星空の見える温室にて
「クレシダは、まだ大丈夫でしょうか?」
私は、ネグリジェを着てストールを肩にかけてヘンリー様の部屋に来る。
「ああ、大丈夫だ。」
ヘンリー様はクレシダと一緒にボールで遊んでいたようだ。
屋上温泉に置いてあるドラゴンの為の遊び道具のようだ。
”キュ~キュ~”
クレシダは嬉しそうにしているのが伺える。
「クレシダ、そろそろ休みに行こう。」
と、ヘンリー様は部屋を出る。
私は、持ってきたランタンを再び点けて歩き出す。
そして、外に出た。
「どちらへ行かれるのですか?」
流石に外に出てしまったので心配になり聞く。
「温室へ行くんだよ。」
城の庭園の中央付近にある温室
前世でのロンドンにあった鉄骨とガラスでできた有名な建物に似ていると感じていた建物だわ。
そこに何があるんだろう。
「コスモが小さい時も、今日のクレシダのようにぐずってな。俺が一緒に寝ようとしたらジジイが止めて、どうすることも出来ない時があったんだよ。」
どうやらジジイ様は、ヘンリー様側人間の死亡する事を知っていて心配しての事らしい。
その、当時はまた法律で禁止されていなかったようだ。
困っているところでハミッシュ陛下がいい案を出してくれて、それからコスモが大きくなるまで、温室で一緒に寝ていた事を話してくれた。
「この頃は父上も、母上と喧嘩した際に温室に眠りに来ているらしい。」
あらら、知らなかった。
仲良し夫婦だと思っていたのに喧嘩をするのね。
しばらく歩くと高い木々に囲まれた温室が見えてきた。
鉄骨とガラスの温室。
周りに木々がたくさんあるのは、風よけである。
ヘンリー様が最初に入り、その次にクレシダが入り最後私が温室に入る。
「用意をしてくれてたようだ。」
ヘンリー様が言いながら部屋の中央へ行く。
「ハンモック!」
温室の中央にはハンモックが2つあった。
ヘンリー様が、私がハンモックを知っている事に驚いたようだ。
クレシダは、ハンモックとハンモックの間に体を置き眠る準備をする。
私は少し高めに吊るされたハンモックに、何とか飛び乗り入る。
それを見てからヘンリー様がハンモックに入る。
ハンモックにはしっかりタオルケットが入っていて、それをかける。
「うわ~、星空だわ。」
ガラス張りの天井から満天の星空が見える。
「ああ、いい眺めだろう。」
私は微笑みながら頷く。
「なら、よかった。お休みクレシダ。」
ヘンリー様がそういうとキュ~と鳴き、ヘンリー様の頬に口先を付け、私の頬にも口先を付ける。
そして、体を丸めた。
すると、少しだけハンモックの底にクレシダの体が障る程度に付く。
「うん、調節しなくてよさそうだ。」
ヘンリー様が言う。
「ヘンリー様、今日は取り乱してしまい申し訳ございませんでした。」
私は、コスモの逆鱗の事で取り乱したことを謝る。
「いや、あれは仕方のない事だ。これまでもあのような事はあったのだから、そのことでサーシャが苦しむことはない。」
ヘンリー様は優しく言ってくれた。
「それよりも国家鑑定士のこと、表面上の事しか知らない人の方が多い。それこそ、ドラゴンを使って貴金属を鑑定するしか知らないで一生を過ごす者もいる。サーシャはよく知っていたな。」
私は『ゲームの公式小説で・・・。』なんていう真実は、口が裂けても言えないので『たまたまです。』と、サラッと答えた。
「国家鑑定士は国にとって貴重な存在だ。国家鑑定士になりたいで簡単になれるものではない。500歳以上のドラゴンという規定があるからな。」
ヘンリー様の言葉に引っかかるモノがあり私は聞いてみる事にした。
「ドラゴンの管理の為に戸籍のような物を作ることは出来ないのでしょうか?」
戸籍管理できれば500歳以上のドラゴンがどのドラゴンがわかるから、見つけやすくなり国家鑑定士を増やすことが出来る。
「ドラゴンの戸籍は存在している。王家と公爵家が管理している。」
「なら、国家鑑定士になりたい者に教えて差し上げているのですか?」
私が質問をする。
それに対して、ヘンリー様は少し置いてから話し出す。
「条件があるが・・・その条件をクリアすれば情報を教えている。」
どうやら王家、公爵家が管理しているドラゴンの戸籍は、基本閲覧禁止のようだ。
見る事の出来る者は限られているが、見る事の出来る者の中に、王家、公爵家が許可している者が5人いると教えてくれた。
ドラゴンの事を理解している者で、情報通な一般人だと言った。
「ちなみに、その一人が・・・モーリスだ。」
「は~?」
私は体を起こしてしまった。
”ゆらゆらゆら”
ハンモックが揺れる。




