時の経過というモノは・・・
「ヘンリー様お帰りなさいませ。」
城のドラゴンの部屋の前に着くと、そこにモーリスが駆け付けてくれた。
「臙脂様もいらしていたのですね。」
モーリスがジジイを見て挨拶をする。
ジジイはモーリスに今日のお泊りを告げていた。
「モーリス。踏み台を出してくれ」
その一言に、ドラゴンの部屋の端に置かれている踏み台を取りに行く。
「サーシャさんに何かあったのですか?」
サーシャが寝ていることを言った。
「お疲れからでしょうね。ここ数日ハンモックで寝ていましたから。」
そういえば・・・そうだった。
クレシダの為にハンモックで寝ていたんだった。
俺はコスモの幼少期の経験があるから慣れていたが、サーシャはハンモックで寝る事に慣れていない。
疲れが取りづらいよな。
俺はやっとサーシャが緊張していても寝れた事の意味を知った。
そして。俺とサーシャと繋いでいた、サーシャの手のロープと腰のロープを解く。
そして、モーリスが持ってきた踏み台を使いサーシャを抱えて地上へと降りる。
「モーリス、コスモの首に母上のプレゼントがあるから、取ってやってくれ。」
そのように伝えドラゴンの部屋を出ようとする。
「ヘンリー様待ってください。廊下は暗いですので明かりをお持ちします。」
そうだった。
早くベッドで休ませてあげたいと思ってしまって行動が先走った。
モーリスが母上のプレゼントをコスモから剥がす。
『モーリスありがとう。じいじ、温泉入りに行こう~。』
と、コスモの一言で、コスモとジジイは温泉へと向かった。
『温泉上がりに蜜柑を食したいのう。』
『臙脂様わかりました。厨房へお伝えします。』
去り際のジジイの要望にモーリスが対応してくれるようだ。
モーリスは片手に母上のプレゼント、もう片手にランタンを持って、サーシャの部屋へと案内する。
「サーシャさんとのお出かけはどうでしたか?」
モーリスも帰りが予想よりも遅い事を気にしていた。
「港町ピンクスピネと保養地ピンクアメジの町を通って来た。」
サーシャが町が死に向かっている事を言った事を言った。
そして、詳細な地図が欲しいという事も・・・。
「サーシャさんは、大規模な街の緑化計画を打ち出す為でしょう。いっそ長期にわたりピンクアメジに行かれてはいかがですか?」
それもいいかもな・・・卓上の上で計画を練るより、直接現地を見て計画を練った方がいいかもな。
「父上に話してみる。」
長期滞在になると、いつもの書類整理の負担が少し父上に行くことになるが・・・平気かな?
もしくは現地まで書類を届けてもらうか・・・。
後者になると、モーリスには城とピンクアメジの往来を頼むことにな。
でも、出来ない事もない。
早く見てみたいモノだ。
サーシャがどのように街を生き返らせるのか・・・。
「こちらの部屋です。少々お待ちください鍵を借りてきますから」
そういうとモーリスは鍵を借りに管理者の所へ向かった。
俺はサーシャを見る。
暗くて見えずらいがサーシャは目を覚まさない。
それにしても、サーシャの知識は凄いな。
あの町を見ただけで何がいけないのか瞬時に分かった。
俺ではわからなかった。
発展している町並みだとしか・・・実際は違ったが。
「これで18歳とはな・・・。」
どれだけの教育を受けていたのだろうか?
料理の知識からして感心していたのに・・・。
陛下が、サーシャの知識はルベライトに役立つと言ってよこしたようだが・・・。
これほどと知ると、陛下のもとに戻される恐れがあるな。
ずっと、ここにいて欲しいのだが。
ドラゴンと伴侶の絆を結んでいない者の寿命は約50歳。
後32年。
・・・だが、体力等の事を考えると30年は無理だろうな。
それこそ、どこぞのドラゴンと絆を結んでいる者のもとへ嫁いで伴侶の絆を結んで欲しいモノだ。
モーリスは、俺が結婚する気がないのなら、結婚は考えないと言っていたし・・・。
ルベライトのドラゴン騎士団内によさげな者はいないかな?
「ヘンリー様・・・お持ちしました。」
モーリスがサーシャの部屋の鍵を開けドアを開ける。
すぐに部屋の明かりをつけてもらい、部屋へ入る。
「・・・・・・。」
これが、サーシャの部屋なのか?
私はサーシャの方を見る。
「モーリス、この部屋が本当にサーシャの部屋なのか?」
モーリスはそうだと答え、ベッドの掛け布団を剥がす。
俺は、サーシャを一端ベットに座らせ、着ていたコートを脱がす。
脱がしたコートをモーリスに渡し、サーシャを横に眠らせ、ブーツを脱がせる。
「こんなところに鍵を隠してるとは・・・。」
サーシャのアンクレットに部屋の鍵が付けられていた。
もう片方の足にもアンクレットがあり別の鍵が付けられていた。
俺は、サーシャをベッドにしっかり寝かしつける。
そして、サーシャの部屋を見渡す。
・・・・何もない。
今やっと、ハンガーラックに着ていたコートを掛けて、ここで寝泊まりしていると判別できる状態だ。
ここで働くようになって半年になろうとしているのに。
今日来たばかりの状態なのだ。
「ヘンリー様、お行儀が悪いですよ。」
モーリスの静止を無視してクローゼットを開ける。
「・・・・。」
チューラの町の喫茶店『シンシャ』で初めてあった時に持っていた鞄が置いてあるだけで、ハンガーに何も掛かっていなかった。
・・・・生活感がない。
クローゼットを閉め、再びサーシャを見る。
なんだろう・・・・寂しさを感じているのか?
・・・心が痛い。
そう、感じてしまっている・・・俺がいる。