西に行くにつれて
「・・・ひくっ・・ひくっ・・・。」
涙が止まらないでいた。
コスモの背に乗り、ヘンリー様に体を支えられて空を飛んでいる。
クレシダが飛びながら私の頬をなめて涙をぬぐっているが止まらない。
私がもっと慎重に接していたら、こんな事にならなくて済んだのに・・・。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・ひくっ」
謝っても取り返しがつかない。
これは、自分への気休めの言葉でしかない。
そうだと、わかっていても言葉に出てしまっている。
申し訳ない・・・ドラゴン対しても・・・ドラゴンと絆を結びたいと思っている人たちに対しても・・・銀髪のあの男に対しても。
私の行動で、ドラゴニア王国を危険にさらす事になったのだ。
銀髪の男と穏便に言葉を交わしていれば、ジジイ様とコスモが逆鱗を放つことはなかったはずだ。
”ギュウ~”
と、ジジイ様の鳴き声で、ドラゴンたちは降下地上へ降りた。
牧場の端に降りたった。
端にある切り株に私は座らされる。
クレシダが私の頬をなめる。
”ギギギュッ”
と、ジジイ様が小さく鳴く。
「サーシャ、コスモはしっかりサーシャの言ったことを理解して行動をしている。」
ヘンリー様が私の前で座り、俯いている私の目線に合わせて話し出す。
「理解した上で逆鱗を放っているんだ。」
そんな事を言っても、コスモは銀髪の男に対して逆鱗を放ったことには変わりはない。
「『5年間は絆を結ぶのをやめるべき。5年後心を入れ替えドラゴンといい関係を気づけるようなら絆を結んで欲しい。』そう、コスモは逆鱗に込めている。」
ヘンリー様の言葉に、私はコスモの方を向く。
”ギュウ”
と、コスモは『そうだよ』と言うように鳴く。
「コスモ~。ごめんなさい・・・疑ってしまって~。」
私は、コスモに抱き着き涙を流す。
「ヘンリー様、ブルーア・ラリマー伯爵家のこと、ダンビュライト公爵にご報告いたしましょうか?」
ハワードさんが言ってきた。
「・・・今回の事が最後勧告って事にしたいんだが、フレディがそのように計らってくれるかが問題なんだよな。」
ヘンリー様が考え込んでしまった。
「そうですね。」
「俺から直接陛下に伝える事にする。フレディには伝えないでくれ。」
私は、2人の会話に付いていけなかった。
そもそも、どうして中央領である王家管轄の領土の家の事を、西の領土に伝えるのであろうか?
「ダンビュライト公爵家の治める西の領土の役人の上層部の方々は優秀な者しかいません。」
モーリスさんが、不思議がっている私の為に説明をしてくれるようだ。
「ですが、王家管轄の中央領の役人の上層部は、優秀もいますが、残念ながらそうでない者もいます。」
王家管轄の中央領は、地方に割り当てられた機関の他に、国全体の機関も存在する。
その為役人の人数が多い。
その者すべて優秀・・・なんてことは、まずはありえない。
うん、それは理解できる。
どちらかと言うと、フレディ様管轄の西の領土の上層部の役人が優秀しかいないという事の方がおかしい。
いや、恐ろしいと言った方が正しいな。この場合は・・・。
なので、王家管轄の中央領には不在には出来ないので、劣る者も配置をする・・・しかない。
配置するにあたり、国全体の機関は疎かにする事が出来ない為、優秀な者を集結させないとならないとなると・・・。
地方に割り当てるしかない。
その地方で、劣る者を配置しても補えるとなると、西の領土の境目の地域となるな。
フレディ様の監視の目。
・・・『恐ろしき』という言葉が『監視の目』の前に付くな。
これでは、成長をせざるを得ない。
それを見込んで、遠慮なく送り込んでいるのかもしれないぞ。
「ダンビュライト公爵は厳しいお方ですから。」
さり気なくモーリスさんがフレディ様の事を言っているが、モーリスさんも気づいているようだ、フレディ様が腹黒だという事を
「つまり、中央領の西側に近づくにつれて劣る者を配置しているのです。」
モーリスさんが説明をしてくれた。
「俺から陛下へ事の次第を伝え、後ほどブルーア・ラリマー伯爵にコスモの逆鱗の内容が伝えられる事になると思う。」
ヘンリー様は、コスモを撫でながら言い。
『それでいいか?』と、私に問う。
私は頷き答えた。
「・・・ありがとうございます。」