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跡取り問題

 ヴァネッサ様の落ち込んでいる顔を部屋の中の人たちは、心配そうに・・だが、触らぬ神に祟りなしのような感じで、少し離れた位置で見守っていた。

 「ピューゼンとの戦いへ赴く際『ピューゼンとの戦いが終わったらヘンリーに弟か妹を作ろう』と、エリック様が伝えてから、随分と時が経っています。」

 ピューゼンとの終焉の戦いは60年程前の出来事だから・・・。

 何か・・おかしい気がするな~?

 もう、大の大人のヘンリー様に今さら弟妹なんて、おかしくないか?

 もしくは、これがドラゴンの能力で寿命が長くなった者の感覚なのか?

 何だろう・・・何かが引っかかるが・・・。


 それにしても。ヘンリー様がいるのに、次の子が出来ない。

 妊活をしているにも関わらず・・・。

 ・・・病気か~。

 公爵家ぐらいになると、身体の事を記した記録が保管されているはず。

 その記録から、エリック様側の原因はないか調べることが出来るかもしれないが、ここまで来るとその確率が高いな・・・。

 最低でも60年程妊活しているにも関わらず、望めないのだから。

 そうか・・・ヴァネッサ様がここまで子供を望むのは、ルベライト公爵家の事があるからだ。

 ・・・跡取り問題。

 前世で『跡取り殺した厄病神』と、言われた私にはキツイ話なのだが。

 

 そもそも、ドラゴンと伴侶の絆を結ぶには、ドラゴンの許可も必要なのだ。

 ヘンリー様はコスモと絆を結んでいるから、政略結婚をさせるにも、伴侶の絆を結んでもいいとコスモに思わせないと伴侶の絆は結べない。

 ヘンリー様はリオンの事を忘れられないで想い続けてる。

 もしかしたら、コスモの年齢以上に想い続けているのかもしれないな~。

 だから、ドラゴンの長たるコスモは、政略結婚を良しと思わないのかも・・・。

 そうなると、ヘンリー様の代で、ルベライト公爵家はお家断絶に陥る確率が出てくる。

 養子を貰うにしても・・・・・・。

 確かエリック様の父も祖父も、ピューゼンとの戦いで若くして亡くなっている。

 エリック様の兄弟はナシ・・・一人っ子のはず。

 エリック様の叔父叔母も・・・ナシ。

 相当さかのぼらないとならない。


 前世のように不妊治療という高度な医療が、この世界にはないのだからな~。


 厄介な問題だな。

 だから、使用人らが何も言えないでいるのか・・・。

 私からも言い辛い内容だわ。

 見守る事しか出来ない。


 うわ~

 私・・・今、前世で読んだファンタジー小説の何冊かが頭をよぎったよ。

 その内容は、女性しかいない村とか地域とか・・国なんてのもあったわね。

 強制的に子をなす。

 そして、何故だかそれにイケメンが必ず選ばれる。


 ヘンリー様イケメンだから、そこのところは問題ないが・・・。

 その他は問題大アリだな。

 でも、そこに陥る確率は充分にアル。

 ・・・・タイムリミットは?

 と、いう問題になるだけか・・・・。

 

 そのカギを握っているのは・・・ヴァネッサ様だな。

 

 なら、尚更、妊娠出来ない原因がエリック様側にあるかもしれない事は言えないな。


 本当に、触らぬ神に祟りなしだな。


 こうして、健康診断は終わった。


◇ ◇ ◇


 「本当にお世話になりました。」

と、ハワードさんがエリック様、ヴァネッサ様にお礼を言う。

 金曜日となり、今日はハワードさんとクレシダがご自宅に変えられる日となった。

 私はというと・・・

 ”キュキーキュキー”

と、クレシダにしがみつかれていた。

 ぎりぎりまで私も抱きしめておきます。

 本当にもう可愛いですから。

 昨晩もヘンリー様に付き合ってもらい温室でクレシダと一緒に寝ました。

 温泉も使用人用の温泉に入ってきて、使用人たちと掛け合いっこをして遊びました。もう、使用人のアイドルでしたとも・・・。

 クレシダが帰ってしまいますと寂しくなります。

 「ヘンリー様もいろいろとありがとうございました。」

 私の隣にいたヘンリー様の所へハワードさんが来てお礼を言う。

 ヘンリー様もハワードさんに会えたこと、クレシダ、オベロンに会えたことをお礼と楽しかったと言う。

 「シスター。」

 私にも挨拶をしてくれるのね。

 ハワードさんは私に握手を求める。

 私は手を差し出し握手に応じる。

 「クレシダは相当あなたを気に入っているようです。ラリマーの屋敷に連れて帰りたいほどですよ。また、来ますね。」

 私は、『お待ちしています。』と、伝えた。


 ハワードさんがオベロンに乗り空を飛ぶ。

 クレシダは、私にしがみついたままだった。

 「クレシダ、また来てください。お待ちしています。」

 私は、クレシダの頭をなでる。

 クレシダはしがみついていた手を緩める。

 ”キュウ~”

 寂しそうに鳴くクレシダ。

 私は、クレシダに抱き着く

 「また、会えるのを楽しみにしています。」

 私は手を離し満面の笑みをクレシダに見せる。

 ”き~”

 『うん』と、答えたように聞こえた。

 そして、ひと回り大きい翼を広げ飛び立つ。

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