尊敬の念・・・イコール、恋愛ではないな。
リオンとは家族であり続けたいと思った。
家族として、一緒にいて欲しかったし今でも、リオンとは家族でありたいと思う気持ちは心の片隅に存在している。
だが、サーシャを想う気持ちは・・・。
リオンに感じた暖かさでなく・・・。
いや・・暖かさも確かに一部存在はする。
でも、サーシャに感じてしまうモノ
それは・・・・熱だ。
そして、サーシャの中にある熱をえぐりだしたい。
やばいな・・・今の俺・・結構恐ろしい。
こんな想いを長年続けていられるのか?
それこそ、100年以上。
100日も持たないな。
「サーシャの恋愛感情を引きずり出したい。俺でいっぱいにしたい。」