眠りの・・・
「サーシャ、大丈夫なのか?」
と、心配そうにヘンリー様が声をかけてくれる。
私は、もちろん大丈夫と答える。
だって、教会の敷地をじっくり見ているのですもの。
ここは、ピンクアメジの中央の東側に位置する教会。
孤児院も併設されている。
その為結構広い敷地なのよね。
ああ・・・ここ、ここの草が茫々で手つかずの場所。
それも想像より広いわ~。
なんて素敵な空間!!
ここに、温室を造って・・・。
「ふふふっ」
私は、笑い声が漏れてしまった。
「サーシャ、やはり宿泊宿に戻って休んでくれ。」
「お断りします。ここの施設の方とお話がしたいのですから・・・。」
私は、施設の牧師とシスターにお話をいろいろと聞く。
その横で、心配そうに私をちらちらと見ていたヘンリー様をお構いなしに話は続いた。
宿泊宿に戻ると、領都から書類を持っていたドラゴン騎士たちが待機をしていた。
「これから、領都に戻られるのですよね。」
ドラゴン騎士たちは、そのように仰せつかっている事を述べた。
「帰る前にお願いしたいことがあるのですがよろしいですか?」
と、言うとあっさりOKしてくれた。
私は早速、ピンクカルサへ行って粘土を購入して欲しいことを伝える。
ドラゴン騎士の人たちは、そんなことかという軽い気持ちで引き受けてくれた。
ありがたいわ。
ドラゴン騎士たちは部屋を出る。
そして、ヘンリー様はテーブルで書類捌き、私は机で箱庭造り。
木を植えなければ・・・。
葉はこんな形で・・・実が・・・・
◇ ◇ ◇
・・・おっと。
俺は後ろからサーシャを引きよせ椅子の背にサーシャの体を付ける。
・・・眠っている。
粘土で作っている物に被害は・・・・ないな。
危なく粘土の作品に顔を突っ込むところだった。
全く・・貫徹してしまうとはな。
庭にアジサイ・・玄関前には水道まで設置されている。
この木はなんだ?
俺は、机の開かれた本のページに描かれている挿絵を見る。
これって・・・実でジャムを作る以外にも、利用価値のある木だな。
サーシャはどこまで・・・やるつもりなんだ。
俺はサーシャを持ち上げ部屋を出る。
隣の部屋へ行く。
この部屋には寝室が2つある。ファミリー向けの部屋だ。
1つは俺の寝室に、もう一つはサーシャの寝室となっている。
サーシャの寝室に使っている部屋に入る。
「・・・・。」
また、この感覚。
本当に寝泊りしている部屋なのかという感覚。
昨晩はこの部屋は使われていないのだが・・・どうも、切なく感じてしまう。
俺は、ベッドにサーシャを寝かせる。
ブーツをベッドのサイドテーブルの横に置く。
そして、目についた部屋のクローゼットを開ける。
鞄が一つ。
・・・・キャメルのキャリーバック。
新しい鞄と、いう事は・・・。
城には、もともと使っている鞄が置かれているということか・・・。
「なんで・・・鞄に全てをしまい込むんだ。」
いつでも、鞄を持って出て行ける状態を保つのだ。
俺は・・・鞄の中身をぶちまけてしまいたい気持ちを押さえ、クローゼットを閉める。
そして、サーシャのもとへ行く。
サーシャの手を握る
「粘土が・・。」
サーシャの手には若干粘土が付着していた。
俺はサーシャの寝室を一端出て、お手拭きを探す。
そして、再びサーシャの寝室へ入る。
寝息が聞こえる。
ベッドの横に行き、サーシャの手を取りお手拭きタオルでサーシャの手を拭く。
反対の手もベッドに身を乗り上げ、手を取り拭く。
拭き終えると、サイドテーブルにお手拭きを置き、膝立ちでサーシャの寝顔を見つめる。
最初に拭いたサーシャの手を握る。
そして、手の甲にキスをする。
「・・・っ?!」
俺はサーシャの握っている手の指を自分の指に絡め、再び手の甲にキスを落とす。
キスをしながらサーシャを見つめる。
・・・サーシャは眠っていた。
顔色変えずただ寝息を立てている。
・・・俺は、何をしているのだ?
サーシャの手を布団の中に戻す。
そして、サーシャを見る。
ああ・・見ない方が良かった。
そのまま、立ち去れば良かった。
・・・止められない。
俺は、サーシャの顔に近づく
そして・・・サーシャの唇に自分の唇を重ねる。
すぐに、唇を離しサーシャを見つめる。
・・・もう一度
「んっ」
サーシャの声に驚き顔を離し、サーシャを見る。
ゴロンと、サーシャは寝返りをした。
俺は、自分の口に手をやり、サーシャの寝室を静かにだが急いで立ち去った。