いつものようで、いつものようでない
まだ・・・暗い。
今の時間は?
・・・2時半
私・・・どうしてここに?
ヘンリー様のお買い物に付き合って・・・。
腕に、腰にロープを縛られ、ヘンリー様のマントの中に埋もれて。
・・・寝た。
一気に顔が赤くなった。
恥ずかしい。
めちゃくちゃに恥ずかしい。
つまり、私はヘンリー様にここまで運ばれてきた。
・・・きっと姫抱っこだよ~。
どこの乙女ゲームの世界だよ。
『ドラフラ』『続・ドラフラ』の世界だよ。
いやーーー!!
恥ずかしい、恥ずかしい・・恥ずかしいよ~。
朝、どうやってヘンリー様に会えばいいのよ。
目を合わせる事は不可能だわ。
無理だ~!!
最悪だ。
かくなる上は・・・
うん、体を洗って出直してこよう。
温泉あるしね。
この城のいいところは温泉よね。
24時間使用可能なのが嬉しいよ。
さて・・・準備っと。
私は、クローゼットを開けて鞄を取り出す。
下着と、メイド服を持ってっと・・・。
ハンガーラックに掛けられたコートをたたみ鞄の中にしまうっと・・。
そして、クローゼットに鞄を入れ、いざ温泉へ。
おっと、水分補給をっと脱水で水死なんて怖いからね。
私は厨房へと向かう。
厨房は明かりが煌々と点いていた。
中に入ると・・・ちょっとした戦場なんですけど。
「どうなさったのですか?」
私は、聞きますとも、こんな夜中からどうしたのって心配しますよ。
「今日は奥様の誕生日ですから、その下準備やらなんやらで・・・。」
「こんな夜中から?」
もちろんという笑顔の返答だった。
こんな遅くからなのにそこまで苦に思っていないんだ・・・。
尊敬するな。
「サーシャさんは、どうしてこんな時間にいつもより早すぎない?」
「目が覚めたので、温泉に入ろうかと思いまして・・・。」
そういうと、お茶をわざわざ用意してくれた。
「お手伝いする事ありますか?」
気にする事はないと言ってくれた。
そして、してくれるならと言ってくれたので聞いてみたら、使用したカップを洗ってくれればいいと言う事だけだった。
私はお茶を飲み終えると、使用したカップを洗う。
ついでに、流しにあった食器も洗う。
そして、今度こそ温泉へ向かった。
温泉に行くと使用人が数人温泉に入っていた。
「あら、サーシャさん珍しいわね。」
私は、温泉に入っていた使用人たち5人に、いつもこの時間に入るのか聞いてみたら、今日は特別のようだった。
ヴァネッサ様の誕生日だしね。
「今回の誕生日何かありそうなのよね。」
と、黒髪のボブの陽気な使用人が言う。
その理由はジジイ様が泊まりに来ている事からだと言った。
ジジイ様・・・城に泊まりに来ていたのですね。
コスモが喜んでいるだろうな。
そういえば・・・この人たちは庭師の方々と連携している方々だったよね。
庭師から花を受け取り花を活ける人たち
「実は、相談があるのですがいいですか?」
私は、ピンクアメジの禿山に植える木の事を説明する。
植えるなら何がいいのかを・・・。
「そうね~、私たちは花が基本だから、よくわからないっていうのが正直なところね。」
5人で一番年配の人が言った。
「庭師に直接聞く方がいいんじゃないかしら?」
彼女たちの意見の回答が出た。
庭師に直接聞いた方がいい。
ごもっともです。
「でもさ~、保養地でも食べれて、お土産にもなる物がいいかな?」
つまり、日持ちのする物がいいという事か・・・。
「だけど、持って帰って邪魔になるお土産は嫌かな~。」
うんうん・・つまり、ルベライトの領民があっても損と思わない物。
「それでもっておいしい物よね。」
「それは当たり前の事なのでは・・・。」
使用人たちと私は一斉に笑い出す。
◇ ◇ ◇
朝になり、ヘンリー様のお気に入りのティーセットをカートに乗せ、ヘンリー様の部屋の前まで引いて来た。
・・・入りずらいな。
息を吸って・・・吐いて・・・
もう一度、息を吸って・・・吐いて・・・
・・・後、もう一度していいかしら?
”カチャッ”
と、内側から開いたよ。
「サーシャさん、おはようございます。」
モーリスさんが中から開けました。
もう・・・中に入るしかありません。
私は、カートを押し中に入る。
そして、ヘンリー様はまだ寝ていました。
そのまま寝かしたままで放置してくださいませんかね。
・・・はい、無理ですね。
しっかりとモーリスさんは、ヘンリー様を起こしにかかりました。
私はいつものようにカーテンを開けにかかる。
”かちゃり”
と、ドアを開ける音がして、音の方へ目を向ける。
裸の大将が来たよ。
腰にタオルのエリック様。
頼みますからレディである私の前でその格好をおやめください。
「おい、起きろヘンリー!!寝ている可愛い息子に父親としてチューするぞ!!」
その一言でヘンリー様は飛び起きる。
「気持ち悪い事を言わないでください父上。」
エリック様はヘンリー様に紅茶を淹れて手渡す。
「ほれ、温泉に入りに行くぞ。」
ヘンリー様は受け取り、紅茶を口にする。
「サーシャ。これから陛下と王妃が、こちらへ泊りに来るから準備をするように。」
ヘンリー様、モーリスさんと私は、一斉にエリック様の方を見る。
「ここに滞在中、陛下と王妃はサーシャに付いて欲しいようだ。」
丁重にお断りをしたいのだが・・・・無理な話だよな。