うまれる。
「コーヒーカップの中!!」
私は興奮しながらヘンリー様に言う。
「・・・花だ。」
ヘンリー様がボソッと言う。
「私のはハートです。」
私はヘンリー様に持っているコーヒーカップを見せる。
カップに合わせて丸く見えるコーヒーが、私のはハート形に、ヘンリー様は花のマークに見える。
カップの途中から、内側にそのような凹凸を付けてあるのだ。
なるほど、だからマスターはカップを近くで見せたくなかったのね。
「マスター。このカップは新鋭の職人が作ったように見受けられるのだが・・・。」
ヘンリー様は、マスターさんに質問をする。
マスターは棚から白いコーヒーカップを取り出しヘンリー様に渡す。
そのコーヒーカップは、カップの外側の柄が筆など色を付けて絵柄を描くのでなく、カップの表面にカップと同じ生地で盛り上がらせレリーフのように描いているカップだった。
「そのカップの製造者の息子が、外側でなく内側に盛る事で絵柄を描くとどうなるかという事で作ったカップのようです。」
マスターさんは説明をする。
レリーフのカップの絵柄は葡萄とその蔓が描かれている。
筆で描く並みに細部までは描けないものの、それなりに細かい所まで描かれている。
レースのように見えるのは私だけだろうか・・・。
だから、女性らしい感じのする可愛いカップに見えるのかな。
「マスターさん。そのカップはどちらで製作されてますか?」
マスターさんは、奥からルベライト領地の地図を持って来てくれた。
「ルベライト領の西側、港町ピンクスピネから隣町で保養地となってはいるピンクアメジ・・・そしてピンクアメジから山を一つ越えた町ピンクカルサの工房で作られている。」
マスターさんが、私の為にわかりやすく地図で指をさして説明してくれた。
「間に合うな。」
ヘンリー様が店内の時計を見て言った。
「ピンクカルサへ行かれますか?」
ヘンリー様は頷いた。
ヘンリー様と私は、コーヒーとクッキーを頂き店を出る。
「こっちだ。」
と、ヘンリー様は私の手を引き城と逆の方向へ早歩きで向かう。
3重に柵がなっている間欠泉から流れ出ているドラゴンの為の温泉の川の前の来た。
「コスモ!!」
ヘンリー様が叫ぶとすぐに足元に影が出来コスモが地上に降りてきた。
すぐにヘンリー様がコスモに騎乗する。
「ヘンリー様、行ってらっしゃいませ。」
私はヘンリー様にお見送りの言葉をかける。
「何を言っているんだ・・よっと」
・・・へ?
ヘンリー様に手を掴まれコスモに騎乗した・・・してしまった。
「行くぞ!!」
”ぶわっ”
と、コスモが飛び立つ。
そこにはもちろんヘンリー様も、そして・・・私も乗っているよ~。
「しっかり俺に摑まれ、急いで港町ピンククピネを通って、ピンクカルサに向かうのだからな。」
どうやってよ~。
当然私の頭は混乱するに決まっているでしょう。
「ククッ」
おい、そこ笑うな~。
「おっと・・。」
コスモがいきなり飛翔に乱れが生じ、ヘンリー様が手綱でバランスを取った。
そして、私は・・・・。
「わざと・・・ですね。」
当然だと言わんばかりにヘンリー様は、鼻で笑い返事をする。
私は・・・ヘンリー様の腰に腕を回しヘンリー様の腰の後ろで、自分の左手首を反対の手で握っていた。
ヘンリー様はわざとコスモにバランスを崩させ、しっかりヘンリー様にしがみつくような体制と取らさせたのだ。
「そのままの体制でいろよ。」
と、言うとコスモの飛んでいるスピードが上がる。
風の勢いが感じられる一方で、風の当たらない方はヘンリー様を感じられて・・・私、圧縮されそう。
「海に出るぞ!」
私は、周りを見ると海が見渡せた。
北の領土からの青い海もキレイだったが、こちらの海はエメラルドグリーンの海。太陽の光と海からの反射光で一段と明るい。
エメラルドグリーンの海の上西に進んで飛んでいた。
大陸から離れた箇所に白い物が見える。
波の塊・・渦潮だ。
こんな所に渦潮ってできるの?
「ヘンリー様、あのような所に渦潮が出来るのですか?」
「自然にできる渦潮ではない。ドラゴンが卵を産む際に生じる渦潮だ。」
ヘンリー様が渦潮の上空までいてくれる。
「ドラゴンは海で卵を産み、巣に持ち帰り温める。」
神話時代、ドラゴンは海の生き物だったが、大地の神を助けたことで、聖獣となり陸地にも生活が出来るようになった。
と、古文書に記されてたな。
「海の生き物の名残が残っているのですね。」
渦潮の白い波とエメラルドグリーンの色に赤い線が現れ、エメラルドグリーンの中に消えると、丸い物に赤い皮を被ったような物が現れる
「本来は卵は白いが、卵を覆う膜ごと産む。」
膜は丈夫に出来ていて、その膜を咥えて卵を巣に持って帰ると、ヘンリー様は説明してくれた。
そして、目の前で赤いドラゴンがその様に行動をして陸地を目指して飛んで行った。
そして、コスモは西へと向かう。