ティーセット
「ヘンリー様、今はヴァネッサ様のプレゼントに集中してください。」
私はヘンリー様に言うが、ヘンリー様はショックを受けているようだ。
「このままではダメだと理解出来た。これから素敵な街にしないとならないのですよ。そんな悲しい思いでいたら、良くなる町も良くなりません。」
私はヘンリー様の手をつなぎ工房へと向かう。
「サーシャ・・・冷たい。」
え?
私が冷たいだと?
その逆ではなく?
私結構いい事言ったと思うのだけど・・・。
ヘンリー様が辺りを見回し、そして動き出す。
「どちらへ行かれるのですか?工房があちらですよ~。」
工房とは逆の方角へ進みだす。
「すまなかった。」
いきなり謝りだすヘンリー様
「いや、あの町の状況はショックを受けるはずですよ。」
「違う!」
何か間違えました?
私、ヘンリー様を元気付けさせようとしたのに・・無視?
冷たいとも言われたな~。
どういう事だ?
「いらっしゃいませ」
と、ヘンリー様に引かれ入った店
再び、洋服屋ですか?
ヴァネッサ様の服のサイズ知りませんよ。
「すまない、この者に上着を頼む。」
再び、店員に放り込まれる私。
「これからすぐにドラゴンに乗る事になる。このままでは風邪をひいてしまう。」
ヘンリー様は、いつも以上に冷たい私の手に、コスモに乗って風を受けて体が冷えた事を察してくれたようだが・・・。
説明をしてくれても良くないかしら、いきなり『冷たい』と、言われたら、私の性格が冷たいと思うじゃないの。
まったくも~。
ヘンリー様はマントを着ていた為、寒さ対策はしていたので店で待っていた。
店員が私もマントでは騎乗の邪魔になると、春夏用のコートを出してくれた。
ベージュのコートで打ち合わせのフレアのラップコートで、上に出ている方が裾から太ももまで切れていて2重に重なっている所が可愛らしく見せている作りの物だった。
今度は自分が支払うと訴えたが叶わなかった。
ちくしょ~
私はそこまで甲斐性がないのかよ。
貢物は恐ろしいのだぞ。
亡命することで切り抜けているが、身を持って経験しているのだから、やめて欲しい。
こうして、やっと工房へと行くことが出来た。
工房に入ると、当然だがたくさんの商品が展示されていた。
この中から選ぶのか・・・・。
「この大量の作品の中から一つ一つ吟味して見ると時間がかかります。ので、どのような物を探しているかまずは、挙げてみましょうか?」
と、私が言うとすんなりと述べてくれた。
1,ソーサー付きのティーカップが6客以上。
2,ティーポット、ミルクタンク、シュガーボウル、ティースプーンもついている。
3,ティースプーンは取っ手の部分に陶器が付いている銀のスプーン
4,シンプルだが印象のあるレリーフ柄の物
以上を挙げてくれた。
では、端から見ていきましょう。
まずは、ティーカップのみ・・・はい、さようなら
つぎ、マグカップ・・・これも通り過ぎましょう。
ティーポットと2客のソーサー付きティーカップ・・・これも、おさらばです。
6客のソーサー付き、ティーカップ、ティーポットもミルクタンク、シュガーボウルもついている。
だけど、ティースプーンが全部銀製・・・惜しい。
「取っ手の部分が陶器のティースプーンがありました。」
30種類程のティーセットがあった。
・・・・・私は、その30種類でひときわ目に入る物があった。
これまでの白一色のティーカップしか見ていない中で、色付きの物。
それは目に入るよね。
ヘンリー様もそのティーセットの前に向かった。
全体的に色のついた物。水色にピンク、薄い緑色の3つ
柄は同じ物だった。
「こんなのもあるのですね。」
私はヘンリー様の隣へ行く。
「ああ、だがこれまで白しか見てなかったから印象的に見えるだけで、手に取ると、白い方がいいと感じるな。」
私も全体薄い緑色のカップを手に取る。
確かに、白いレリーフ柄は可愛いの他に品があった。
だけど、全部色の物は可愛さ倍増にはなっているが可愛いだけで、品に関しては落ちる気がする。
優しい色ではあるんだけどね。
他の色もレース調の雰囲気を引き立たせるために薄い色合いにしてあるんだけどね。
ふと、全体的に色の入ったカップの横にあるティーセットが目に入る。
バラの花のレリーフ柄、バラのみに色が塗られている白いティーセット。
そのバラもティーカップの縁ではなく、真ん中でもなく少し斜め下部分にセンス良く描かれている。
ソーサーもバラの花が一輪。
ティースプーンも取っ手の部分がカメオ調の物で、バラの陶器がその部分にはめ込まれていた。
バラの色は赤、ピンク、黄色、青それと一般的な白。
「・・・これがいい。」
私はピンクのそれを指さす。
「サーシャもいいと思ったんだ。」
ヘンリー様も同じ物を気に入ったようだ。
こうしてティーセットを購入する事が出来た。