港町の発展には・・・
私は一端、作業している部屋から出て厨房を借りる。
そして、お盆に作ったものを乗せ、再び部屋へ戻る。
「ヘンリー様お持たせしました。まずはこちらを食べてください。」
と、私は皿をだす。
白いお米を三角にしたおにぎり。
「中身は鮭です。」
ヘンリー様はそれを食す。
「いつも食べているおにぎりだが、これがどうしたのだ?」
私は、もう一皿を出す。
「何だこの黒いのは?」
「海の苔を集め紙状にした物をくるんだおにぎりです。中身は一緒で鮭です。」
私は、海苔で巻いたおにぎりを出したのだ。
そう、外国のコンビニで出ているおにぎりは、海苔を付けないでも食べられるように包装されているのだ。
日本では、別々ではあるが、おにぎりの包装を開ける際に海苔が巻かれる。
海苔とご飯がセットの作りになっているのだ。
ヘンリー様も嫌な顔をしている。
仕方がない。
私はもう一皿出す。
「これは、キンバーライト領で収穫される昆布だしの原料の昆布です。」
黒い板状の物体・・・昆布。
ヘンリー様は昆布を一欠けら掴み見つめる。
でも、海苔の付いたおにぎりを食べようとはしない。
私は、持っている最後の皿に乗っている海苔の付いたおにぎりを掴み食べる。
ああ、懐かしい味。
前世での、贅沢な朝食を思い出す。
一人暮らしを始めてからの私の朝食は、パン一枚だった。
それは早くて安いから、8枚入りのパン一袋高くても100円。
それを一日一枚として8日間持つのだ。
だけどコンビニのおにぎりは一個最低でも100円。
8日で100円の朝食をしている者には高級品。
コンビニおにぎりを8等分なんて出来ないし、したところでお腹が膨れるわけはない。
だけど、給料前日まで節約を保てた時のご褒美として、コンビニで120円程のおにぎりを一つ買って食べていたのだ。
もちろん節約失敗したらおにぎりは食べられない。
そのような生活をしていた時の事を思い出した。
ヘンリー様が一口、海苔の付いたおにぎりを食べる。
「・・・不思議だな。このような惨い色の物が、こんなにも味を引き立たせるとは・・・。」
ヘンリー様は海苔の付いたおにぎりを平らげる。
「成功するかわからないのですが・・・やってみる価値のある計画があります。」
私は、アコヤ貝の殻を取り出しテーブルに置く。
「真珠を作るためのアコヤ貝だな。」
「この貝殻には利用価値が豊富です。その一つ、通常なら牡蠣の殻を使うのですが、アコヤ貝を使って海苔を作れないかという事です。」
もし、これが成功すれば、ピンクスピネの産業が飛躍的に上がる。
真珠の産業
アコヤ貝の殻から螺鈿細工を作ることが出来る。
「そして螺鈿細工で残った殻から、アジサイの色をピンクにする事の出来る肥料を作り出すことが出来ます。」
アルカリ石灰という肥料だ。
アジサイをピンクにするアルカリ性の土壌にする事が出来る。
私は、まっすぐヘンリー様を見て頷く
「どうでしょうか・・やる価値はありませんか?」
「ないとは言えないだろうが。」
ヘンリー様の笑い声がする。
そして、私も微笑む。
その後、ピンクスピネにある孤児院の施設で海苔工場を作る計画をする。
そして、ピンクカルサに螺鈿工房、アルカリ石灰工場の建設も計画をする。
「それで、ピンクスピネにはどのような植物を植えるのだ?」
ああ、そうなりますよね・・・。
「絹糸の染色での原料でクルクマ、蘇芳、藍をお願いしようと思うのですが・・・。」
私は困ったように言うと、やはりヘンリー様は言いたい事は全て述べて欲しいと言ってくれた。
「魚料理を引き立てるハーブ『ディル』があった方がいいと思うのです。・・ですが黄色い花なのですよね~。」
そのように言うと、近隣の町で生産させるしかないとヘンリー様が言った。
そのような事をヘンリー様は言ったので、私は近隣の町の生産のことについての補足を口にする。
「近隣にミカンを栽培している地域がありましたよね。」
初めてピンクカルサへ向かう際、海岸にミカン畑があった。
「そのミカン畑を広げて貰い生産して欲しい柑橘類がございます。」
私は、また本を出す。
しおりが、たくさん挟んでいる本を渡す。
「グレープフルーツ、マンダリン、ダイダイ、ベルガモット、ライムこれらから、アロマオイルを抽出することが出来ます。」
ヘンリー様はしおりの挟んでいるページを一つ一つ見る。
「すべては無理かもしれないが、出来ると思う。」
ヘンリー様は保養地にアロマを取り入れたいことを察してくれた。
「それにしても・・・サーシャは結構欲張りだな。」
ヘンリー様は、ここまで緑化計画をするとは思ってもみなかった事を話してくれた。
「それほど計画できる町なのですから、やらなければもったいないです。」
「そうだな・・・ここまで来ればとことん緑化計画を進めた方が未来の為になる。」
私は満面の笑みでヘンリー様に答えた。