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変化を望まなくても・・・

 ピンクアメジに訪れてから3日が経った。

 たった3日で感じたことは・・・領民を動かすのは難しいという事だ。

 2回寝泊りしただけで答えを出すなと言いたくなるのは分かるが・・・。

 生活基準が低すぎていないそれが原因なのだろう。

 あまり贅沢をしなければ、それなりの生活ができる。

 災害さえ起きなければ・・。

 ・・・・以上で片付いてしまうのだ。

 町の舗装もしっかりされている中で、植物を植えるなんて贅沢だと思っているようだ。

 それも、町の舗装をわざわざ壊して行おうとしているのだから・・・。

 ブーツだからあまり気にならないのだろう。

 舗装されていると言うのに、窪みができて水たまりとなっている道があったり。道の勾配で川の様に雨水が流れている道もある。

 ブーツの中に水がしみ込まないので、実は欠陥の道だと気づかないのだろう。

 泥に埋もれブーツが汚れる事の方が欠陥な道と通常は思うのだろう。

 それがこのような道を造らせたのだから・・・。

 「ママ~、あのお姉ちゃんきれいな紫色の瞳をしてる。」

と、5歳ぐらいの女の子にすれ違い様言われる。

 「お姉ちゃん!!」

 ”ぎゅうっ”

と、女の子に手を握られる。女の子の方を振り向く。

 「うわ~、ドラゴンの大樹みたい!!」

と、女の子は興奮気味に言う。

 そして女の子のもう片方の手に繋がれた母親を見る。

 「ごめんなさいね。この間、ドラゴンの大樹見に行ったモノだから。」

 30歳になるかならないかぐらいの女性が子供を見てから私の方を見る。

 「あなたは・・・ヘンリー様の専属のメイド」

 何故それを・・・私、今ルベライト公爵家のメイド服着てませんが・・・。


◇ ◇ ◇


 私は女の子に手を握られたまま、女の子の自宅へと連れていかれた。

 小ぶりながら趣きのあるレンガの家だった。

 玄関の前には、黒い鉄製の高さいメートル程の、これまた優雅な趣きのあるフェンス。そのフェンスの中央に同じ趣きのゲートがあり、それを開閉して2メートル程先に玄関がある。

 残念なのが、庭のスペース・・・レンガが敷き詰められているという事だ。

 ゲートを開けると、中からメイドが一人出てくる。

 「お帰りなさいませ。」

 メイドは私を気にするように挨拶をする。

 「たまたま知っている人にあってね。お茶を淹れて頂戴。」

と、女の子の母親は言うと、メイドは了承したように返事をする。

 「入りなさい。」

 私は、女の子の母親に言われるままに家に入っていく。

 居間に入りソファーに座るように促される。

 私がソファーに座ると女の子が隣に座って来た。

 「ヴァネッサ様の誕生日に見かけたヘンリー様の専属メイドでよろしいかしら?」

 女の子の母親が、言葉をかけてきた。

 私はソファーからたち、丁寧にお辞儀をする。

 「はい、サーシャ・カーネリアンと申します。申し訳ございませんが、お名前をお聞かせて頂けませんか?」

 隣に座っていた女の子が丁寧にお辞儀をする。

 「メアリー・ターコイズです。」

 メアリーちゃんの母親は、メアリーちゃんをいきなり叱る。

 「ごめんなさい。メアリー・リアルガーです。」

 この地域の領主リアルガーと同じ苗字・・・。

 「娘が申し訳ございません。私は、ジャネット・リアルガーです。」

 そういえば・・・ヴァネッサ様の誕生日に出戻りの女性がいたと噂をしていた。

 ヘンリー様の子供を産める事アピール枠で招待を受けたの女性って事か・・

 結婚適齢期枠の悪役令嬢に囲まれていて気が付かなかった。

 「あなた貴族の娘でしょう。」

 サラッと聞いて来たよ。

 そうで、あっても答えにくいわよ。

 「答えてもよろしいですが・・・ターコイズを名乗らない理由も教えて頂けませんか?」

 出戻りしたからだろうとわかりきっているが、聞きづらい事をあえて聞き、答える気を失わせ、私が答えなくても済むように・・。

 「出戻りよ。」

 サラッと言ってしまったよ。

 「・・・国を捨てた貴族の娘です。過去の名誉は虚しいだけです。」

 これ以上互いの傷を掘り起こすのはやめましょうっていう意味です。

 だって、虚しいではなく、クソって思っている貴族ですから。

 ・・・はい。


 「ルベライト公爵がしようとしている計画にどんな利点があるの?」

 ジャネットさんは、実家であるリアルガー伯爵家が損をするだけと訴えてきた。

 私は、部屋の窓から景色を見た。

 ただ、建物の町並み。

 ・・・完璧すぎて後は朽ちていくのを持つだけの町並み。

 綻び、崩れて・・壊れていく。

 これからの変化に、喜びがない世界

 「お姉ちゃん?」

と、メアリーちゃんがひょこッと可愛らしく、だけど少し心配そうに顔を見上げてくる。

 私はメアリーちゃんに微笑み、優しく頭を撫でる。


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