語られていないゲームの裏設定
「クレシダが起きてしまう。」
ヘンリー様の言葉で我に返り、再びハンモックに包まれる。
「モーリスが一番わかりやすい情報屋だな。」
ヘンリー様の言葉でモーリスさんに会った時に、どこかであったことがある気がした、それを思い出す。
「リオンは知っているよな。」
私は『はい』と答える。
「リオンと俺を結んだ手紙のやり取りをしていた郵便配達員だ。」
・・・・あっ?!
「俺は、飛び進級して、いきなり2年から聖ドラゴニア学園に入学したんだ。」
ヘンリー様は『ドラフラ』の時は、まだ学生ではなかった。
ヴァネッサ様のたっての希望で、リオンに学園の案配を調べさせたのだ。
名目上は・・・。
ヴァネッサ様は、元ルベライトのメイドで、その前の公爵夫人も、その公爵夫人の前の公爵夫人も、元ルベライトで働いていたメイドだった。
だから、ヴァネッサ様の義母である公爵夫人から『ヘンリー様の嫁は貴族の娘にしろ』と、遺言で言われていたのだ。
『ドラフラ』の開始時はリオンは孤児。
例え金色の瞳で、癒しの力が使えようが一般人であるリオンは、ヘンリー様の嫁には出来ない。
そのため離れさせる必要があった。
故に、リオンを先に学園に入学させたのだ。
リオンが入学さえすれば、彼女の特殊能力を欲しがる輩が群がり、その中の誰かがリオンと付き合う事になるだろうと想定しての事だった。
中を開けてみれば、リオンは勉強内容をヘンリー様に教える為、授業中に写したノートを、手紙に写しヘンリー様に送っていた。
その送るのに手伝ってくれたのが名無しのモブキャラなのだが・・・。
それが、モーリスさんだったとは・・・。
この名無しのモブなのだが・・・モーリスさんね。
結構な情報を持っているサポートモブキャラで。
はっきり言おう。
モーリスさんが、クレシダにヴァルナ、イクシオンとユピテル、それとフレディ様と絆を結んだオルクスの情報をリオンに教えていたのだ。
その情報源は、同じ郵便配達で働いている者たちの情報を集めての事なのだが・・・。
もしモーリスさんがいなければ、攻略キャラたちは別のドラゴンと絆を結んでいたかもしれない。
『名前ぐらい付けてやって~』
と、ネットで言われていたし~。
『ナホシ君』と、あだ名が付けられていたな。
・・・名欲しい君って事で、その名がモーリス・マディラだったという事ね。
そして、ごめんない。
今の今まで、そんなスペシャルモブと一緒に仕事をしていたなんで知らなかったよ。モーリスさん。
「モーリスの父親は王都の軍人だったのだが、土木工事中に事故で亡くなったんだ。」
このラーイ界で、軍や騎士は国の治安の他に、道の舗装、建物の建築などといった土木作業も担っていた。
その作業中に亡くなることもしばしばある。
モーリスさんの父親もその一人だった。
モーリスさんの父親が亡くなったのが、モーリスさんが12歳の時。
母と当時10歳の弟、6歳の妹がいた。
母親は、聖ドラゴニア学園の食堂で働いたが、子供3人を養えるお金はなく。モーリスさんも郵便配達員としてお金を稼いでいた。
それでも弟妹を一般の学校へ通わせるお金が貯まらなかった。
自宅で母と兄の帰りを10歳と6歳の子供が待つ。
当然、じっとしている事は出来ない。
外へ出て遊んでいるところをリオンに出会う。
リオンは学園の入学前に勉強をするため、王都にあるルベライトのお屋敷から、王都の図書館へヘンリー様と一緒に通っていた。
リオンの手には勉強道具の他に、休憩時間の時にと持ってきたクッキーあった。
妹と弟は当然お腹が減っている。
気づいたリオンが持っていたクッキーをあげる。
すると、翌日以降もクッキーを貰えるのではと図書館へ向かう弟妹。
当然、リオンは『どうぞ』と、弟妹へクッキーをあげる。
そんな日々が続き、弟妹が貴族の人間からお菓子を施して貰っている事を知り、モーリスさんはリオンに怒り抗議をする。
施しが惨めと感じる者がいるという事を・・・。
それですら勉強したいとリオンとヘンリー様は思う。
そして、図書館で働いている女性たちが結婚や出産で、やめていく人が多く、猫の手も借りたいことを思い出し、弟妹をそこで働かせた。
本の整理整頓ぐらいの仕事内容だったが、それも出来ないほど人がいなかったのだ。
ヘンリー様も勉強と共に、社会勉強という名目で図書館で働く事になった。
「モーリスの弟妹は働き者で、図書館の学芸員に可愛がられていたな。」
と、ヘンリー様は語る。
私は、ゲームでも公式小説でも語られる事のなかった裏設定に聞き入っていた。
だって『ドラフラ』開始時。
「社会勉強のために図書館で働くことになった。」
って、ヘンリー様の一言だけの説明で終わっていた。
そこに行くまでの経緯は語られていない。
聞き入るでしょう~。
聖地巡礼と等しい貴重な事だわ~。