ジタバタ キュンキュン
私は、ローズヒップティーをヘンリー様の部屋に持って行く。
入浴後飲む飲み物だ。
腰に手をやりコーヒー牛乳ではないようだ。
ヘンリー様の部屋に入り寝室へ、ソファーテーブル席の所まで持って行く。
そろそろ、温泉から出てくる頃だな。
”ピユーーンッ”
外からの勢いのある風が部屋に入ってくる。
”キキューキキーキューキュー”
私の前にクレシダがやってきて何かを訴えている。
・・・・。
”ジタバタジタバタ”
と、その場で地団駄を踏み、手をバタバタさせている。
・・・可愛い。
クレシダが可愛すぎる。
ごめんクレシダ。必死に何かを訴えたいと暴れているのはわかるのよ。
でも、私は胸キュン。
ドタドタしている足音にハートマークが付いているように幻覚が見えてしまう・・・。
ハート乱舞な足音なの~。
足音まで、前世で子供が履いていたキュキュと鳴く靴のような音に勝手に頭が変換されていく。
可愛すぎる!!
”ギュゥ”
と、クレシダが私に抱き着いてきてウルウルな瞳で私を見つめている。
私は・・・抱き返すしかないでしょう~。
”ムキュー”
クレシダ可愛すぎる~!!
「クレシダ、シスターに泣きついてもダメなモノはダメ!!」
と、ハワードさんの声がして、私は振り向く。
「きゃ~!」
私は、悲鳴を上げる。
だって、ハワードさんが上半身裸。
下半身も腰にタオルのみの格好。
しっかりお腹が割れ、肩や腕にも筋肉が付いている筋肉質なお体。
着やせタイプだという事はわかったけど・・・。
私は女性です。
裸で近寄らないでください!!
「クレシダが皆と一緒に団子になって寝たいのはわかるけど、その中にクレシダが入ってしまうと死んでしまう。わかって欲しい。」
ヘンリー様がクレシダのもとに来る。
このお方も・・・腰にタオル。
”キキューキキー”
クレシダが鳴く。
私も鳴きたい。叫びたい。
そこのヘンリー様も服を着てくれ~。
私は、応急処置で目を閉じヘンリー様のいる逆の方へ顔をやる。
「ククッ」
ヘンリー様の笑い声が耳元で聞こえる。
「あの・・・クレシダはどうして一緒に眠ることが出来ないのですか?」
私は、目をつぶったまま聞いてみる。
「幼いドラゴンが、大人のドラゴンと団子状になって眠ると、圧死の危険があるんだ。」
ヘンリー様の答えで私は思い出す。
聖ライト礼拝堂に運ばれて安置された、肉の塊のような圧死されたドラゴンを・・。
「でしたら、私がクレシダと一緒に眠りますよ。」
私は目を開け、ヘンリー様の方を向く。
あっ、いけない。
裸祭りしているんだった。
しっかり、ヘンリー様の胸と鎖骨の間には、金色のドラゴンの入れ墨が施されていた。
「それも、ダメなんだよ。」
ヘンリー様は私の頭を押さえ、私の顔の向きを変えさせる。
・・・お礼はすべきですが、早く着替えてください。
「今度は人間が圧死の恐れがある。」
「クレシダ程の大きさでしたら、圧死するまでの大きさではありませんし・・心配はないのでは?」
1メートル程のクレシダ。初めてあった時よりは若干大きくなったとは思うが、それぐらいなので大丈夫ではないだろうか?
「それも、禁止されている。」
私は不思議になり、ヘンリー様の方を・・・手で押さえられた。
はい、すみません。
「ドラゴンの膝枕を長時間してあげてから数時間後に亡くなる者が続出していた事で禁止されたんだ。」
詳しく調査をしたら、膝枕の他にも、子供のドラゴンと一緒に眠って、体を圧迫された事によって生じる事だと推測された。
故に、ドラゴニアの法律で禁止されていると説明してくれた。
そういえば・・・前世であったな。
がれきの下敷きになり、救出された数時間後に亡くなるケースがあるとニュースや本で・・・。
軽度の筋肉痛や足のしびれ、脱力感などの症状に、茶色の尿などの症状が現れるって書いてあったな・・・。
体内の血液をキレイにする必要があるんだよね。
・・・なんていう病名だったっけ?
まあ、いいか。
この世界では体内の血液をキレイにする装置がないから。
法律で禁止するしか方法がないな。
・・・だけど、クレシダのウルウルな瞳。
何とかしてあげたい。
「寝ずに、そばに居て見守るぐらいでしたらできますよ。」
ため息が漏れた。
「そんなことして具合が悪くなったら、母上に再び看病を頼まないとならないな~。」
謹んで、御遠慮します。
私は目を瞑り首を左右に振る。
「うーん、困ったね~。」
と、今度はエリック様の声がする。
私はもう振り向かない。
絶対エリック様も腰にタオルな格好だ。
「クレシダ。サーシャと一緒に寝られたらいいのかな?」
エリック様はクレシダに問いかける。
クレシダは少し考えた後”キュ~”と鳴いた。
「そうか、それは良かった。」
エリック様はどんどんこちらに来るのが分かる。
「だけど、サーシャは初めてのことだし・・・ヘンリーお前も付き合いなさい。」
ポンッとエリック様がヘンリー様の肩と思われる場所を叩いたのが伺えた。
「サーシャ。君の今日の仕事はお終い。後は他の使用人に任せるように伝えるから、今すぐ風呂に入ってパジャマ姿でここに来なさい。クレシダが、眠すぎて動けなくなる前に来てね。」
と、エリック様が言っった。
「・・・わかりました。ですが・・・その前に・・・皆さまが先にしっかり着替えてください!!」
私は、顔を真っ赤にして訴える。
がれきの下敷きになり、救出された数時間後に亡くなる病気『クラッシュ症候群』という名前です。
『透析が必要です』
がれきの下から救出する前に、透析可能な病院を探し運搬方法を手配してから、がれき撤去が好ましいようです。
(災害時って、それ・・できなくないかしら?)
避難所や救護所でも時間稼ぎが可能なようです。
避難所や救護所に、このような人を受け入れられるか確認後にがれき撤去。
(それだけでは済まされないのが、この症状の恐ろしいところで・・。)
・圧迫されていた時間
・圧迫されていた重さ
・圧迫されていた箇所
の、情報が必要(ここが、よりたくさんの人を救うために必要みたいです。)
マジックやボールペンで直接その人に記載してしまいましょう。
そして、がれきに下敷きになっている時からできる事で出来る事。
『水を飲ませる。』
重要なので、もう一度言います。
『水を飲ませる。』
・・・やはり、重要なのでもう一回。
『水を飲ませる』
1リットル以上が望ましいようです。
以上、一般人がインターネットで調べてまとめた。
クラッシュ症候群の応急処置です。
参考になったらうれしいです。