危険は近く・・・
ヴァネッサ様の誕生日から1週間が経った。
ヴァネッサ様の誕生日翌日は、体中がだるくカリスタ様が機転を利かせ早々にハミッシュ陛下と帰った。
その夕方にエリック様に呼び出され、ピンクアメジへの長期滞在の命令をヘンリー様と受けた。
そして、10日後にピンクアメジへ向かう事になった。
ピンクアメジへ行く日まで・・・後4日。
命令を受けた翌日から、その準備で午後は時間を頂いている。
公立の図書館へ行き資料となる本をあさり、良さげな本があったら本屋で購入や請求もした。
夕方近くに、雑貨屋へ行き頼んでいたキャメルのキャリーバックを取りに行く。
ピンクアメジへ持って行く分と城に置いて行く分と分けないとな・・。
昨日は乗馬用のウェアを2着購入。
ピシッとしたジャケット、お尻を隠すタイプと隠さないタイプで2着と、これまたピシッとした白のズボンと黒のズボン。
太る事禁止な服装だが、観光地という太る確率のある地にてこの服装は大事よね。
興奮しすぎて鞭も購入しようか一瞬検討してしまった。
『無駄遣いはダメ!!』と、自分に言い聞かせ静止させました。
ズボン購入で、コスモの背にてヘンリー様をあまり意識しなくていいのでひと安心だ。
明日は、何かあった時の為の質に出す用のアクセサリー選びだな。
髪飾りにネックレスにブローチかな。
私はそのような事を考えながら城に戻る。
・・・・何かいつもの雰囲気と違う気がする。
廊下の陰で、使用人数人が井戸端会議しているのを見つけ話を聞く。
「モーリスさんの甥っ子さんが行方不明という連絡が先ほど入ったのよ」
なんだって?!
なんでも、モーリスさんの甥っ子さんは国家鑑定士をしていて、情報部にいて、その捜査中に行方不明になったとか・・・。
モーリスさん大丈夫かな?
私は、荷物を持ったままモーリスさんがいるであろうヘンリー様の部屋へと行く。
「ヘンリー様、モーリスさんは?」
私は、ヘンリー様の部屋に入り開口一番にモーリスさんの事を聞く。
「今、休ませている。」
私は、ヘンリー様に詳しい話を聞こうと問う。
「・・・モーリスの甥っ子カインは、国家鑑定士で、紫色の瞳の赤いドラゴンのベストラと絆を結んでいる。」
情報機関で特別にある人物の情報を調べている最中に行方不明になったという事だった。
「ドラゴン・・・ベストラも行方が知れないのですか?」
ドラゴンは意思疎通が遠くからでもできる。
それをたどって見つける事は出来ないのだろうか?
きっと、それがカギだと皆知っている。
「甥っ子さんを探しにモーリスさんを出させますか?」
モーリスさん、今はショックで部屋で休んでいると思う。
だけど、甥っ子さんを探しに行きたいと思うだろう。
「モーリスさんは、武器を扱えますか?」
ヘンリー様は何も言わず考え込む。
「・・・・行かせないとならないのか?」
ヘンリー様はモーリスさんを心配している。
モーリスさんを行かせることで、モーリスさんも行方不明になるのではと懸念しているのだろう。
「申し上げにくいのですが・・・ピンクアメジの長期滞在は、ヘンリー様と私が仰せつかった事です。」
モーリスさんは、書類の運搬等で城とピンクアメジの行き来する事になっていて、ピンクアメジに滞在する事は仰せつかっていない。
「書類等の運搬を別の者に頼めば、長期滞在中モーリスさんは自由の身となります。」
甥っ子さんはきっとモーリスさんを頼りにしているはず。
例え『死を覚悟する』情報機関であっても、『死』を願うはずはない。
モーリスさんは、ドラゴンを集団自殺から救い道を示した者だ。
その道を曲げる事はドラゴンの為にもならない。
曲げさせる事を示すも、してはいけない。
だから、モーリスさんは甥っ子を助けに行かないとならない立場なのだ。
「クッキー祭り・・・クッキー祭りには城にいるように期限を決めて行かせるべきと思います。」
例えクッキー祭りまでに解決せずとも、それまでの情報で今後の方針を決めることが出来る。
「モーリスに行かせる事が前提な話になっているのだな。」
ヘンリー様の心配は分かる。
・・・だが。
「そうですね。」
ヘンリー様は私を睨みつけた。
「時に人は、危険を承知でも行動をしないとならない時があります。例えその行動に意味をなさなかったとしても・・・。それは、危険もその意味でさえも、己の心の意思に叶わない時があるからです。」
私の訴えでヘンリー様は、頭を塞ぎ決断しなければならないと苦しんでいた。
「明日には、城を出てピンクアメジに行けるように準備を進めさせていただきます。」
私はヘンリー様の部屋を出た。
◇ ◇ ◇
「旦那様。また捕獲をしました。」
ボブカットのストレートヘアのメイド服をした女性が、50歳程のダンディな男性に伝える。
「またとは、ドラゴンと絆を結んでいる者という意味か?」
メイドは『はい』と、答えた。
「危険が迫っているのかもしれないな・・・行ってくれるか?」
メイドは『かしこまりました』と、一言だけ言い、部屋を去っていく。




