表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/423

緑だけではない計画

 「あなたにとって、子供の成長は喜びですよね。」

 私は、ジャネットさんを真剣な眼差しで見る。

 『面倒なだけ』『人生の邪魔』とか、言って欲しくないので、こんな真剣な眼差しをしているのだろう。

 「当然でしょう。」

 うん・・当然だ。

 わかりきっている事だけど、私のロクでもない過去があるがために、こんな顔をしてしまう。

 この差がたまに悔しいとも思ってしまうのだが。

 そんな事よりも、この町をなんとなしなくては・・・。

 「子供は成長する当然ですよね。では、この町はこれから成長するのでしょうか?」

 ジャネットさんがハッとする。

 「・・・朽ちるだけですよね。禿山がいい例だわ」

 何もなく、ただ土砂災害となるだけの山。

 私は、植樹をしなかった意味を聞いてみた。

 すると、この町の開発の為に木を使い、人口の増加を仮定して、その土地をそのまま利用しようという事で植樹をしなかったとう内容だった。

 愕然とするわね。

 「メアリーちゃんは、見ていて癒されますよね。」

 私はメアリーちゃんに笑顔を向けると、嬉しそうに笑ってくれた。

 「あの禿山を見て癒されますか?この町並みを見て癒されますか?朽ちていく町並みに癒しはありますか?」

 ジャネットさんは、苦いモノをかみしめるようなしかめっ面をする。

 「・・・便利なだけで、癒されない。」

 途方に暮れた顔で、町の実態を口にしたジャネットさん。

 「ママ?」

 メアリーちゃんが、ジャネットさんの方へ向かうとジャネットさんはメアリーちゃんを抱きしめる。

 「この地は保養地。癒しの地です。目に見える癒しもまた必要な地。」

 ジャネットさんはメアリーちゃんに頬ずりをする。愛おしさが伝わってくる。

 「あの山に何を植えたいの?」

 ジャネットさんが真剣な眼差しで私を見つめる。

 「アーモンドの木を・・・そしてそのアーモンドの収穫を安定させるために桃も植えたいです。」

 そして、これだけでは終わらせるつもりはない。

 「それと、蜂箱を置き、蜂蜜も収穫したいと思っています。」

 はっきり言おう・・・結構な欲張りを言っています。

 だが、やる価値はあると思ってます。

 「アーモンドとは、狙いどころがいいわね。」

 「ルベライト産のアーモンドを使った、アーモンドクッキーを食べてみたいモノです。」

 ジャネットさんがクスリッと笑ってくれた。

 

 メイドが紅茶を持って来てくれた。

 メアリーちゃんは、今はお遊びスペースで一人で遊びだす。

 「アーモンドという機転はいいとして、そもそもアーモンドの木ってどんな木なの?保養地からの眺めは?人を呼べそうなの?」

 矢継ぎ早に質問してくる。

 「アーモンドは、桃の花に似た花を咲かせます。ですから保養地からの眺めはいいでしょう。」

 淡いピンク色の花が山一面に広がる。

 もう、温泉浸かっていい湯だな~・・な、世界でしょう。

 湯あたりしないか心配だわ。

 湯あたり経験者が語りますが・・・。

 「人を呼べるかは、ピンクアメジの町全体の協力が必要です。」

 山の景色が良くても、足元のこの町の景観に癒しが感じられなかったら、癒しも半減ではないか?

 いや、もっとか・・・。

 山の景色だけで海に恵みをもたらせても、町分の緑の恵みはないのだ。

 漁にも影響が出てしまう。

 保養地の料理にも影響が出るのだ。

 半減以下という事にならないか?

 そのことを、ジャネットさんに伝える。

 ジャネットさんは私の話を真剣に聞いてくれて、話し終えると考え込むんだ。

 私は、ただ待つことしか出来なかった。

 「・・・あなたのいう通りね。あなたの話からすれば、この地は名ばかりの保養地だわ。」

 私は苦笑いをした。

 だって、『その通りです』とは言いづらいからね。

 せっかく、保養地計画に乗ってくれそうな大事な人材なのだから。

 「それで、いい案は・・・ありそうね。」

 ジャネットさんは私の顔を見て言った。

 「アーモンドの開花時期は3月下旬~4月上旬。桃も同じ時期です。後は花が散って見ごろは終わる。」

 4月中旬から5月中旬までアザレア、躑躅

 6月から9月上旬までアジサイ

 10月から3月まで山茶花と椿

 私は、開花時期と花の名前を述べた。

 「アザレア通り、躑躅通り、アジサイ通り、山茶花通り、椿通りと言ったように、道の左右にその花を植えてもらい、季節ごとに見どころのある道を造るのです。」

 町民の協力を得る事が必要だと気づいていた。

 「そして・・・ここが重要です。」

 私の言葉にジャネットさんは息を飲んだ。

 「ピンクアメジの町の名前の中にある、ピンクの花の町にするのです。」

 ジャネットさんは感心するように納得した。

 私が述べた植物はピンク色の花を咲かせる種類がある。

 それをあえて植え、町全体に一体感を出すのだ。

 もしかしたら、将来ピンク好きが永住しに来るかもしれない。

 そして・・・全身ピンク、ピンクで着飾った人が現れるかもしれない。

 前世で『ピンク婆ちゃん』にすれ違ったあのラッキー感が、将来この土地でも起こるかもしれないのだ。

 ワクワク感が半端ない。

 「私の家の前の通りは、一番難しそうな花にすべきね。」

 色が変化してしまう恐れのある花

 ・・・アジサイだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ