〇番外編〇 メロティーです
ドラゴニア王国の国王の俺・・・ハミッシュ・トリプライト=ドラゴニアは、やってやったよ。
机の上に何も置いていない、美しい木の木目が見えるのみの状態。
俺、頑張りました。
俺はソファーで窓の外の景色を見ながら鼻歌を歌う。
”ガラガラガラ”
と、ティーセットをカートで引いてピアーズが執務室に入ってくる。
「ピアーズどうだ、書類を全て片付けたぞ。」
俺はピアーズにドヤ顔で言う。
「書類を片付けるのは当然の事だと思うのですが・・・。」
・・・・・明日以降のやる気を削ぐ受け答えだ。
やる気なくした。
そういえば・・・・クスッ
いい事を思いついたぞ。
「カリスタはどうしている?」
そういえば今日は、慈善活動で孤児院へ行っているはずだが・・・。
「そろそろ戻られると報告があったのでお茶をお持ちしたのです。」
ピアーズ・・・俺は、ついでのお茶かよ。
これでも俺・・・この国の王なんだが。
「あなた・・只今戻りました。」
と、執務室にカリスタが入ってくる。
「お帰りカリスタ」
俺は、ソファーから立ち上がりカリスタのもとへ行き、お帰りのキスを頬にする。
そして、耳元に囁く。
「・・・はい。」
と、返事をしてくれた。
よしっ
「ゴホッ・・お帰りなさいませカリスタ様。」
と、ピアーズが言い、ティーカップにお茶を注きテーブルに置いた。
「只今、ありがとうピアーズ。」
俺はカリスタをソファーに案内して座らせてから、カリスタの正面のソファーに座った。
「あなた、実は・・ヒデナの町にあった小さな孤児院にも寄ったのですが・・・。」
カリスタは翳りある趣きで話し出す。
「ピアノが壊れていて音色を奏でられなかったのです。まだ・・そのような孤児院があるとは思いもよりませんでした。」
俺も思いもしなかった。
いや・・・裏を返せばわかったことなのかもしれない。
このラーイ界には避妊具がない。
堕胎術もない。
つまり・・・妊娠してしまったら産むしかない。
望まなければ・・・孤児院行きとなる。
それが、この世界の自然の流れになってしまっている。
ピルさえあれば・・・女性を守る事が出来るのにな。
乙女ゲームの世界だから、この世界の女性の為にあってくれよと思ってしまうのだが・・・。
乙女ゲームのルンルン脳が創り出した世界がどうしても基盤にあってしまう。
その様な基盤のもとで現実を創るとなると、このような歪が影で起きてしまう。
ヒデナの町は、つい最近領主である伯爵を罷免して新しい者を就任させてから、少しずつ良くはなっているが・・。
過去は変えられない。
前任の伯爵の被害者である子供が孤児院での生活を虐げらる。
国が把握している孤児院の他にもあるのが現実だ。
カリスタがその孤児院を見つけてくれた。
これで国の保護を受けさせるという事で良しとするしかない。
「子供たちに音楽は必要だ。ピアノの修理の者をだすか、城にあるピアノを一台下賜するもいいだろう。」
今の俺には、これぐらいしか出来ない・・よな。
カリスタがお礼を言ってくれた。
俺とカリスタはお茶を一口飲む。
「そうでした。音楽で思い出したのですが・・・あなたの前世での仕事上のチームに『メロティー』って、言ってましたよね。」
まさに、この世界の基礎である乙女ゲームを創ったチームが『メロティー』だが・・・。
「メロディ―でなく、メロティ―で、よろしいのですか?」
ああ、その事か・・・。
「メロティ―で、合っている。」
本当はメロディ―にしてくれるとありがたかった。
「メロディ―に似せての何かの略・・・なのでしょうか?」
カリスタその勘は当たっている。
略語にして・・・隠しているのだ。
会社の恥ずかしいチームの正規な名前を・・・。
「ハミッシュ様、是非正式な名前を知りたいですね。」
ピアーズが話に入ってきたよ。
「気持ちはわかるが・・・やめた方がいい。」
2人は私を見た後、お互いの顔を見合わせる。
「やはり、この世界の事ですもの・・・知りたいわ。」
カリスタ・・その顔は反則技だ・・・。
「お願いします。」
ウルウルな瞳でお願い攻撃をしないでくれ・・・。
「メ・・・メロ・・ゴホッ」
やはり・・・やめよう。
「そこまで、言ったのです。・・・・お話ししてもらうしかありません。」
・・・・う~
「・・・メロメロティータイム」
時間が止まったのか?
・・・気持ちはわかるぞ。
そんな名前のチームが製作したゲームの世界なのだからな。
「・・・・幻滅しました。」
・・・・だよな。