ジジイ
『赤のプロローグ』の答えの回です。
山脈の崖の少し昇ったところに開けた場所がある。
そこにドラゴンが降り立った。
4頭のドラゴンが降り立ってもまだ、5頭程の余裕があった。
崖には割れ目があり中に入れる。
洞窟のようだ。
”ギュ~ッギュ~ッ”
と、再びコスモが鳴く。
”ずず・・ずずず・・”
洞窟の中から何かを引きずる音が聞こえる。
「ハワード殿、連れてきてなんですが、覚悟した方がいいようです。」
何が起きるの?
熊とか出てくるとか?
私は、唾をのみ込む。
”どばっ コロコロコロ~”
洞窟の中から丸い物が洞窟の外に大量に出てきた。
私は、それを拾う。
「・・・みかん。」
ミカンの他にオレンジやハッサクまであった。
おお、デコポンまで
”ギキュ~”
と、洞窟の中から鳴き声がして顔が出てくる。
金色の瞳をした赤いドラゴンだ。
ヘンリー様はその場に座り、ミカンを剥き始める。
「サーシャ、持ってきたジュースをジジイに飲ませろ。」
ヘンリー様がミカンを剥きながら言う。
「ジジイって?」
私は、聞き返す。
まさか、洞窟から出てきたドラゴンにジジイなどと言うわけは・・・。
私は、顔で誰かと訴えたが、他の人たちが顔で答えてくれた。
はい、洞窟から出てきた赤いドラゴンがジジイ様なのですね。
「はじめまして、サーシャ・カーネリアンです。」
”ギューッ”
と、鳴いた後口を開いた。
私はその口に持ってきたジュースを注ぐ。
注ぎ終えるとジジイ様は口を閉じる。
ゴクリと呑み込む音がする。
”ギュオ~”
「おいしいですか?」
ジジイ様は、私の体に鼻を擦り付けた。
「おいしいに決まっているではありませんか。つぶつぶ感があるオレンジジュースなんて初めて飲みましたよ。」
ハワードさんが今朝のジュースの感想を言ってくれた。
そう、ヘンリー様の火曜はオレンジジュースを飲むのだ。
今日は、ハワードさんという客人がいたので、私はオレンジジュースの中にミカンの果肉を入れ、つぶつぶオレンジジュースを作ったのだった。
気に入ってくれて良かったわ。
「サーシャ、ミカンをジジイの為に剥いてくれ。」
ヘンリー様が言ったので、私はその場に座り、その場に届いたミカンを拾い剝き始める。
「剥きづらい物は、私が切ります。」
と、モーリスさんは、荷物の中からミカンの他に、果物ナイフとまな板それにトレー4つを取り出した。
剥いたミカンを置くようにトレーが渡された。
なんと、用意周到な事か・・・。
「ジジイ、今日は剥いてくれる者がたくさんいてうれしいだろう。」
”ギ~ッ”
「いつもは、ミカンを潰して啜っているからな。」
”ギギギュ~”
ヘンリー様とジジイ様とは親しい関係なんだな~。
なんか、ゲーム上で絆を結ぶはずだった赤い年配のドラゴンと話しているような感じ・・・?
「もしかして、人と絆を結んでいない一番年齢の高い赤いドラゴンですか?」
『そうですよ』と、モーリスさんが答えてくれた。
このドラゴンが、国家鑑定士になる人が必ず会いに行くように国がおふれをだしたドラゴン。
コスモは、赤いドラゴンの懐で昼寝をしている。
結構懐いているようだ。
でも、精神崩壊の危険のあるドラゴンだ。
ゲーム上ではバックしか出てなかったので知らなかったが、よりによって金色の瞳のドラゴンだとは・・・・。
ドラゴンは口から炎を出したり、吹雪を出したり、竜巻や雷も口から出すことも出来る。
通常のドラゴンなら、どれか一つの能力を持つのだが・・・金色、紫色の瞳のドラゴンは全能力を使う事が出来るのだ。
通常の精神崩壊による暴挙ですら恐ろしいのに、全能力のドラゴンが暴れだすとなると国全体で覚悟を決めなとならない。
それこそ、ラーイ界に唯一残るドラゴンの大樹が破壊される事も視野にいれないとならない。
今はこんなに穏やかなドラゴンなのに・・・。
コスモに続き、クレシダもジジイさんの背に乗り眠っている。
でも、仕方ないな~と言わんばりに、体をあまり動かさないようにどっしりと構えていた。
ジジイ様の為にも精神崩壊をさせたくないと思う。
素敵な相手と絆を結んで欲しいと願ってしまう。
トレーに置かれた外の皮を剥いたミカンがたくさんになったので、ジジイ様の前に持ってくると低姿勢で食べる。
”がさっ”
と、足音が聞こえた。
「やっと、ここまでこれた。これはまた人にドラゴンにたくさんお集まりで・・あなたが1814歳ドラゴンの臙脂様か?」
と、銀髪の20歳前後の男性が言う。
『ドラゴン』は、人と絆を結んでいない年配の赤いドラゴン。
ジジイもしくは臙脂様。
『食べている物』は、ミカン、オレンジ、ハッサク、デコポン・・柑橘類ですね。