つくる・・・成す事
ヘンリー様がクッキー祭りの為に領都に帰っていった。
私は、緑化計画の為に、この地に残った。
毎日3回に分けて書類を届けるドラゴン騎士の方々も、ヘンリー様が領都に行ったので来ない。
私はというと・・・料理のメニューに奮闘している。
いろんな料理の材料が近隣の町からも持ち込まれている。
この緑化計画に乗っかろうと近隣からも来ているのだ。
前にハワードさんがルベライト城に来られた際に出した『つぶつぶオレンジジュース』は、ここでも好評だった。
なので、つぶつぶオレンジジュースでゼリーも作った。
桃のゼリーも桃のエキスのみでなく果肉入りのゼリーも作る。
もちろんマルベリーのゼリーも作る。
全部好評だった。
ジャネットさんから、やはり海苔が受け入れにくいようだと報告が挙がった。
やはり、『黒』が受け入れがたいか・・・。
黒ゴマは普通に受け入れているのに、どうして海苔だとダメなのよ~。
お赤飯には嬉しそうに、黒いゴマのごま塩をかけて食べているのよ。
まったく・・・・と、思ったのだが、
『お赤飯に黒ゴマをかける。』
海苔を黒ゴマの様にかけるようにしたら・・・と、思い浮かんだおかげで、ちらし寿司を作ってみた。
ちらし寿司の上にはしっかり刻みのりをかけた物だ。
「これはおいしいわ。こんなふうに小さくすれば、海苔も受け入れられるわね。」
「黒があった方が色合いがよく見えないか?」
と、言ったように着々と領民の方々に、海苔の見た目も払拭されてきてます。
「この味を引き締めている酸っぱい感じのするものはなんだ?」
「本来なら、お酢という調味料なのですが、せっかくなのでレモンで代用してみました。」
そう、川のサイドにレモンを植えるならと、レモンで代用してちらし寿司を作ったのだ。
こちらも、より喜ばれた。
「コスモと絆を結んでいるヘンリー様は、お餅が好きだと聞いて持ってきました。」
と、40歳ぐらいの男性が、ピンクアメジの隣町シリシャスからリアカーを引いて持ってきたのだ。
・・・・お餅だと!!
お醤油に付けて海苔と一緒に食べれるわ。
私は、すぐにリアカーの荷物に飛びついた。
「あら、この箱は?」
と、お餅の入った箱とは違う感じの箱があった。
「チーズですよ。」
隣町シリシャスは、もち米と酪農の町だと説明して貰った。
ただ、米と違い餅は、あまり需要がなく困って、酪農に頼っているような説明をした。
「ヘンリー様がお餅好きという事で、生産をやめるつもりはないのですが、出来れば使っていただけるとありがたい。」
使わないわけないでしょうが!!
私の素人ながら、前世のレシピ集をフル活用、ネットで見ただけで作っていないレシピだろうが出そうではないか!!
厨房の火だけでなく、きっと私の料理魂にも火が付いたと思う。
先ほど浮かんだ磯部餅にチーズを振りかける。
チーズを振りかける事で海苔の黒をチーズで隠せる。
「お餅に・・・チーズですか?」
おっと、聞き捨てならない言葉が出たぞ
「あなたたち、ドリアって料理を食べた事ないのかしら、私は昨日の夕飯はそれでしたよ。あなたはいつ食べたのかしら?」
『3日前』の一言。
ここの地方はグラタン料理が一般家庭の料理のようだ。
なので、お米の入ったグラタン『ドリア』も、一般家庭料理に含まれる。
そういう事で、納得して食べてくれて、納得して受け入れてくれた。
その後、餅入りのピッツァ、餅入りのお好み焼き、雑煮、餅入りドーナッツを作った。
「サーシャさんの作る料理は、斬新な物が多いけど全部おいしいわ。」
まだ、あるのかしらというジャネットさんの問いに、私は後ひとつ作ろうとしたけど、ヘンリー様が帰って来てからにしようと思った事を伝える。
「餅好きなのに食べられないのは申し訳ないわ。だから最後の一つはヘンリー様に取っておきたいと思って・・・。」
ジャネットさんは驚いた顔をした後、ホッとした顔で私を見た。
「サーシャさんはヘンリー様の事を好きなのね。」
「まあ、好きか嫌いかと言われれば、好きですよ。それって、当然ではありませんか。」
その答えに、何故か今までにない焦りのような驚きを見せる。
「サーシャさん、お聞きしてもいいかしら、あなた・・・他人に対して恋愛感情を感じた事ってあるかしら?」
・・・ああ、私が苦手としている分野の話だ。
私は・・・好意を抱く事までは出来ても・・・
恋愛感情を抱くことが・・・・恐い。
手を出してはいけない分野だと思っている。
前世の、あの両親の子としての記憶があるのだから・・・。
どう頑張っても、私はいい親には成れない。
そんな親の子は・・・不幸だ。
子供を不幸にしたくない。
ならば、なさなければいい。
恋愛は・・・妄想だけでいい。
そこで、止めなければ・・・人を不幸にさせる。
現実で・・・人を愛してはならない。
「私に恋愛感情を求めても無理ですよ。」
と、満面の笑みで答えた。